旅において、その土地で造られたお酒というのは、旅情を高めてくれるものです。それも、ほとんど地元でしか流通していないお酒となればなおさら。
いまや、流通網が発達し、日本全国のお酒が酒屋さんやオンラインで手に入ります。しかし、その地方でしかなかなか手に入らないのが、地元流通ブランドの普通酒です。
普通酒ってどんな日本酒? - 特別なお酒ではないからこその楽しみ方とは | SAKE Street | プロも愛読の日本酒メディア
全国的に有名な酒蔵さんでも、地元にしか卸していない地域限定の銘柄を持っているところはたくさんあります(例:「仙禽」は地元銘柄として「霧降」を造っているなど)。その中でも、特定名称酒に該当しない普通酒というのは、いわば地元の人しか飲まないレア中のレア酒。
第4回目は、豊かな自然と水源に恵まれ、48軒の酒蔵を有する岐阜県でも、日本三名泉と称された温泉のある下呂市を訪れました。
ファミリーマートは普通酒の取り扱いが豊富
まず立ち寄ったのは、市役所前のファミリーマート。お酒コーナーに3段ほど地酒が並んでいました。4合瓶だけでなく1合瓶やカップ酒など、飲み比べにも良さそうなサイズが取り揃えられています。
その中でも、普通酒のラインナップから、お土産にもよさそうな3種類をチョイスしました。
ふるさとの酒 奥飛騨(奥飛騨酒造)
下呂市に酒蔵を構える奥飛騨酒造のカップ酒です。約300年続く酒蔵で、ラベルには創業享保五年(1720年)の文字も。世界遺産・白川郷で見られるような合掌造り集落の風景がプリントされており、風情があります。
口に含むと米の香りと甘みをしっかりと感じますが、すっきりとキレが良く、食中酒にもってこいの日本酒でした。アルコール度数は15〜16度とやや高めで、甘辛い味付けの料理と合わせたくなるような一本です。
飛騨のさるぼぼ(天領酒造)
こちらも下呂市の酒蔵である天領酒造のカップ酒。「さるぼぼ」は、飛騨高山に伝わる猿の赤ちゃんを模したお守りで、健康や縁結び、安産、夫婦円満といったご利益があると言われています。
こちらのお酒は、岐阜県を代表する酒造好適米「ひだほまれ」を使って造られています。お米の香りも、後味のアルコール感も控えめですが、水っぽくなく、スイスイ飲める普通酒。川魚の塩焼きなどの繊細な味付けの料理との相性も良さそうです。
栄冠 白真弓(蒲酒造場)
飛騨市・蒲酒造場の定番酒です。全国燗酒コンテスト金賞のステッカーが輝いています。肌寒くなってきたので、燗にしたら美味しそうなお酒として選びました。
まずは常温で。お米の甘みがありますが、やや酸味が強めでアルコールの刺激を感じました。燗をつけて飲んでみたところ、酸味が和らぎ、甘みが増してまろやかな印象に。まさに燗上がりするお酒で、濃い味の料理や揚げ物にもピッタリなバランスの良い風味でした。
温泉街中心地のローソンは特定名称酒が充実
もう一軒、温泉街の中心にあるローソンにも足を運びました。観光客の利用が多いためか品揃えも豊富。ファミリーマートでも見られた「奥飛騨」「天領」「蓬莱」のほか、「山車」や「白川郷 にごり酒」など県内で人気の銘柄もありました。
ローソンのラインナップは、ほとんどのお酒が特定名称酒。なんとか、渡辺酒造店の「上撰 蓬莱」を見つけました。
インターナショナルワインチャレンジで金賞を受賞したことを示すステッカーのほか、有形文化財の蔵で造られていること、仕込み水が『不老不死の水』ということがラベルに書かれています。
濃縮した旨味と甘みがあり、ジューシー。普通酒ですが余韻が長く続きます。酸味のバランスも良く、どんなお料理にも合わせやすい印象。クリーム煮など、バターを使ったこっくりした洋食とも美味しくいただけそうです。
もらって嬉しい飛騨の普通酒
今回は4種類の普通酒を購入しましたが、どれもきちんと個性があり、普通酒の美味しさ、面白さを再発見することができました。自宅で飲み比べをしながら、旅先で食べた郷土料理との相性を考えてみるのも、その地域で親しまれている普通酒ならではの楽しみ方かもしれません。旅行で訪れた際には、特産品と合わせて、お土産に普通酒を購入してみてはいかがでしょうか?
【シリーズ:にっぽん全国普通酒の旅】