3月22日にリリースされた、森酒造場の「HIRAN's Mile」。いまやSAKE Streetでも人気銘柄となっている「飛鸞」の成長の節目として、毎年3月22日「飛鸞の日」に向けて発売されるお酒です。今年のHIRAN's Mileでは、森酒造場で長い時間をかけて開発された「蔵付き酵母」が使用されています。
「飛鸞の日」に込める思いや、蔵付き酵母の開発経緯、そして今後目指す地域性の表現について、五代目蔵元杜氏の森 雄太郎さんに語っていただきました。
飛鸞の成長の証となる記念作品「HIRAN's Mile」
「HIRAN's Mile」は、飛鸞(HIRAN)の成長の証となる記念作品です。HIRANブランドが、より多くの人に笑顔を届けられるよう成長していく。その過程における節目を、記念作品として毎年残したい。そのような想いから「HIRAN's Mile」は生まれました。お客様にも、毎年この作品を通して、これから続いていくHIRANブランドの成長を長く見守っていただきたいと願っています。
HIRAN's Mileの発売日は、3月22日の「飛鸞の日」です。2017年に蔵に戻り、酒造りを重ねるたびに「平戸の風土を表現したい」という想いが強くなりました。そして試行錯誤を繰り返した結果、2021年3月22日にようやく生酛造りの酒が完成しました。
それは、私が描く飛鸞の酒造りの基礎となるもので、大きなピースが揃ったと感じました。酒質はまだまだ未熟で、決して満足できるレベルではありません。しかし「ようやくスタートラインに立てた」、そう感じた瞬間でした。
2021年に仕込んだ生酛づくりの酒母
今回のお酒にも活用。長期間かけて開発した「蔵付き酵母」とは
今年のHIRAN's Mileには「蔵付き酵母」を使用しています。蔵付き酵母の活用には長い期間をかけて取り組んできていましたが、ようやく準備が整った結果、今回のリリースに繋がりました。
オンリーワンのお酒造りを実現したいとの思いもあって、蔵に戻って2年目の2018年と早い段階から蔵付き酵母の採取に着手していました。しかし酵母は見つかっても酒造りには向いていなかったりと、なかなか適した酵母が見つからず、着手してから採取ができるまで2年ほどの期間がかかりました。
採取後も、発見した2種類の酵母がどのような発酵をするのか(香り、酸の出方など)、時間をかけて単体ごとに確認を進めていました。1つは、メロンのような香りに、リンゴ酸を少し多めに出すタイプです。もう1つは、ほのかにりんごのような香りがするタイプです。
両方の酵母に共通しているのは、香りが派手な方ではないという点です。私たちが、蔵に棲みつく菌たちでお酒を醸すことに見出す「オンリーワンの価値」が発揮できる、オリジナリティの強い酵母を採取することができたと感じています。
採取した蔵付き酵母
蔵付き酵母を通じた表現から、平戸の風土の表現へ
蔵付き酵母を使用したHIRAN's Mileは、森酒造場を舞台に、これまでの積み重ねてきた歴史があってこそ実現しました。私たちは平戸の地域性を大切にしながら酒造りをおこなっていますが、これを通じて、地域とのつながりでもさまざまな表現ができるのではないかと考えています。
たとえば、森酒造場だけでなく平戸という舞台で考えた場合、植物(ツツジなど)、建造物(教会など)をはじめ、平戸ならではのオリジナリティを持つものも多くあります。酵母というものは自然界のあらゆる場所に生息してますので、そういったところから酒造りに向いている酵母を見つけ出しお酒として表現するのも酵母を中心とした地域とのつながりの一つとして面白いのかもしれません。
平戸原産、1712年『和漢三才図会』でも紹介されるヒラドツツジ
まとめ
日頃よりご愛顧いただいている皆様、そしてこの記事をきっかけに興味をお持ちいただいた皆様、最後までお読みいただき、ありがとうございます。弊社が醸す「飛鸞」は、これからもさまざまなことに挑戦し、平戸の魅力、発酵の面白さを飛鸞を通して発信していきます。
時には、斬新なお酒を世に送り出すこともあるかもしれませんが、私たちが造る酒には、すべて意図があります。私たちが醸す飛鸞は、嗜好性だけでなく、楽しさや面白さといった体験価値を重視しています。ぜひ、固定概念や先入観にとらわれず、お試しください。そして、いつか飛鸞を造るこの平戸にも、ぜひお越しいただけると嬉しいです。