【酒蔵だより:新谷酒造】IWC&Kura Masterで受賞!世界に羽ばたく「わかむすめ」

「わかむすめ」3本と黄金に実る稲穂

英国ロンドンで毎年開催される世界的ワインコンテスト「International Wine Challenge(インターナショナル・ワイン・チャレンジ、以下IWC)」。2024年のSAKE部門にて、山口県・新谷酒造「わかむすめ 燕子花」がリージョナル・トロフィーを受賞。さらに、フランスの「Kura Master」でもTOP5にランクインしました。

夫婦二人で営む小さな酒蔵ながら、世界的な評価を高め、輸出先を拡大している新谷酒造。蔵元の新谷文子さんが、今回の受賞についてのエピソードや、海外進出に対する考えを綴ってくれました。

目次

困難を乗り越え、世界の賞を受賞

IWCは毎年、世界中から集まった日本酒、ワインの専門家がイギリスのロンドンで審査をおこない、授賞式を開催します。普通酒・純米酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒・本醸造酒・吟醸酒・大吟醸酒・スパークリング・古酒の9カテゴリそれぞれのトップに選ばれたお酒に「トロフィー」が与えられますが、その次点にあたるのが「リージョナル・トロフィー」です。

IWC2024にて、「わかむすめ 燕子花」は、純米大吟醸部門のリージョナル・トロフィーをいただきました。さらに、フランスのソムリエやバーマンが審査する日本酒コンクール「Kura Master」でもTOP5にランクインすることができました。

「わかむすめ 燕子花」

正直、今シーズンは乗り越えられないかもしれないと何度も思うことがありました。

蔵の梁が損傷し、そこで仕込みができなくなったのが6年前。敷地内に仮設の仕込み蔵を建てて、なんとか再起をかけようと駆け抜けてきました。ところが、年々体の不調が大きくなり、昨年の夏にちょっとした手術を受けました。その直後に無理をしたせいか、秋には突発性難聴の発症に始まり、次から次へと不調が続き、「燕子花」の仕込み前には満身創痍の状態でした。

「明日は起き上がれないかもしれない」と思うことが何度もありました。そんな状況に加えて、今シーズンはかつてないほど原料米の扱いに四苦八苦し、「燕子花」の造りでは特にトラブルが続きました。

どうなるかわからない状況のまま、ただ前だけを見つめ、酒造りと向き合い続けました。「今年は出品できるものはないな」と肩を落としていましたが、心血注いで醸したものだからと、いくつかのコンクールへ出品したところ、このような栄誉ある賞をいただくことができたのです。

燕子花の花言葉には「幸福は必ずやって来る」という縁起の良いものがあります。「とびきりの一本を醸し、再起するんだ」と願掛けのようにして付けた名前でしたが、まさに次から次へと幸福を運んできてくれるお酒となりました。

日本酒の国際コンクールに挑戦する理由

コロナ禍に行われたKura Masterのオンライン授賞式
コロナ禍に行われたKura Masterのオンライン授賞式

日本酒にはさまざまなコンクールがあり、最近は海外で開催されるものも増えてきています。消費者の中には、それぞれのコンクールの違いがわからず、出品することに疑問を持つ方々もいるかもしれません。実際のところ、私もすべてのコンクールを把握しきれているわけではありません。

しかし、こうして日本酒コンクールが増えている流れから、世界各国での日本酒の飲酒人口がどんどん増えていることが伝わってきます。IWCのようなワインのコンテストでSAKEが高い評価を得ることができれば、日本酒がワインと肩を並べる未来もそう遠くないかもしれません。

ちなみに、コンクールはそれぞれ審査基準が異なります。その国の審査員のみが評価するコンクールもあれば、世界中から多国籍の審査員が集まってくるコンクールもあります。

それだけに、選ばれる日本酒もコンクールによって異なりますが、中には国内外どんな審査会に出しても高評価を得ているお酒があります。新谷酒造が目指すのは、そういった日本酒です。

また、コンクールは海外進出の指標にもなります。その国での評価を知ることで、市場における「わかむすめ」のポジションや好まれる味わいの傾向を掴み、酒質設計や営業にも活かすことができるのです。

つまり、どんなに審査方法が異なっても、それぞれのコンクールで高みを目指すことで、結果的には商品全般の技術の向上へ繋がると考えています。

輸出先での「わかむすめ」への反応

「ソウルSAKEフェスティバル」にて
「ソウルSAKEフェスティバル」にて

現在、「わかむすめ」は韓国、台湾、シンガポール、香港に輸出しています。いずれもアジア圏ですが、今のところ酒質には高評価をいただいています。どの国のインポーターからも、弊社のお酒のように、「フルーティで軽やかな甘味のある味わいは人気がある」と言われています。

先日、「ソウルSAKEフェスティバル」に参加するため、初めて韓国を訪れました。​​来場者数6000人とも言われるイベントで、そのほとんどが若者で、想像以上に熱気に溢れていました。

韓国では、日本酒は若い世代の間で人気があり、熱心なファンは好きなお酒の酒蔵へ行ったり、居酒屋で日本酒を飲んだりするために日本へ旅行することもあるそうです。好きな蔵のSNSもチェックしていて、日本で流行している銘柄が特に人気のようでした。

お客さまの一人から、「『わかむすめ』は、韓国の日本酒通の間ですごく人気がある」と言ってもらえたときは、胸がいっぱいになりました。海を越えた場所で、自分のお酒をそんな風に飲んでもらえる日がやって来るなんて、6年前は思ってもみなかったことです。

「わかむすめ」が大きな賞をいただけたのは、ファンの方々に支えていただいたおかげです。韓国のファンの皆様にもとても温かいお言葉をいただき、これからも期待に応えていきたいと強く感じました。

まとめ

今回の経験を通して、やはり大切なのは、日々の酒造りに真摯に向き合いながら、地道な努力をコツコツと積み重ねること。そして、応援くださる皆様に美味しい酒をお届けして、恩に報いることだと感じました。

コンクールや鑑評会はその先にあるものです。ファンの方々に喜んでもらえるお酒を造ったうえで、これからも良い評価を受けることができればさらにうれしいなと思います。

 

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