「原田」を醸す山口県・はつもみぢでは、その原料米をすべて地元・山口県産に限定しています。価格高騰や高温障害などにより、酒蔵にとっては不安の多い近年のお米事情。そんな状況も踏まえながら、今回は、はつもみぢが大切にしている山口県産の酒米や、6月にリリースした新しい定番酒「原田 純米酒イセヒカリ」について、広報の渡邊さんにお話を聞きました。
米農家の顔が見える酒造り

これまで、「原田」では主に以下の原料米を使ったお酒造りをしてきました。
・山田錦
・雄町
・西都の雫:山口産のオリジナル酒米。
・イセヒカリ:「神米」と呼ばれる伊勢神宮ゆかりのお米。
・泣かす米(限定商品用):周南市中須地区の棚田で栽培される、農薬を一切使用せず、昔ながらのはぜかけ天日干しの農法で作られたコシヒカリ。
いずれも、生産地は山口県に限定しています。これは20年前、現蔵元・ 原田康宏が酒造りを再開したときから始めた取り組みです。地元の酒米で醸したお酒が愛され、それがまた地域の活性化につながる。弊社では、そんな循環を大切にしたいと思っています。
そのうえでは、農家さんの顔が見えることも重要です。契約栽培にも積極的に取り組んでおり、現在は使用する山田錦の約7割が周南地域の契約農家さんによって育てられています。
今年の春も、契約農家の皆さんにお集まりいただき、意見交換の場を設けました。今後は田んぼへ直接足を運ぶなど、より深い関係を築いていく予定です。
高温障害、価格高騰……近年のお米の問題について

近年、全国的に問題視されている高温障害。山口県でも例外ではなく、収穫された酒米が固く、溶けにくくなる傾向が見られるようになりました。
こうした変化に対して、弊社では浸漬(しんせき=米を水に浸けて吸水させる工程)を工夫するなどの対応をしています。山口県酒造組合から提供される分析結果も参考にしながら、その年ごとの米の性質に合わせた酒造りを心がけています。
さらに、米の価格高騰の動きはまさに予測不能な状況であり、ほかの酒蔵さんのお考えをお聞きしたいほどです。
お酒の品質を守るためには、良質な酒米の安定的な確保が不可欠です。今年の秋の収穫を見て、農家のみなさんとしっかり話し合っていく予定です。正直なところ、米の仕入れ価格の高騰は避けられないと考えています。こうした状況を受けて、商品ラインナップの見直しも視野に入れています。
山口ゆかりのストーリーを持つイセヒカリが純米酒に

そんな中、この6月から新たに加わったのが「原田 純米酒 イセヒカリ」です。
イセヒカリは、伊勢神宮の神田が台風の被害を受ける中、倒れずに立っていた2株の稲から誕生したとされるお米です。実は、その稲の可能性に注目し、品種改良と育成に大きな役割を果たしたのが、山口県農業試験場の研究者でした。現在も県内の農家がイセヒカリを栽培しています。
もともと純米大吟醸として販売しており、大変ご好評いただいていますが、山口にルーツがあり、ストーリー性のあるこのお米をさらに多くの人に届けたいと思い、「原田 純米酒 イセヒカリ」のリリースに至りました。
今回の仕込みでは、精米歩合75%という低精白に挑戦しています。これは、イセヒカリがもともと食用米としての旨味を備えているため、その個性を活かすための選択でした。飯米ならではのふくよかな旨味がしっかり感じられ、イセヒカリの個性が最大限に引き出されているお酒になっています。
山口のお米を大切にする「原田」の新しい顔として、ぜひ一度お試しいただけるとうれしいです。
【酒蔵だより:はつもみぢ】
- 2023年8月:「酒蔵をもっと親しみやすい場に! 角打ち場をオープン」
- 2024年11月:「「原田」のロゴが新しくなった理由。創業200年リブランディングについて」
- 2025年7月:「なぜ山口の酒蔵が「イセヒカリ」で酒造り?」