イカの塩辛に合う日本酒はコレ!おすすめ4選

イカの塩辛

 

今回は、日本酒のつまみとしては大定番の塩辛です。

非常に古い歴史のある食べ物で、そのルーツは飛鳥時代とも平安時代とも言われています。


魚介の身と内臓に塩を混ぜて発酵させるのが本来の製法ですが、現在市販されている製品の多くは甘味料やアミノ酸、酒精などで調味されています。


これに関しては賛否あって、確かに塩のみで丁寧に手造りされたものに比べれば味は落ちます。しかし、この味に親しみを持っている人が多くいるのもまた事実です(でなきゃ売れてない)。


ここでは調味料添加の是非は論じません。一般に需要が多く入手しやすいという観点から、市販のイカの塩辛を使って日本酒との相性を検証していきます。


塩辛は甘い?


塩辛というくらいですから、当然塩味が際立っている認識ですよね。しかし、あらためて味わってみると、市販の塩辛はソルビットなどの甘味料によって甘味がかなり強くなっています。もちろん塩味もうま味も強いですが。


そんな市販の塩辛には、同様に甘味がそこそこあるタイプの日本酒が上手く馴染みます。


塩辛×日本酒というと、昔ながらの辛口タイプとの組み合わせをイメージするかもしれません。実際、手造りの甘味がほとんどない塩辛であれば辛口は良い取り合わせだと思いますが、市販の甘味が強い塩辛とはあまり相性が良くありません。


ただし、辛口でもうま味の強い酒であれば、その部分でシンクロしてくれるので悪くないペアリングになります


フルーティ系も意外に合う


一般的に、香りが華やかなフルーティ系は、生臭さが増幅してしまうので塩辛には合わないと言われます。筆者もそう思っていました。しかし、今回検証してみたところ、案外問題なくペアリングできちゃったんですよ。


華やかな香りと生の魚介の組み合わせは、ややチグハグになりがちなのは事実です。ですから、積極的に薦めるわけではありませんが、かといって無理に避けるほどでもありません。強めの甘味で同調させれば問題なく合わせられるのです。


生臭さの原因となるのはトリメチルアミンというアルカリ性物質で、酸性である日本酒にはこれを中和する作用があります。香りがフルーティであってもその作用は変わらないということですね。


そう聞くと、酸味が強いタイプのほうがいいの?と思うかもしれませんが、そこはあまり関係ありません(笑)。むしろ、味わいとしては酸味が弱いほうがベターです。酸味は塩辛との融和を妨げてしまいます。


おすすめの温度帯


お燗が合いそうなイメージですが、これまた今までの固定観念を覆す結果に。燗だと口の中で塩辛が温まることで生臭さがわずかに増してしまうのです。考えてみれば、刺身なんかも生ぬるいよりキリっと冷えているほうが生臭さを抑えられますよね。それと同じです。


ですので、ここは冷酒か常温がおすすめです。


というわけで、ここまでの分析をもとに、実際に合う酒をご紹介していきましょう。


光芒 #87 ~KOUBOU HANA~

 

 

未熟なフルーツを連想させる心地よい香り。爽やかかつジューシーでモダン。非常にバランスのいいお酒。これが不思議と塩辛に合うんです。甘味とうま味の強さが同調し、臭みも全く気になりません。


なお、風の森天美なども似た系統の酒なので、同様のペアリングを楽しめますよ。


大治郎 生酛純米 渡船六号

 

 

やはりこの手のしっかりしたコシの強い酒は塩辛に合いますね。インパクトの強い味わいのつまみに負けない力強さがあります。米を感じさせるふくよかなうま味のおかげで、まるで塩辛を乗せたご飯を食べているよう。


本来は燗向けの酒ですが、上でも書いた通りここは常温で行きましょう。


金鼓 山廃本醸造 火入原酒 2003年醸造

 

 

古酒と塩辛ってどうなのよ?と興味本位で合わせてみたら、これが面白い!

古酒の独特な香りが塩辛に付加されることで、新たな世界が開けます。酒自体の甘味が強いことも馴染みが良くなる一因ですね。


ただ、塩辛に対してはさすがに濃厚すぎるので、澤乃花や美寿々など、主張が控えめで淡麗な酒を1:1くらいでブレンドするとちょうどいいバランスになります。ぜひお試しを。


美寿々 本醸造

 

 

最後にもっともスタンダードな組み合わせを。なんだかんだ言って結局、このあたりのリーズナブルな日常酒が一番相性がいいっていうのは紛れもない事実なんですよね。


この酒は口当たりの柔らかさが特徴なんですが、イカのトロっとしたテクスチャーと見事に同調します。それに追随して甘味とうま味も完全に重なっていきます。もう間違いありません。


まとめ


ここまでお読みいただいてわかるように、実際のところ、どんな酒でも大きく外すことはないでしょう。やはり塩辛は日本酒のアテの王様かもしれません。


あえて最強の相性を求めるなら、香りは穏やか、甘味があって酸味が弱く、燗上がりする火入れ酒を常温で、ということになるでしょうか。ありきたりではありますが……。


しかし、フルーティ系もそれほど問題なく合わせられたのは驚きでした。ちなみに、塩辛にゆずやレモンなど柑橘の皮を刻んで乗せるとフルーティなお酒との相性がさらに近づきます。果汁を少し絞ってもいいですね。一度お試しください!

 

酒井 辰右衛門

酒井 辰右衛門

J.S.A. SAKE DIPLOMA / 国際唎酒師 / 日本酒ペアリング研究家

ミュージシャンとして活動する中で、ひょんなことから日本酒に目覚め、一気に沼へ。 現在は日本酒と料理の相性を様々な角度から探るweb「日本酒ぺありんぐ総合研究所」の主宰として日々飲酒に励んでいます。食中酒としての日本酒の可能性を広げるために、およそ合いそうもないエスニックや洋食、スイーツなどとの相性を探るのがライフワークになっています。初心者向け日本酒セミナーの講師としても活動中。