旅において、その土地で造られたお酒というのは、旅情を高めてくれるものです。それも、地元でしか流通していないお酒となればなおさら。
いまや、流通網が発達し、日本全国のお酒が酒屋さんやオンラインで手に入ります。しかし、その地方でしかなかなか手に入らないのが、地元流通ブランドの普通酒です。
SAKE Street メディア:普通酒ってどんな日本酒? - 特別なお酒ではないからこその楽しみ方とは
全国的に有名な酒蔵さんでも、地元にしか卸していない地域限定の銘柄を持っているところはたくさんあります(例:「仙禽」は地元銘柄として「霧降」を造っているなど)。その中でも、特定名称酒に該当しない普通酒というのは、いわば地元の人しか飲まないレア中のレア酒。
というわけで、酒ストブログの不定期連載「にっぽん全国普通酒の旅」では、全国各地のスーパーやコンビニで買える普通酒をご紹介。第一回は、89軒という日本最多の酒蔵を有する新潟県を訪れました。
日本酒が手に入りやすすぎる新潟県
さて、この企画の主旨は、「スーパーやコンビニなどで気軽に買える、地元の人が飲んでいるような普通酒」をピックアップするというもの。記事を読んだ読者のみなさんが、地方の出張帰りに、駅前のスーパーで「あ、コレ、酒ストで紹介されてたやつだ」とお酒を手に取って、新幹線でのんびり飲みながら旅情に耽ってもらえるのをイメージしています。
ところが、新潟県、まず主要駅の新潟駅にぽんしゅ館があります。
ぽんしゅ館の唎き酒所では、111種類(2023年8月現在)ものお酒がワンコインで5杯試飲できます。この手に入りやすさは素晴らしいですが、“知る人ぞ知る”お酒を探し出すのはなかなか難しそうです。
新潟駅の近くは賑わっている割になぜかスーパーマーケットがないため(1キロ離れたところにようやく地元スーパー原信があります)、今回はあえてコンビニ大手3社に狙いをかけてみることにしました。
コンビニでも日本酒が手に入りやすすぎる新潟県
まずは駅前のセブン=イレブンにやってきました。
やはり多い。小容量サイズだけでもなかなかの選択肢です。白鶴や大関などのナショナル・ブランドも混じっていますが、萬寿鏡、麒麟山、白瀧、朝日山、真野鶴、吉乃川、越後鶴亀、こしのはくせつ、雪男、笹祝、北雪とかなりのカップ地酒がそろっています。
越後鶴亀のワイン酵母仕込み純米吟醸酒。コンビニにこんなニッチなお酒が置いてあるとは。新潟県、企画の初回からハードルをガンガン上げてくれます。
ふぐひれ酒(白瀧酒造)はリキュール扱いでした。
コンビニ3社でゲットした普通酒がこちら!
というわけで、セブン=イレブン、ファミリーマート、ローソンでそれぞれ普通酒をゲットしてきました。
セブン=イレブン
3社の中でも最も品ぞろえの豊富だったセブン=イレブン。新潟は錦鯉が有名なので、パッケージにあしらっているブランドは結構ありますね。
長者盛のこちらの紙カップ酒は、中身が同社の定番普通酒「百萬 長者盛」だそう。とてもキレイでふわりとしたお米の旨み・香りがあり、冷やして飲んだこともあってとても端正なキレと喉越しが心地よい一本。「普通酒」というリーズナブルなイメージに反してとってもお上品なお酒です。
ファミリーマート
菊水なので全国で手に入る可能性もなきにしもあらずですが、缶タイプといえば「菊水ふなぐち」と「菊水の純米酒」が多く出回っているので、このオーセンティックなタイプはレア度が高そう。菊水唯一の普通酒のようです。
味は割とふっくら系で同社の「菊水ふなぐち」のようなジューシー感はなく、キリッとキレるスタンダード普通酒。常温でお魚の塩焼きと美味しくいただいてしまいましたが、温めたらさらにおいしかったのかもしれません。
ローソン
ローソンでは、筆者が見た中だけかもしれないのですが、そこまでラインナップがなく、結果的に「どのコンビニでも見かけるもの」を買うに至りました。
越後桜 白鳥蔵は、ストローでチューチュー吸うタイプ。冷やして飲むとスッキリとして、暑い季節にはうれしい喉越し。スイスイ飲めますが、スイスイ飲んではいけない気もします(アルコール度数15%)。
北雪はカップ酒としては珍しい緑のガラスがかわいい一品。温度が上がると少し重たさが増して「普通酒だなぁ」という感じがしてきますが、フルーティなニュアンスもあり、まろやかな口あたりでとてもきれいなお酒です。
新潟はカップ酒王国
多種多様なお酒が気軽に手に入ってしまう新潟県であえて普通酒を探してみましたが、小容量パッケージの充実っぷりに唸らされる結果となりました。滞在中、大学生たちと交流する機会があったのですが、新潟県外の日本酒を飲む機会があまりないのだそうで、これだけあらゆるサイズが手に入りやすかったらそうなるんだろうなぁと納得のゆくリサーチとなりました。
県内の酒蔵が大集結するぽんしゅ館を擁しながら、コンビニで手に入る選択肢が多いとはさすがの日本酒県。新潟を訪れる際は、ふと立ち寄ったコンビニでも満足のいくラインナップがお目にかかれますよ!
【シリーズ:にっぽん全国普通酒の旅】
(ライター:木村 咲貴)