ウナギの蒲焼に合う日本酒はコレ!おすすめ5選

ウナギの蒲焼

みんな大好きウナギの蒲焼!今年も土用の丑の日が近づいてきましたので、緊急企画としてウナギの蒲焼と日本酒のペアリングを探ってまいります。

蒲焼は甘さのあるタレの影響もあって若干ハードルが高いですが、ちょっとしたコツさえつかめば大丈夫です!

なお、蒸すことで柔らかさが出る関東風と焼き時間が長く香ばしい関西風がありますが、日本酒のペアリングにおいてそこまで大きな差はでません。今回は関東風で調理したもので検証を進めます。

目次

同調する酒を選ぶ

最初はタレとウナギの脂を同調させる方向で考えましょう。

ペアリングのセオリーの一つとして、脂っこいものには甘い酒を合わせる、という手法があります。そもそもタレが甘いので、それなりに甘みのある酒でないとウナギに負けてしまうのです。

というわけで、まずは口当たりが柔らかく、甘みの強い酒が候補になります。燗上がりする落ち着いた純米酒なら、濃醇でボリューミーな味わいのものが多く、濃厚なウナギにも負けません。ちなみに甘みの強さという点では貴醸酒も選択肢に入ります。

さて、ここで問題になるのが酸味です。酸味が目立つとどうしても同調の弊害になるんですね。ゴツめの酒という選択肢だと、山廃を選ぶ場合も多いと思います。一般的に山廃造りの酒は乳酸由来の酸味が強めですが、そんな中でも明らかに酸味が前に出てくるような酒は避けたほうが無難です(多少であればそこまで問題になりません)。

ウォッシュする酒を選ぶ

もう一つの方向性としては、脂でくどくなった口の中を洗い流す「ウォッシュ」のパターンがあります。

これは簡単。シンプルにすっきり爽やかなタイプを選ぶだけです。いわゆる淡麗辛口系ですね。この場合は酸味があってもかまいません。

なお、ウォッシュといいつつも、どこか一つの要素で同調していると、よりペアリングの効果が高まります。そんなわけで、すっきりしている上で、うまみが強いか、または口当たりの柔らかいものを選ぶとベターです。

検証中の様子
検証中の様子

不老泉 山廃純米吟醸 原酒

不老泉の定番濃醇酒。程よい甘みに、力強いウナギにも負けないどっしりしたわがままボディ、これが合わないわけがない!

唯一の懸念は山廃特有の乳酸でした。しかし、合わせてみたら全く問題なかったですね。確かに多少の酸味はあるんですが、この程度ならむしろアクセントとして作用します。若干の酸味が甘いタレと相まって新たな味わいを創出してくれました。

それもこれも酒と食材双方の味の濃さや分厚さ、言い換えると強度が合致しているからこその効果と言えます。

浅間嶽 無濾過生原酒 (普通酒) 2019年醸造

普通酒で生熟成という時点で相当マニアックなんですが、この酒は生ながら常温熟成で素晴らしい育ち方をします。酒ストでは試飲用に常温でも置いてありますので、興味ある方はぜひお試しを。

この常温生熟をウナギと合わせると得も言われぬマリアージュが発現します。

アルコール度数が高くボディがかなり重いので、その点で合うのは織り込み済みです。これに加えて、生熟成ならではの独特な香りやクセがウナギと出会うことで不思議なアクセントになるんですね。

このペアリングに関してはもう、下手な説明を尽くしても伝わらないと思います。試していただくしかない!

BLACK SWAN II ダークフェニックス 2021年醸造

同社の純米酒「BLACK SWAN」を仕込み水の代わりに使った貴醸酒です。

当然ながら甘みが強いため、その部分でタレときっちり同調します。ボリュームもあって、うま味があるため、ウナギに負けることもありません。

若干酸味を出したジューシーな造りになっていますが、それ以上に甘みがしっかりしているため問題ありません。良いバランスで蒲焼の甘さと融合してくれます。

辨天娘 純米 強力 生原酒 槽搾り 荒走り 2022年醸造

甘みはそこまでないですが、うすにごりのため口当たりは柔らかいです。まずこの部分でテクスチャーが合致しますね。

また、どっしりした米のうま味が前に出てくるので、ここでもウナギとマッチします。

できればにしてください。一般的にはフレッシュさが売りの荒走り生ですが、こちらに関しては燗でも相当映えるのです。余計な酸が飛んで、全体の柔らかさが増します。

残草蓬莱 辛口純米 緑ラベル 槽場直結生原酒

ウォッシュ向けも一つ紹介しましょう。こちらはキレのある辛口でうま味もしっかり感じさせる一本。単にクセがなく水のように流れていく酒ではありません。うま味の部分で主張を感じられます。

上でも書きましたが、このうま味がペアリングのポイントになるんですよ。ただ口中をさっぱりさせるだけならビールでもハイボールでもいいんですが、うま味が同調しつつ後半ですっきり流すという芸当ができるのは、やはり日本酒ならではです。

まとめ

基本としては甘みがあって、なおかつどっしりしたタイプで同調を狙いましょう。一方、爽やかな淡麗辛口タイプでくどくなった口内を洗い流すのも一つの方法です。

実はウナギには樽酒がもっとも合うという話もあります。木樽の香りが醤油の香りと同調した上で、特有の渋みが口内をすっきりさせてくれるので、相性はかなりいいです。機会があれば、こちらもお試しください。

ところで今回の検証を通じて強く感じたこと、それは「米が食いたい」でした。ご飯を買ってきて、うな丼にしてやろうかと何度も思いましたが、それをやると検証ができなくなるので泣く泣く我慢しました(贅沢な嘆き)。

酒井 辰右衛門

酒井 辰右衛門

J.S.A. SAKE DIPLOMA / 国際唎酒師 / 日本酒ペアリング研究家

ミュージシャンとして活動する中で、ひょんなことから日本酒に目覚め、一気に沼へ。 現在は日本酒と料理の相性を様々な角度から探るweb「日本酒ぺありんぐ総合研究所」の主宰として日々飲酒に励んでいます。食中酒としての日本酒の可能性を広げるために、およそ合いそうもないエスニックや洋食、スイーツなどとの相性を探るのがライフワークになっています。初心者向け日本酒セミナーの講師としても活動中。