より良い日本酒の提案手法を考える

現在、東京大学の研究室に協力を仰ぎながら、「その人の好みにあった日本酒を提案する」という推薦システムを開発しています。

TwitterFacebookなどで、食べ物の好みや食習慣のアンケート、テイスティングのモニターを集めているのをご覧になった方もいるかもしれませんが、それは推薦システムの基礎となるデータ収集をすることが目的です。

当記事を執筆した11月2日現在においても、モニターを集めています。ご興味ある方はこちらから予約できますのでよろしくお願いいたします。
https://airrsv.net/sake-st-inquiry/calendar

「日本酒を提案する一連の流れをシステムで改善できないか」ということがこのシステムを作ろうと思った動機です。今回はそのことについて書いていきたいと思います。

現在の日本酒の提案手法と課題

日本酒

酒販店やデパート、飲食店などでお客様に日本酒を提案する場面というのは色々あると思います。提案手法は様々と思うのですが、概ね以下のいずれかではないかと思います。(ここでは価格・予算といった基準は除外)

1. 好みの日本酒の味わいや好きな日本酒銘柄を訊いて、フレーバーの近い銘柄を提案する
2. 好みの日本酒が分からなければ、他の酒類(ワイン、ウィスキーなど)の好みはどういうものか訊いて、フレーバーの近い銘柄を提案する
3. 好みの料飲物を訊いて、その特徴を持つ銘柄を提案する
4. 日本酒と合わせたい料理を訊いて、それに合う日本酒を提案する
5. プレゼントなど目的別のシーンによって、日本酒を提案する

まず、「1, 2, 3」と「4, 5」では、提案理由の所在がお客様の嗜好に基づくものか否かという分類ができます。

お客様の嗜好に基づいて提案する場合、お客様の回答内容と好みの日本酒の関連度合いが高ければ高いほど正解に近い提案をすることができます。

好みの日本酒が既知であれば、それに似たものを提案すれば、その人の好みから外れることは経験的にほぼありません。よって「1」は正解に近い提案が可能かと思います。

一方、好みのワインやウィスキー、もしくは食べ物などのフレーバーに基づいて提案する場合、接客というシーンで説得性を持った提案は可能になりますが、正当性が検証されたことは過去にありません。例えば、柑橘系のフルーツが好きな方に、柑橘系の酸味を感じるお酒を提案した場合、理にかなったように聞こえるかもしれませんが、どの程度正しい提案なのか未知な部分が大きいということです。よって体感的に「2」「3」の提案手法は「1」よりも正答率が劣ります。

しかし、「自分の日本酒の好きな銘柄を知っている」という人はそんなに多くありません。私どもは日本酒専門の酒販店を運営しているため、他の店舗と比べて日本酒好きな人が集まりやすい環境だと思います。それでも自分の日本酒の好みや銘柄についてはっきりと自覚している方は多くないという印象です。

また上記の提案手法を取ると、似たようなタイプのお酒だけを提案し続けることになりがちです。これは酒販店のエゴなのかもしれませんが、やはり新しい好きな日本酒にも出会って欲しい。

よって、当プロジェクトにおいては

「日本酒以外の嗜好に基づいて好みの日本酒を科学的に推定可能にし、日本酒に馴染みのない方でも好みの日本酒と新しく出会える機会を増やす。」

ということ目的にしています。日本酒選びのハードルを易しくして、より多くの人が日本酒と接する機会を増やしていければ良いなと思っています。

また「5」に関して、店頭ではプレゼント用のお酒を求める方も少なくないのですが、贈り相手の好みが分かるということはほぼありません。この手法が確立すれば、相手の好みに合ったお酒を選ぶことができるはずです。

(「4」の料理に合わせた日本酒の提案については、様々な手法がありますが当記事においては割愛。)

最後に

最近はこの推薦システムの開発に多くのリソースを使っており、中々忙しい日々が続いております。

ところで、大リーグで活躍するダルビッシュ有選手の好きな言葉は
「いつか必ず道は開ける。俺はやるぜ。」
だそうです。俺もやるぜ!