水酛造りや有機JAS認証取得など、新しい挑戦を続ける「山丹正宗」醸造元・八木酒造部(愛媛県)。国内外のコンテストで、その高い技術が評価されています。
今回の酒蔵だよりでは、蔵の顔とも言える定番酒「山丹正宗 純米酒 松山三井」について、八木酒造部8代目蔵元の八木伸樹さんに綴っていただきました。
「山丹正宗 純米酒 松山三井」とは
清酒「山丹正宗」醸造元の八木酒造部は、愛媛県今治市にある1831年創業の酒蔵です。そんな当社の定番酒は地元の酒米「松山三井(まつやまみい)」を使用した「山丹正宗 純米酒 松山三井」で、発売して30年以上ものロングセラー商品になります。
このお酒は、先日発表された「ワイングラスで美味しい日本酒アワード2025」で金賞を受賞しました。昨年はSAKE COMPETITION 2024の純米酒部門で全国6位、一昨年は全国燗酒コンテスト2023で金賞を受賞するなど、数々の受賞歴があり、当社の最重要商品と位置付けている渾身の逸品です。
蔵の柱となる純米酒

「山丹正宗 純米酒 松山三井」は、松山三井を60%精米で仕込んだ純米酒です。
松山三井はもともと食用米で、県内で最もよく作られていたお米でした。食用としては他のお米の人気に押され廃れてしまいましたが、酒造適性が高いために酒米として需要が高まり、現在、愛媛県と高知県では最もよく使われる酒米に成長しました。大粒で低タンパク、やや硬めで粘り気が少ない性質で、高精白にも対応できます。比較的溶けにくいため、すっきりとした酒質になりやすいお米です。
「山丹正宗 純米酒 松山三井」は、かつては短期もろみ(発酵期間が短いこと)でフルーティさが全くなく、どっしりとした飲みごたえのあるお燗向けの辛口酒でした。15年ほど前になりますが、当時は大吟醸を得意としており、正直なところ純米系のお酒はあまり売れていませんでした。
しかし、「どうしても自社の柱となる純米酒が造りたい」と思い、2015年ごろからリニューアルにチャレンジしはじめ、何度も酵母や仕込み配合を変更し、ようやく今の酒質にたどり着きました。
現在は低温発酵の長期もろみに変更し、みずみずしいブドウやマスカットを思わせる爽やかな香りがあり、甘み、酸味、渋みのバランスが良く、冷やしても少し温めてもしっかり旨味が感じられる「ザ・食中酒」というタイプのお酒になりました。
料理との組み合わせが奏でるハーモニーを楽しんで

個人的には、地元のソウルフード「今治焼き鳥」との組み合わせが大好きです。
今治焼き鳥は普通の焼き鳥のように串に刺して炭火で焼くのではなく、鉄板の上でコテで押さえつけながらパリパリに焼き、ドロッとした甘辛いタレをかけて食べます。脂の旨味とタレのコクに、「山丹正宗 純米酒 松山三井」の爽やかな酸味がぴったり組み合わさり、完璧なハーモニーを奏でます。
「山丹正宗 純米酒 松山三井」は火入れの通年商品に加え、11月に「初しぼり」、4月に「無濾過生原酒」として搾りたての生酒が出荷されます。それぞれ搾りたてのフレッシュ感と生酒特有のコクがプラスされ、季節商品として人気です。これらには新鮮な魚介類、特に瀬戸内のサバやアジなんかが良く合います。
また「山丹正宗 Jazz Brew」は、「山丹正宗 純米酒 松山三井」のもろみにONKYO※の加振技術でJazzを聞かせることで、酵母を活性化させたお酒です。基本的に酒質は同じですが、搾った直後からまろやかさが感じられ、また少し違った飲み口が楽しめます。是非Jazzをかけながら、ワイングラスで飲んでいただきたいです。
※ONKYO:オーディオ製品を手がける会社
今回ご紹介した「山丹正宗 純米酒 松山三井」は、「カジュアルに楽しめる」ことを最大のテーマにしています。季節野菜を使ったパスタ、寒い冬の寄せ鍋、スーパーのお惣菜など和洋問わず普段の食事に、その日の気分で冷やしたり温めたりして気軽に飲んでみてください。
山丹正宗 純米酒 松山三井 初しぼり 無濾過生原酒
お知らせ
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【酒蔵だより:八木酒造部】
- 2023年夏:「水もと仕込みに初挑戦した「山丹正宗 華帯」」
- 2023年秋:「水酛造り第2弾「山丹正宗 MINAMOTO」について」
- 2025年春:「蔵の柱。定番酒「山丹正宗 純米酒 松山三井」ってどんなお酒?」