【酒蔵だより:八木酒造部】水酛造り第2弾「山丹正宗 MINAMOTO」について

山丹正宗MINAMOTO

「山丹正宗」醸造元の愛媛県・八木酒造部が、2023年11月にリリースした「山丹正宗 MINAMOTO(みなもと)」。前回の「華帯」に続き、室町時代から伝わる「水酛(みずもと)造り」という製法を用いています。

今回の「酒蔵だより」では、八木酒造部8代目蔵元の八木伸樹さんに、水酛造りにかける想いや「華帯」との違いについて解説いただきました。

目次

「華帯」に続き、水酛造りにチャレンジ

櫂入れの様子

「山丹正宗 MINAMOTO」は、室町時代から伝わる、天然の乳酸菌を生かした製法「水酛」で造る日本酒の第2弾です。

八木酒造部は愛媛県にありますが、創業者である八木治兵衛は奈良県の出身です。八木家のルーツとなる土地で室町時代から行われていた製法ということで、昨年から水酛による酒造りにチャレンジしています。

ただ、これまで八木酒造部では生酛造りや山廃造りの経験がなかったため、蔵に乳酸菌を持ち込むことで、他のタンクに乳酸菌が混入するコンタミネーション(汚染)が発生する恐れがありました。

そのため、他の造りに影響しないよう、2022BY(製造年度)の最初の方と最後に仕込むこととしました。最初にできたのが「華帯」で、最後にできたのが「MINAMOTO」です。

カジュアルな辛口純米酒を目指す

「MINAMOTO」

「華帯」では、海外と贈答用を意識して、落ち着いたまろやかな純米大吟醸かつ日本女性の着物を意識したパッケージに仕上げました。一方、「MINAMOTO」は、日本酒好きに幅広く飲んで頂く「カジュアルな辛口純米酒」を目指しました。

酵母の選択ですが、まず水酛の性質上、あまりフルーティな香りは合わないだろうと思いました。また水酛は乳酸菌由来のまろやかな酸味がでるので、さらに爽やかな酸味を出す協会6号酵母とすることで、違ったニュアンスの酸味が合わさり、複雑な味わいを演出できるのでは、と考えました。

酸味である程度辛さは表現できるので、日本酒度は+4~+5、飲みごたえはしっかり出すためにアルコールは16%と設定しました。

二つの水酛の違い

「山丹正宗 華帯」と「山丹正宗 MINAMOTO」

水酛造り第1弾の「山丹正宗 華帯(はなおび)」は、愛媛さくらひめ酵母で仕込んだ、クリーミーなまろやかさが特徴の純米大吟醸でしたが、第2弾の「山丹正宗 MINAMOTO」は、協会6号酵母で仕込んだしっかりした酸味が特徴の辛口純米酒です。なお、現行商品で6号酵母を使っているのはMINAMOTOだけです。

「華帯」の時にも感じたのですが、言われないと「水酛造り」と気付かれないレベルにきれいな酒質となっています。最初に6号酵母らしい爽やかな酸味が走り、口に含むにつれ乳酸菌由来のまろやかな酸味が感じられ、最後は辛口のお酒らしく、切れ味良く味がさっと引いていきます。

派手さは無いのですが、特にくせも無く、飲みやすくて飲み続けやすいお酒に仕上がっていると思います。

ちなみに、お酒の名称は、日本酒の製造方法の源流を辿るという意味を込めて、MIZUMOTOのZとUを回転させてMINAMOTOとしました。ラベルは3つの水(今治・八木酒造部・水酛)をイメージした3本の波をあしらい、横に並べるとずっと波が続くデザインとしました。

ペアリングのおすすめは焼き鳥!

「山丹正宗 MINAMOTO」は、八木酒造部の水酛造りをもう一段階進めるチャレンジで、まだまだ発展途上ではありますが、今後目指すところの布石として是非押さえて頂きたいところです。やや味が濃い料理が合い、オリーブオイル系のパスタやポークソテー、個人的には特に焼き鳥がおすすめです。一度お試しあれ!

山丹正宗 MINAMOTO

上品で気高い甘旨味と綺麗な酸味の調和。香りは穏やか、ほんのり白桃を思わせるような果実香に乳酸系の酸い香りが寄り添います。

口に含むと上品で淑やかな甘味が広がります。乳酸系の爽やかな酸味が味わいを包み込み、立体感のある味わい!綺麗な酸味の余韻としっとりとした柔い旨味が絶妙に調和していきます。ほろ渋さと共に後半は後キレよく、ほっとするような柔らかさと共にフィニッシュ!

冷酒ですとキリリと洗練されたイメージ、ぬる燗でほっこりする味わいをお楽しみください。クリアで上質な山丹正宗流・水酛、是非お試しあれ。

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