コロナ禍に誕生し、大好評の「真上(しんじょう)」。5年の歳月を経て、この度ラベルのデザインがリニューアルされました。
今回の酒蔵だよりでは製造責任者の臼井卓二さんにリニューアルした経緯や、新ラベルに込められた想いについてを綴っていただきました。
ラベルをリニューアルするに至った経緯
「真上」のラベルを変えることにした経緯は、飲み手の方々の思う「真上」のイメージが徐々に形成されつつある中で、そのイメージと既存のデザインとの間に微妙なズレが生じているのではないかと感じたためです。
「真上」は当初、「火入れで落ち着いた味わい・従の酒」をコンセプトに誕生しました。ラベルには、蔵から見える筑波山と、朝日をイメージした赤い箔押しが施されていました。

しかし、バリエーションの一つとして生原酒を商品化したところ、飲み手の皆様にはそちらのイメージが強く印象に残ったようで、「真上=生原酒・フレッシュ」というイメージが定着していきました。
現状のラベルが急ごしらえで作成したため、酒質や私たちの想いをラベルに十分に表現できていませんでした。また、「真上」の立ち上げて5年経ち、目指すべき方向性も定まってきたため、このタイミングでラベルをリニューアルしたいと考えたのです。
新ラベルに込めた想い
デザイナーについては、引き続き「真上」のデザインを当初から担当して頂いている日置恵さんへお願いしました。日置さんには、開始当初から「真上」のコンセプトを共有しており、これまでのお酒の味わいについても共有しています。また、今までの「真上」の進化の過程も見続けてもらっていました。日置さんのデザインがあってこその「真上」だと考えているため、彼女以外にお願いするつもりはありませんでした。
伝えたのは、「新鮮・フレッシュ」という点と、「繋がり」という点をデザインで表現してほしいということでした。
「繋がり」という点をお願いした理由は、この「真上」というお酒が、これまで接点がなかった飲み手・酒販店さんなど、さまざまな形で応援してくれる人たちとの繋がりを蔵へもたらしてくれたことにあります。
また、今回のラベルリニューアルの機会に「『真上』というお酒は何だったのか」を改めて考えた際に気づいたことですが、蔵内のメンバーたちとの繋がりがより強固になったということも理由の一つです。

「真上」がスタートする以前は、各メンバーがそれぞれ自分の仕事をこなすのみで、蔵の商品はただの売り物、という雰囲気でしたが、スタート後にはこれまでなかったお酒の感想をもらったり、取扱店が増えていったりしたことで、お酒の動きが活発になると我が事のように喜んでくれたり、仕事に関しても以前より積極的に取り組んでくれたりと、以前まではなかった明るい雰囲気とチーム感が醸成されたことに気づかされました。
以上のような経緯から、「繋がり」というキーワードをなんとかデザインで表現できたらと思い、日置さんに共有した次第です。
デザインへのこだわり
これらの想いは、色、紐状のデザイン、そして細部にまで及んでいます。

まず色については、「新鮮・フレッシュ」というイメージを表現するとともに、香りや味わいも伝えたいと考えました。
例えば、ラベル全体を白地ではなくクリーム色にしているのは、「真上」のお酒の特徴である酸を表現するためです。「真上」シリーズに共通する特徴のため、全ての新デザインに統一して使用するつもりです。

次に、紐状のモチーフについては「繋がり」という想いを基に表現していただきました。
一見するとただの紐に見えるかもしれません。しかし、全体を見ると枯山水をモチーフにしており、「欲している水分が染み渡る」という間接的なシズル感も含まれています。
また、紐状のデザインについては「繋がり」を「紡ぐ」というイメージで、糸巻きをモチーフにしました。「より集まったものがさらに新しいカタチに変化していく可能性をもつ糸。それを束ねている糸巻き」、そんな意味が込められています。
さらに、ラベルにはパッと見ではわからない、遊び心も隠されています。従来の「真上」のラベルデザインがひっそりと隠れていたり、「真上」の頭文字“S”、お酒をつぐ手など、さまざまなモチーフが潜んでいます。もし見つけた方がいらっしゃいましたら、ぜひガッツポーズしてください。これを読んで蔵にお越しいただいた方にはどこにモチーフがあるのかをお教えします。
まとめ
ラベルをリニューアルしたことで酒質の方向性が決まり、届けるべき飲み手に届きやすくなったと考えています。今後はこのデザインと酒質がより合致するよう酒質を洗練し、研ぎ澄ませていけたらと思います。
また、火入れのお酒に関してはもう一度再考し、火入れの手法も含めて改善していきたいです。

今回のラベルリニューアルは、5年という月日を経ての想いを形にしたものです。
これからも「真上」は、成長し、進化し続けていきたいと願っています。今後の「真上」の歩みに、温かいご注目をいただけたら嬉しいです。
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