【にっぽん全国普通酒の旅】第3回・山形県鶴岡市

山形県鶴岡市で入手した普通酒

旅において、その土地で造られたお酒というのは、旅情を高めてくれるものです。それも、ほとんど地元でしか流通していないお酒となればなおさら。

いまや、流通網が発達し、日本全国のお酒が酒屋さんやオンラインで手に入ります。しかし、その地方でしかなかなか手に入らないのが、地元流通ブランドの普通酒です。

普通酒ってどんな日本酒? - 特別なお酒ではないからこその楽しみ方とは | SAKE Street | プロも愛読の日本酒メディア

全国的に有名な酒蔵さんでも、地元にしか卸していない地域限定の銘柄を持っているところはたくさんあります(例:「仙禽」は地元銘柄として「霧降」を造っているなど)。その中でも、特定名称酒に該当しない普通酒というのは、いわば地元の人しか飲まないレア中のレア酒。

というわけで、酒ストブログの不定期連載「にっぽん全国普通酒の旅」では、全国各地のスーパーやコンビニで買える普通酒をご紹介。第3回目はインターン生・榎本が、故郷の山形県鶴岡市の普通酒をレポートします。

目次

地元スーパー「主婦の店」の品揃えがすごい

鶴岡市の地元スーパー「主婦の店」外観

今回お酒を購入したのは、鶴岡市の地元スーパー「主婦の店」。なかなか斬新な店名ですが、鶴岡市民なら主婦に限らず誰もが通う、みんなのお店です。

そんな「主婦の店」ですが、実は日本酒の品揃えが素晴らしいのです。こちらをご覧ください。

主婦の店の日本酒の陳列
じゃーん。

1合瓶の普通酒から1升瓶の箱付き大吟醸まで、抜け目ない磐石の品揃えです。

子どものころは、親の買い物に同行しながら何気なく眺めていた光景でしたが、日本酒好きになってからは宝の山のように感じます。

「主婦の店」でゲットした普通酒がコチラ!

そんな「主婦の店」で、5つの普通酒を買ってきました!

清酒 竹の露(竹の露酒造場)

清酒 竹の露(竹の露合資会社)

全国向け銘柄「白露垂珠」を醸す、竹の露合資会社(鶴岡市)の地元銘柄「竹の露」の普通酒です。

冷やして飲むと、最初はキリッと硬い口当たりを感じるのですが、口内でお酒があたたまるにつれて、とろっとろのやわらかい舌触りに変化します。ほのかな甘さと、水のような軽やかさでスイスイ飲めます。

「清酒 竹の露」の原材料表示など

また、原料米や仕込み水が地元の羽黒産であること、「米糀」や「醸造アルコール(米由来)」の表記から、細部にまで至るこだわりを感じます。

栄光冨士 精撰(冨士酒造)

栄光冨士 精撰(冨士酒造)

美しいラベルの季節限定商品と、安定感のある甘口酒で有名な冨士酒造株式会社(鶴岡市)のカップ酒です。

フタを開けると、カップ酒ながら、桃を思わせるフルーティな香りが広がります。しかし、吟醸酒ほど華やかというわけではなく、普通酒と吟醸酒の中間あたりの絶妙な塩梅。味わいは、やさしい甘さがふわっと広がった後にスッとキレるため、しつこさがなく、スルスル飲めます。

鶴岡の地酒(渡會本店)

鶴岡の地酒(渡會本店)

名前の潔さでこれに勝るものはないでしょう。GI山形の表示もあり、ラベルが放つ地酒感はまさに圧巻。1升瓶で1280円(税込1408円)というお値打ち価格にも驚かされます。

そんな主張強めのお酒ですが、口に含むと、とてもやわらかくまろやかな口当たり。アルコール度数が14度なこともあって、飲み口はとても軽やかです。やさしい甘酸っぱさがとても心地良く、ついつい杯が進んでしまいます。実は、日清カップヌードルしょうゆによく合います。

酒王 初孫(東北銘醸)

酒王 初孫(東北銘醸)

美しい植物(おそらく万両)のデザインが目を惹く東北銘醸株式会社(酒田市)のパック酒です。全量生酛造りの酒蔵なので、こちらの普通酒ももちろん生酛造りです。

やわらかい舌触りと、やさしい甘み。生酛造りだからか、普通酒としてはしっかりめのボディを感じます。飲み込んだあとも、まろやかなうま味とほのかなコクが余韻に残るのがとても心地よいです。

ちなみに、私は小学生の頃、町内会の花見で大人が飲み終えたこのお酒を枕にして昼寝をしたことがあります。「1升瓶を抱いて寝る」というのはよく聞きますが、パック酒を枕にするのもオツです。意外と良い感触です。

精撰 やまと桜(佐藤佐治右衛門)

精撰 やまと桜(佐藤佐治右衛門)

瓶印刷の桜がかわいい、合名会社佐藤佐治右衛門(庄内町)のカップ酒です。

味わいは、やさしい甘さを中心に、酸味とうま味が寄り添うバランス型。どんな食事に合わせても、それなり以上に楽しめそうな懐の広さを感じます。また、苦味がとても少なく、余韻に甘さが伸びるため、やさしい甘さを最初から最後まで存分に楽しむことができます。

また、酒蔵の所在地である庄内町は、亀の尾発祥の地でもあります。以前、私が行った「亀の尾聖地レポ」も当ブログにありますので、亀の尾ファンの方はぜひそちらもご覧ください。
伝説の酒米?「亀の尾」の聖地に行ってみた

やわらかくて美味しい!山形県庄内地方の地酒!

紹介した普通酒

この記事を書くにあたり、地元の普通酒を初めて飲み比べたのですが、それぞれ味わいに個性がありつつも、どのお酒も「舌触りがかなりやわらかい」という共通点がありました。酒造りの特徴なのか、仕込み水の特徴なのか、大変興味深いです。

みなさんも、自分の故郷の普通酒を飲み比べてみると、新しい発見があるかもしれませんよ!ぜひお試しください!

【シリーズ:にっぽん全国普通酒の旅】

榎本康太

榎本 康太

SAKE Streetメディアインターン生

酒づくりと地域づくりを研究しながら、「研究資料」と称して日々酒を飲む大学院生。編集長である二戸さんのもと、インターン生として記事の入稿や企画などに関わっています。同人サークル「一本歯下駄は今日も行く」としてコミケに出展し日本酒レビュー本を頒布しています。