【酒蔵だより・畑酒造】自社田で作る「吟吹雪」。今年の米作りレポート

整理された稲の苗の様子

滋賀県・畑酒造では、「大治郎」という銘柄が誕生した1999年から、地元の契約農家が作る酒米のみを使った酒造りをおこなっています。さらに、2009〜2010年ごろからは、自社田での酒米作りも始めました。

お米への情熱が詰まった日本酒「大治郎」。気になる今年のお米作りについて、畑酒造・女将の畑 久美子さんに教えていただきました。

目次

自社田で育てる「吟吹雪」

畑酒造では、10月から3月の冬期に酒造りをおこなっています。それが終わると、4月から9月のあいだは酒米作りをおこないます。

生産者の顔の見える酒造りをしたいと考えていたころ、酒米に興味のある、地元の熱意ある農家の方と出会い意気投合。契約農家としてタッグを組み、米作りを始めました。現在は契約農家も4件に増え、『吞百笑(どんびゃくしょう)の会』と命名。農家同士、技術面や生産計画等を意見交換するなど、意識の高いグループになっています。

そして以前から「自社でも酒米を作りたい」という思いがあったため、2010年から『吞百笑の会』のメンバーに指導していただきながら、自社田での米作りをスタートさせました。

50アールという小さな田んぼ1枚からから始まった酒米作りも、今年で14年目を迎え、200アールに広がりました。栽培する酒米は、滋賀県の酒造好適米「吟吹雪」です。

酒米作りを始めた初期の頃の様子
酒米作りを始めた初期の頃の様子

吟吹雪は、「山田錦」を母、「玉栄」を父とする品種です。丈が短いため倒伏の心配がなく、比較的育てやすい品種ではありますが、出穂(しゅっすい)するまでに少しでも葉色が落ちると収量が急落してしまうというデメリットもあります。そのため、出穂前後の追肥のタイミングがその年の収穫の鍵となります。

吟吹雪は、砂質の土よりも肥沃な田んぼで育ちやすい品質なので、粘土質である弊社の圃場に適しています。

「吟吹雪」ができるまで

田植え機に苗をセットする様子

5月〜 田植え〜活着
田植えのあと、苗が活着する(根づいて生長しはじめる)まで、寒さや風から稲を守るため、やや深く水を張ります。

6月初旬の田んぼの様子

6月初旬〜 分げつ期
分げつ(枝分かれ)を促進させる為、水の深さを浅くします。

7月初旬の田んぼの様子(中干し)

7月初旬〜 適期中干し(期間は14日以上)
分げつが目標数の8割になったところで、中干しをおこないます。中干しとは、夏の暑い盛りに田んぼの水を抜いて、土にヒビが入るまで乾かす作業で、土壌を酸化状態に切り替え、根の発達を促し、過剰な分げつを抑えるのが目的です。

溝切り機

中干しを行う前に、田んぼの中に溝切り作業(田んぼに溝を切り排水口に繋げる作業)をおこないました。

出穂の様子

8月〜 出穂前後
出穂前後は、稲が最も水を必要とする期間なので、水不足にならないよう注意が必要です。

2023年8月17日 出穂
いよいよ稲穂が顔を出し始めました。稲穂が出そろってから40日前後が収穫の時期となりますが、気候によって稲の成長も変わるので、年によって絶好のタイミングを見計らっておこないます。

今期の造りに向けて、お米の出来は?

田んぼの様子

酒米作りにはさまざまな工程がありますが、その中でも水管理にはこまめに気を配ります。今年は雨が少なく、ダムの貯水量も減少し、田圃の水管理に大変苦労しました。

近年の高温による影響を心配していましたが、10月6〜8日に無事収穫することが出来ました。未熟米が少し多めで収量は若干少なかったですが、等級監査では全量1等を取ることができて安心しました。『吞百笑の会』のメンバーも同様に減収でしたが、品質は良いものが収穫できました。

今期の酒造りは10月末から3月までを予定しています。吟吹雪・山田錦・渡船二号・玉栄の4品種の酒米を使用し、それぞれの原料の特性を引き出すことで、個性的で高品質な酒造りを目指します。今年も「飲んで美味しかった」と感じてもらえるように頑張りますので、よろしくお願いします。

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