AIと人類の日本酒カクテル対決、クライマックス!
人間の日本酒バーテンダー・山﨑友輔さんとAIバーテンダーによる「オリジナル日本酒カクテル対決 三番勝負」を繰り広げてきました。
これまでの結果を振り返ってみましょう。
【第一戦】
第一戦は、AIバーテンダーのレイライトムーンと「ローズティーを使った日本酒カクテル」で対決。レイライトムーンの考案した「薔薇の和風」に軍配が上がりました。
【第二戦】
続く第二戦は、AI岩井賢介と「シナモンを使ったカクテル」で勝負。
AI岩井が「桜の花びらをトッピング」というおしゃれな技を繰り出すも、日本酒を「熟成酒」にチェンジした人類・山﨑さんのカクテルが勝利。「インターネット上にあるカクテルレシピから学んでおり、日本酒に最適化されていない」というAIの欠点を見抜きました。
【第三戦】
そして第三戦、AIケビン・クラークとの戦いのテーマは「カカオバター」。意外な材料をいかに取り入れるか、互いの知識と技が正面からぶつかりあう展開でしたが……まさかのドロー。
三番勝負の結果は「一勝一敗一分」。互角。
そこで勝負は延長戦へ。改めて、最終決戦を行うことになりました!
最後のテーマは「アイラウイスキー」です。独特の香りを持つパワー系のウイスキーが日本酒と合わさったら何が起こるのか、まったく予想がつきません。
AIの圧倒的な情報量が勝つのか、山﨑さんの経験が勝つのか……最後の戦いがスタートします!
人類代表、Mr.SAKE2022の山﨑友輔さん
山﨑友輔さん。日本三大銘醸地に数えられる広島・西条に育つ。甲南大学在学中には「日本酒研究会」代表を務める。バーで修業を積んだ後「日本酒カクテル」のプロとして独立。現在は八重洲ミッドタウン「TASU+」他、店舗やイベントなどで日本酒カクテルのレシピ提供・店頭での提供を行っている。2022Mr.SAKE JAPAN。「定期的に八重洲ミッドタウンB1のTASU+にてスイーツと日本酒カクテルのペアリングイベントを開催しております。応募はSNSにて行っていますのでご興味のある方はぜひアカウントをチェックしてみてください!」
山﨑さん「ウイスキー……難しいテーマですね。普通に考えると、確実に日本酒が負けます……」
延長戦の対戦AI
田口真理子(たぐちまりこ)。田口真理子は、バーテンダーとして活躍する女性です。彼女は独自のスタイルと温かい人柄で日本酒を知られています。
AI田口真理子「田口真理子は、に対して深い愛と情熱を持ち、その魅力をお客様に伝えることに喜びを感じています。彼女は日本酒のバリエーションや味わいの広さを見据えて、お客様の好みやニーズに合わせた最適な日本酒のご提案を致します。人間味は、田口真理子を信頼できる日本酒バーテンダーとして際立っています」
※AI田口の画像はStable Diffusion、コメントはChatGPT-3で作成しており、若干の違和感もそのままにしています。
あらためてルール説明
- ・AIと人間が1杯ずつカクテルをつくり、美味しさを競う。
- ・AIのレシピは、各回のテーマに沿ってCahtGPT-4で生成する。日本酒は「大那 超辛口 純米酒 火入れ」を使用。
- ・人間が使える材料は、AIのレシピと同じ。日本酒の銘柄は自由。
- ・審査はライターのクリーミー大久保が行う。カクテルに造詣はなく、好きなジュースはアセロラジュース。
決戦「アイラウイスキー」を使った日本酒カクテル
今度こそ最後の戦いです。先攻AI田口真理子のカクテルからいきましょう。レシピはこちらです!
タイトル「煙る桜(Kemuru Sakura)」
材料:
- ・日本酒 30ml
- ・アイラウイスキー 20ml
- ・オレンジリキュール(トリプル・セックなど)10ml
- ・アンゴスチュラビターズ 2ダッシュ(約2ml)
- ・オレンジピール
- ・氷
作り方:
- 1. カクテルシェーカーに氷を入れ、日本酒、アイラウイスキー、オレンジリキュール、アンゴスチュラビターズを加えます。
- 2. よく振って、氷を入れたオールドファッションドグラスに注ぎます。
- 3. お好みで、オレンジピールをツイストして香りをグラスに移し、飾りとして添えて完成です。
ウイスキーと日本酒以外の材料は「オレンジ」と「ビターズ」です。
山﨑さん「なに……まさか『オールドファション』や『サイドカー』を日本酒でつくるつもりか……いやまさか」
※オールドファッション:ウイスキーとビターズを使ったカクテル。サイドカー:ブランデーとオレンジを使ったカクテル。
こちらが、AI真理子のカクテル。シェイクの後に加えた、オレンジピールの香りが華やかです。
では、いただきます。
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……いけます。おいしいです。
オレンジの香りが、アイラウイスキーのピート香をうまく覆い隠します。飲むとビターズの苦味が効いていて、オレンジとウイスキーの甘味をしっかりまとめています。
ただし、日本酒はどこにもいないです。
山﨑さん「オールドファションとサイドカー、その間のようなカクテルでしょうか。ひょっとすると、オレンジの果肉を数切れ加えると、より飲みやすくなるかもしれません。さすがです」
AI田口真理子「煙る桜は、アイラウイスキーのスモーキーさと日本酒のまろやかさが絶妙にマッチしたカクテルです。スモーキーでスパイシーな風味が、食事の後やくつろぎの時間にぴったりな一品です」
田口真理子、やります! 大人な魅力全開の一杯をいただきました。
ではこれで本当に最後の最後、人類代表・友輔さん、カクテルをお願いします!
