以前のブログで、シンガポールに現地法人「SAKE Street Singapore」を設立したとお知らせをしました。
シンガポールで本格的に稼働しているSAKE Street Singaporeですが、去る5月に、現地最大の日本産酒類イベントである「Sake Matsuri」に初めて出展する機会を得たので、その様子をレポートいたします。
当記事では、イベントの雰囲気、他の出展者、そして私たちのブースに訪れたお客様の反応などを共有できればと思います。
Sake Matsuriとは
Sake Matsuriとは、シンガポールで年2回行われる日本産酒類の展示会です。日本酒だけでなく、焼酎、梅酒、ワイン、リキュールなど、日本を原産地とするお酒が並びます。日本酒は全体の60〜70%くらいだったでしょうか。
ブース出展者の大半はインポーターです。その他、現地の飲食店や、酒蔵の出展者もいらっしゃいました。酒蔵単体での出展は少数で、県ごとにブースを借りているところが多かったように思います。SAKE Streetもインポーターとして、ブースを借りて出展しました。
イベント参加者は各ブースで無料でテイスティングができ、気に入った商品は購入することができます。シンガポールの日本酒価格は、日本の小売価格の3倍以上するので、開始前はただ無料テイスティングを楽しんで、お酒は買わない人がほとんどなのでは……という不安を感じていました。
ところが、来場者は三日間で約3,000名、全体の売上は300,000シンガポールドル(約3,400万円)という数字からも想像できるように、とても熱気のあるイベントでした。イベント終了時間になると、多くのお客様が購入したお酒を持ち帰っている姿が見られました。
出展してみての感想
先述の通り、当日までは「果たしてお酒が本当に売れるのか?」と懐疑的でした。SAKE Streetが取り扱っている銘柄はいわゆる“地酒”であり、シンガポールではこれまで出回っていなかったものが大半ですから、現地での知名度はほぼ皆無だといえるでしょう。
さらに、シンガポールは高温多湿の常夏なので、フルーティな香りや微発泡があり、のど越しの良いお酒が人気と言われています。そんな中、私たちが持ち込んだのは、どっしり旨口タイプや、若干クセのある山廃や水酛のお酒が多めだったことも、不安を高める要因のひとつとなりました。
ところが、イベントが始まると、どんどんブースに人がやってきて心配は杞憂に終わりました。特に印象的だったのが以下の2点です。
- ・「これはどういうお酒なのか」と熱心に質問してくれるお客様がとても多かったこと
- ・知らない銘柄でも、気に入るとバンバン購入してくれること
一点目については、お酒への興味がとても高い人が多いイベントだからだと感じました。シンガポールでは美味しい日本酒といえば純米大吟醸・大吟醸というイメージが強いらしく、「こんなお酒があることを知らなかった」という驚きの声や、「なぜお米が原料なのに、こんなに酸味が出るのか?」という質問をいただきました。
日本産酒類の専門イベントなので、お酒好きな客層が集まっているということを考慮しても、ここまで熱心な人が多いのかと驚かされました。日本国内のイベントと比較しても、お酒に関する質問を投げかけるお客様の割合ははるかに高かったといえるほどです。
そして、味わいが好みだったり説明に納得いただけると、現地価格で5,000円以上もするお酒がどんどん購入されていきました。日本ではなかなか見られない光景ではないでしょうか。お酒の価格相場が日本とシンガポールではかなり異なるため比較はできないですが、この状況は痛快でした。
一番売れたお酒は......
では、どのお酒がいちばん売れたのか、気になるかと思います。なんと、結果は「大倉 Limone Mature 無濾過生原酒」でした。チーズを思わせる乳酸系のフレーバーが特徴で、日本酒の中ではかなり癖のある部類です。シンガポールで人気と言われる「フルーティで微発泡」からは対極にあるようなお酒ですが、この独特の乳酸感にハマる人が多く、今回最も販売本数が多いお酒となりました。
総括
ここまで読むと、かなり出展者が儲かるイベントなのではと思われるかもしれませんが、出展料も高いため、このイベントで利益を上げるのはなかなか難しいと思います。実際、諸々の準備にかかった費用を考慮するとほぼトントンです。
ただし、多くの来場者との接点が生まれるため、新しい人と出会うための「広告宣伝費」と割り切れば、悪くない出展だったと思います。
SAKE Streetは、シンガポールではまだまだ無名な存在ですが、現地のレストランや個人のお客様から信頼していただき、購入へ繋げられるように頑張ります。