【にっぽん全国普通酒の旅】第2回:長野県松本市

「中乗さん」(中善酒造店)、白馬錦カップ(薄井商店)、真澄 銀撰 パック(宮坂醸造)

旅において、その土地で造られたお酒というのは、旅情を高めてくれるものです。それも、地元でしか流通していないお酒となればなおさら。

いまや、流通網が発達し、日本全国のお酒が酒屋さんやオンラインで手に入ります。しかし、その地方でしかなかなか手に入らないのが、地元流通ブランドの普通酒です。

普通酒ってどんな日本酒? - 特別なお酒ではないからこその楽しみ方とは | SAKE Street | プロも愛読の日本酒メディア

全国的に有名な酒蔵さんでも、地元にしか卸していない地域限定の銘柄を持っているところはたくさんあります(例:「仙禽」は地元銘柄として「霧降」を造っているなど)。その中でも、特定名称酒に該当しない普通酒というのは、いわば地元の人しか飲まないレア中のレア酒。

というわけで、酒ストブログの不定期連載「にっぽん全国普通酒の旅」では、全国各地のスーパーやコンビニで買える普通酒をご紹介。第2回目は、全国で2番目に多くの酒蔵を擁する長野県をフィーチャーします。

目次

松本駅前のセブン=イレブンがアツい

今回立ち寄ったのは、松本駅前にあるセブン=イレブンです。

松本駅前のセブン=イレブンの日本酒陳列棚

入ってすぐ目に飛び込んだ棚がこちら。なかなかの壮観です。上から二段目に並んでいるのは、1合サイズで長野県のお酒をパッケージした「楽國信州」というシリーズだそう。「大雪渓」「白馬錦」「鏡花水月」「逢醸」「七笑」「大信州」が並んでいます。

松本駅前のセブン=イレブンのお酒の陳列棚

松本駅前のセブン=イレブンの大きめ酒の陳列棚

酒類コーナーはまだまだ続き、瓶、カップ、パックともにそれなりの選択肢があります。さすが全国2位の酒蔵数を誇る長野県。コンビニ一軒訪れただけでも気合いの入れっぷりが伝わってきます。

普通酒を3種類買ってみた

バラエティ豊かで少し悩みましたが、独断と偏見で3つの普通酒を購入してみました。

木曽の地酒 中乗さん(中善酒造店)

木曽の地酒 中乗さん(中善酒造店)

長野県木曽エリアの名酒「中乗さん」(中善酒造店)。駅にも大きな看板があり、ユニークな名前と合わせてついつい気になる存在です。

木曽の地酒 中乗さん(中善酒造店)の側面

歌が書いてあります。「夏でも寒い」ということしかわかりません。飲んでみましょう。

甘い蜜感のある味わいで、後口はキュッと締まります。一般的な長野酒のイメージよりも、ふっくら旨みがある感じ。アルコール度数は14度と低めで、とても飲みやすく仕上げられている印象です。

木曽の地酒 中乗さん(中善酒造店)のアルミフタ

アルミフタにこのように書いてあったので、剥がして温めてみました。紙カップなので熱伝導性が高く、500w30秒でぬる燗くらいに温まってくれます。常温よりさらに飲みやすさがアップしつつ、ほのかに渋味が出ます。料理に合わせたいなら、温めたほうが活躍するかもしれません。

白馬錦カップ(薄井商店)

白馬錦カップ(薄井商店)

涼しげな青色のガラスカップ酒「白馬錦」。「日本の屋根から乾杯」と書いてあります。飛騨山脈・木曽山脈・赤石山脈を総称して「日本の屋根」と呼びます。

しっかりとした甘味に、穀物を思わせるこっくりとしたコク。キャラメルやカフェオレのようなニュアンスがありますが、買ってから少し置いてしまったからかもしれません。しかし、決してオフフレーバーとは感じられず、いい感じに熟成されています。ピリピリとした苦味が全体のバランスを取ってくれていて、すいすい飲み進められます。

真澄 銀撰 パック(宮坂醸造)

真澄 銀撰 パック(宮坂醸造)

真澄といえばいまや中高級酒のイメージが強いですが、地元といえばパック酒。現地を訪れる良さというのはこういうものですね。

味わいはとてもきれい。この蔵発祥の7号酵母らしいやわらかなバナナのニュアンスが感じられます。良い意味で、めちゃくちゃうまい酒を薄めた、という印象です。いわば、薄めた真澄(褒めています)。スッキリしているのに、甘やかな官能があるので、飲んでてとても心地よい気分になれます。こちらも度数は14度です。

レベルが高いぞ、長野の普通酒

今回の旅の道中、居酒屋さんで飲んで、何度もおかわりしてしまった普通酒が湯川酒造店の「木曽路 佳撰」。気に入りすぎて、思わず一升瓶をお持ち帰りしてしまいました。

湯川酒造店「木曽路 佳撰」の一升瓶

キュッとした酸味に、普通酒らしく親しみのある甘みを、ほろ苦さがしっかり引き締めてくれていて、なんとも抜群なバランス感覚です。

湯川酒造店の蔵元・湯川尚子さんから、「以前、蔵で働いている子がお土産に観光向けの小さな小瓶入りのお酒を買ってきてくれて、飲んでみたらとても美味しかった。木曽路という名前を掲げている限り、お客さんがどこで何を飲んでも美味しいというのは大事なことだと思っている」というお話を聞いたことがありましたが、まさにそのポリシーを体現しているような普通酒です。

湯川酒造店をはじめ、レベルが高い長野県の普通酒。それは、地酒を愛してくれている地元の人たちへの敬意の表れでもあるのでしょう。長野県を訪れるときは、特定名称酒だけでなく、ぜひ普通酒にもトライしてみてください。普通酒の見方がガラリと変わるかもしれませんよ!

【シリーズ:にっぽん全国普通酒の旅】

 

(ライター:木村咲貴)