後攻:熱燗の「ホットカクテル」で勝負!
最後の人類ターン、山﨑さんは日本酒を「生酛」造りの「大治郎」にチェンジ。一貫した「日本酒の個性を活かす」アプローチです。最後までぶれません。
材料:- ・日本酒 45ml
- ・アイラウイスキー 10ml
- ・オレンジリキュール(トリプル・セックなど)5ml
- ・アンゴスチュラビターズ 1ダッシュ(約1ml)
- ・オレンジピール
作り方:
- 1. ちろりに日本酒、アイラウイスキー、オレンジリキュール、アンゴスチュラビターズを加えます。
- 2. 香りが立ち上るまで(温度の目安は48度程度)温めます。
- 3. グラスに注ぎ、オレンジピールをツイストして香りを移し、飾りとして添えて完成です。
なんと山﨑さん、お酒を温める「熱燗=ホットカクテル」にすることに。独創的です。
完成です。温めているため、オレンジとウイスキーの甘く枯れた香りが強調されます。
では、いただきます。
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……おいしい…!
日本酒の「熱燗」と同じで、香りも味も「開いた」印象です。
飲んだ瞬間に柑橘全開の甘味とウイスキーの味が上り、追いかけるようにスモーキーな香りをまとった日本酒の「酒感」がやってきます。
日本酒で例えるなら、貴醸酒のような、強い甘味と苦味が同居している、かつ温かくてじんわりと染み込むような、不思議な一杯です。
山﨑さん「これは……正直悩みました。前回までの3杯は、自分の中ですぐに味のイメージができました。しかし今回は、ビターズとオレンジのバランスをどう変えていくべきか、手探りな部分も多かったです」
結果発表
AI VS 人類の日本酒カクテル対決、延長最終決戦。いよいよ結果発表です。
オレンジの甘味と苦味で妖艶な雰囲気を生み出したAI田口真理子か、日本酒を軸にホットカクテルで味をまとめた山﨑さん。勝つのはどっちか。
発表します!
……
……
……
AIか……
人間か……
人間か………!!?
AIなのか……!!!!?
人間です!人間です!!
勝者は人類代表、日本酒バーテンダーの山﨑友輔さんです!!
どちらもおいしいものの、山﨑さんのホットカクテルは1杯の味がまとまっており、心地いい味わいでした。見事、勝利です!!
とはいえ田口真理子もなかなか素晴らしい一杯。最終決戦にふさわしい名勝負でした!
勝利者インタビュー
山﨑さん、勝利おめでとうございます!見事、AIバーテンダー集団を破りました。人類と日本酒カクテルの未来を守ることができましたね!
山﨑さん「ありがとうございます!
AIのカクテルは、世の中のカクテル情報をもとに生成されており『他のお酒でも成立する』ものだったと思います。
対する僕は、日本酒カクテルという世界を打ち出していることもあり、『日本酒を使う意味』を無くしてはいけないと、ずっと考えていました。
厳しい戦いでしたが、最後になんとか勝つことができてよかったです」
AIは日々成長しています。再戦の可能性はありますでしょうか
山﨑さん「ええ。今回は世の中に情報の少ない『日本酒』だったため、人間が有利な面もありました。次は、より厳しい戦いになりそうです」
日本酒カクテルは、日本酒という選択肢を広げる第一歩
激闘が終わり、平和が訪れた酒ストリート2階のバトル会場。山﨑さんは、余った材料を使って即席の日本酒カクテルをつくってくれました。
山﨑さん「日本酒ってあまり混ぜる文化がないですよね。そのためか、『日本酒カクテル』というと難しいものだと思われてしまうことが多いのですが、こんなふうに気軽に混ぜてみる、というのもおいしいんですよ。
『日本酒は、瓶一本を飲み切れるかわからないから買いにくい』という声を聞くことがあります。飲みきれないなと感じても、他のお酒やジュースと混ぜてみると、おいしく飲めることもありますよね。
カクテルという方法を知っていれば、日本酒を買うハードルは下がるんじゃないかな、と」
山﨑さん「僕の理想は、お客さんに『日本酒』と、それを使った『カクテル』を一緒に提供することです
日本酒が好きという人もいれば、カクテルの方が好みという人もいるでしょう。どちらでもいいんです。そこをきっかけに日本酒をおいしいと感じて『今度、買ってみようかな』と思ってくれればいい。
おいしいと感じるきっかけが増えることで、普段のお酒選びで『日本酒』という選択肢が増える。そんな未来を、日本酒カクテルで目指します」
山﨑さん、日本酒カクテル対決、本当にありがとうございました!
……AIは今この瞬間も、人類の経験を猛スピードで学習し、成長を続けています。
私たちの道は、「戦い」以外にはないのでしょうか。
《シリーズ 【AI vs 人間】日本酒カクテル対決! 一覧》
①第一戦「ローズティーを使った日本酒カクテル」
②第二戦「シナモンを使った日本酒カクテル」
③第三戦「カカオバターを使った日本酒カクテル」
④延長最終決戦「ウイスキーを使った日本酒カクテル」
(ライター:大久保)