【酒蔵だより:八木酒造部】水もと仕込みに初挑戦した「山丹正宗 華帯」

山丹正宗 華帯

「山丹正宗」醸造元の八木酒造部は、2023年3月30日に、「山丹正宗 華帯」という新商品を発売しました。この「山丹正宗 華帯」は、愛媛県が新たに開発した「愛媛さくらひめ酵母 type4」を使用し、室町時代から伝わる「水酛(みずもと)」という、天然の乳酸菌を生かした製法で造った純米大吟醸酒です。

今回の「酒蔵だより」では、八木酒造部8代目蔵元の八木 伸樹さんにこのお酒をリリースした経緯や、お酒の味わい・飲み方について解説いただきました。

目次

なぜ水酛のお酒を造りはじめたのか

八木酒造部の創業者である八木治兵衛は、大和八木(現在の奈良県橿原市)の出身です。その八木家のルーツである奈良県で、室町時代から行われていた水酛(≒菩提酛)の酒造りに、かねてより興味を持っていました。ただ、奈良県の蔵元さんが造る水酛のお酒は、個性の強い、どっしりとした酒質が多く、淡麗なお酒が好みの私は、挑戦するのにずっと躊躇しておりました。

そのまま新型コロナ感染症の蔓延で製造量を絞る時期が続いていましたが、コロナ禍が落ち着いて久々に2022年の日本酒フェアが開催された際、奈良県の喜多酒造さんの水酛に出会いました。喜多酒造の喜多社長はもともと親交があったのですが、その喜多社長が醸す水酛はこれまでに飲んだことがないきれいな酒質で、かつ水酛らしい乳酸菌の爽やかな特徴もちゃんと出ており、「こんなお酒が造れるなら、チャレンジしてみたい」と思いました。

その場で喜多社長に造り方を教えていただけるようお願いしたところ、快く承諾いただき、早速翌月には弊社の杜氏を連れて喜多酒造さんを訪問し、製法のレクチャーを受けました。

どういう造りなのか?

櫂入れの様子

水酛造りとは、天然の乳酸菌を活用し、仕込み水を乳酸発酵させる製法です。

日本酒の製造でとりわけ重要なのは、雑菌がなく、酵母だけがいる環境で発酵させることです。具体的には、タンク内を強い酸性にすることで雑菌を死滅させ、酸に強い酵母だけが生き残るようにします。現在は、科学的に生成した乳酸を添加することで酸性の環境を作りますが、それがなかった時代は、天然の乳酸菌を活用していました。

こうした製法のなかでは、蒸米を培地として乳酸菌を繁殖させる「生酛造り」が有名ですが、「水酛造り」はまず仕込み水を乳酸発酵させます。「水酛造り」発祥の地といわれる奈良県の菩提山正暦寺は、湧き水にもともと乳酸菌が含まれており、それに生米と蒸米を漬けておくと米の成分によって乳酸菌が発酵を始め、「そやし水」という酸性の仕込み水ができたそうです。

八木酒造部では、かつての「そやし水」の作り方そのままではなく、喜多酒造から教わった、より洗練された製法での水酛造りを行っています。

「いつまでも飲み続けられる」水酛のお酒に

山丹正宗 華帯

水酛造りにチャレンジにあたって、もう一つの目的がありました。それは、お酒の味に奥行きというか、複雑さを出したかったというものです。山丹正宗のお酒は全般的にすっきり淡麗タイプで、飲みやすいものが多いです。これはこれでもちろん良いことなのですが、天然の乳酸菌を活用することで、乳酸菌らしい爽やかな酸味やまろやかなコクなどが加えられないか、と考えました。

実際できたお酒「山丹正宗 華帯」は、初挑戦にしてはとてもきれいな酒質で、逆にきれいすぎて、言われないと「水酛造り」と気付かれないレベルのものに仕上がりました。香りも口当たりも穏やかで、少しミルキーなコクがあり、後味にほんのりヨーグルトっぽい酸味が感じられます

当初、もっと「水酛らしさ」があっても良かったかな、とも思いましたが、個人的にとても重要だと考える「いつまでも飲み続けられるお酒」に仕上がっており、もう少し時間の経過による変化も見てみたいと思っています。

飲み手の方へのメッセージ

今回初チャレンジとなる水酛造りの純米大吟醸「山丹正宗 華帯」は、古代のロマンを感じさせつつ、味わいは現代的な、洗練されたものとなっています。その落ち着いたまろやかさから、合わせる料理の幅が広いのですが、特にチーズとの相性が良いように感じます。カマンベールやブルーチーズ、少し癖のあるウォッシュ系でもうまく調和するので、ぜひ一度お試しいただければと思います。

山丹正宗 華帯 水もと仕込み 

えひめ香る地酒プロジェクト、新しい花酵母「愛媛さくらひめ酵母」を使用したお酒「愛媛さくらひめシリーズ」

八木酒造部からは、“愛媛さくらひめ酵母Type4”を使用し、室町時代の製法、水もとで仕込んだ純米大吟醸“華帯”が登場。

香りはやわらかく、ふんわり蜜を思わせるような甘い香りにそっと乳酸系の酸い香りを感じます。

口に含むと程よくジューシーな甘味!ふんわりとふくらんでいく旨味を乳酸系の酸味が包み込みます。味わいはしっかりとしておりますが、とても馴染みが良くやわらか。乳酸系の酸の余韻はラストまで続き、優しい余韻にそっとほろ渋さが寄り添います。

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