令和5年、生成系AIの出現に世界が激震した。さまざまな職業・作業がAIに取って代わられ、ついに嗜好性の高い「お酒のレシピ」にもAIの手が……。このまま世界はAIに支配され、ディストピアが訪れてしまうのか。
本企画では、人類を代表する日本酒バーテンダーとAIが「日本酒カクテル」のレシピでガチンコ対決します。人類の未来をかけた三番勝負、いざスタート!
人類代表、Mr.SAKE2022の山﨑友輔さん
山﨑友輔さん。日本三大銘醸地に数えられる広島・西条に育つ。甲南大学在学中には「日本酒研究会」代表を務める。バーで修業を積んだ後「日本酒カクテル」のプロとして独立。現在は八重洲ミッドタウン「TASU+」他、店舗やイベントなどで日本酒カクテルのレシピ監修・店頭での提供を行っている。2022Mr.SAKE JAPAN。好きな食べ物は「菜の花のおひたし」。これがあればお酒が永遠に飲めるそう。
山﨑さん「ついに、AIがカクテルの世界まできましたか。でも、僕には学生時代からたくさんのレシピ開発を通し、失敗を重ねてきた『経験』という強みがあります。『日本酒カクテル』というジャンルで勝負している人間として、絶対に負けられません」
第一戦の対戦AI
AIレイライトムーン。妖精のような存在感を持つ日本酒バーテンダー。
AIレイライトムーン「レイライトムーンの存在は、その魅力をさらに増し、その日本酒性と美しさを表現しています。彼女独自の視点と専門知識に触れることで、日本酒の世界をより一層鮮やかに体験することレイライトムーンは、妖精のような魅力とプロフェッショナリズムを抑えた、魅力的な日本酒バーテンダーです」
※レイライトムーンの画像はStable Diffusion、コメントはChatGPT-3で作成しており、若干の違和感もそのままにしています。
ルール説明
- ・AIと人間が1杯ずつカクテルをつくり、美味しさを競う。
- ・AIのレシピは、各回のテーマに沿ってCahtGPT-4で生成する。日本酒は「大那 超辛口 純米酒 火入れ」を使用。
- ・人間が使える材料は、AIのレシピと同じ。日本酒の銘柄は自由。
- ・審査はライターのクリーミー大久保が行う。カクテルに造詣はなく、好きな食べ物はカレーとハンバーグ。
勝負テーマ「ローズティーを使った日本酒カクテル」
人類 VS AI、戦いの幕が切って落とされました。初戦のテーマは「ローズティーを使った日本酒カクテル」です。初戦から、オーソドックスなカクテルではそう見かけない、変化球のテーマです。どのようなレシピが登場するのでしょうか。
先攻はAIです。 AIの考えたカクテル、当然ですが初体験です。
タイトル「薔薇の和風(Rose no Wafu)」
材料:
- ・日本酒 45ml
- ・ローズティー(冷たいもの)120ml
- ・シンプルシロップ 15ml
- ・レモン汁 10ml
- ・氷
作り方:
- 1. カクテルシェーカーに氷を入れ、日本酒、冷たいローズティー、シンプルシロップ、レモン汁を加えます。
- 2. よく振って、氷を入れたグラスに注ぎます。
「薔薇の和風」という素敵な名前が付けられたAIのカクテル。完成系を見てびっくり。
レモンとハーブティーによる反応でしょうか、シェイカーから注がれた液体は、鮮やかなピンクに色づいています。これはテンションが上がります。
早速、味わってみます。
………
………
………
……あ、おいしい。
普通に、おいしいです。
ローズティーの華やかでうっとりする香りがあり、口に含むとレモンの酸味とシロップの甘味がパッと広がります。それらを下支えする日本酒のアルコール感もほどよいです。
例えるなら「アセロラジュース」です。さわやかでごくごく飲めてしまいます!
AIレイライトムーン「薔薇の和風は、ローズティーの華やかな香りと日本酒のまろやかさが絶妙にマッチしたカクテルです。リラックスタイムや女子会にぴったりな一品です」
後攻「日本酒らしさ」を追求するレシピで対抗
さあ、後攻は山﨑さんです。選択可能な日本酒はフルーティーな「わかむすめ」にチェンジ。しかしそれ以外はAIと全く同じ材料です。つまり人間サイドは、材料ではなく「バランス」や「つくりかた」でAIを上回ることが求められます。
材料:
- ・日本酒 60ml ※わかむすめ
- ・ローズティー(冷たいもの)120ml
- ・シンプルシロップ 5ml
- ・レモン汁 2ティースプーン
- ・氷
作り方:
- 1. カクテルシェーカーに氷を入れ、日本酒、シンプルシロップ、レモン汁を加えます。
- 2. よく振って、氷を入れたグラスに注ぎます。
- 3. 最後に冷たいローズティーを加え、軽く撹拌して完成。
色はピンクと茶色の間。ローズティーと一緒にシェイクしたときのような鮮やかな反応はなく、少し地味なビジュアルです。
AIと異なるポイントは①日本酒の量、②ローズティーを最後に入れること。解説してもらいましょう。
山﨑さん「僕が日本酒カクテルを提供する上で大切にしているのは『日本酒じゃなくていいよね』と思われないこと。おいしいカクテルでありつつ『日本酒である意味』を追求したいと考えています。そのため、日本酒を華やかな『わかむすめ』に変えて量を増やし、日本酒の存在を感じられるバランスに変えました。
ローズティーはシェイクせず、最後に追加。これは、甘味を減らした配合でシェイクすると、全体的に水っぽくなる恐れがあるためです。
シロップの甘味が立つのではなく、日本酒の甘味を感じることができ、それをほのかなローズの風味が支えている、そんな構成にしました」
こちらも飲んでみます。
………
………
……うん、これもおいしい。
AIのカクテルよりも落ち着いたというか、「お酒感」が増しました。一口でアセロラがやってきたAIよりも、「日本酒がちゃんと前にいる」感じで、ローズティーはあくまで後方支援。味わいの順番が入れ替わっています。
すごいです、プロのバーテンダーって、こうやって味の順番を操っているんですね。
結果発表
第一戦の勝者は………こちら!
AIです! AIの勝ちです!
確かに、山﨑さんの狙いはわかります。人間のカクテルの方が「日本酒」していました。
でも、シンプルに「おいしいカクテル」ならば、AIの「わかりやすい味」が好みでした。色も鮮やかで楽しいので、そこも大きかったです。
例えるのであれば、AIのカクテルはおしゃれなカフェで飲むドリンク、人間のカクテルは本格的なバーで飲むお酒、といった違いでしょうか。
山﨑さん「く、初戦を落としましたか……。AIの考案した『薔薇の和風』、色がピンクになることも計算していたと思うと、末恐ろしいです」
なんと、AI軍(毎回キャラが変わります)が先勝という波乱の幕開けです。いきなり窮地に立たされた人類代表・山﨑さんは、2戦目で巻き返すことができるのでしょうか。
次回、人 VS AI 日本酒カクテル対決 第二戦「シナモンを使った日本酒カクテル」をご期待ください!
《シリーズ 【AI vs 人間】日本酒カクテル対決! 一覧》
①第一戦「ローズティーを使った日本酒カクテル」
②第二戦「シナモンを使った日本酒カクテル」
③第三戦「カカオバターを使った日本酒カクテル」
④延長最終決戦「ウイスキーを使った日本酒カクテル」
(ライター:大久保)