薄く切ったカマボコに、わさび醤油を添えたシンプルなおつまみ、板わさ。そば屋でそばが茹で上がるまでにちょいと一杯やりたいときの定番アテですね。もちろん、その手軽さゆえ家庭でも食べる機会は多いと思います。
日本酒との相性という点でも言わずもがな。それだけに、わざわざどんなタイプの日本酒がベストマッチなのか深掘りする人はあまりいないんじゃないでしょうか。
今回はあえて、そんな定番オブ定番の板わさと日本酒の関係性を探ります。
大体合うけどぴったりは難しい
実際に検証してみると、実は100点満点のペアリングを目指すのは難しい食材だということがわかりました。
確かにどんな日本酒とも相性は悪くないんです。ただ、どれも60~70点くらいなんですよ。そこから突き抜けてくるお酒があまりない。
食材としての個性が控えめなので、どんなタイプともうまくやっていけるんだけど、逆にパズルのピースがハマるように、ビタっと合うお酒は見つけるのが難しいという……人間でもそういう方いますよね。
そんなわけで、極端な味の酒でなければ、どんなタイプでもそれなりには美味しくいただけますが、それだと記事にならないので、もうちょっと詳しく探りましょう。
様々なタイプとの相性
魚介系のアテの場合、生酒やフルーティな香りを持つタイプは臭みを助長することがあります。しかし、カマボコはクセがほとんど無い上、わさびの効果もあってフルーティ系でも良く合います。
逆に比較的合わせやすそうなイメージのある淡麗辛口はイマイチ。カマボコには若干の甘味がありますが、どうもその部分でチグハグになるのです。
よって、ある程度は甘味とうま味があるお酒のほうが合わせやすいですね。
普通酒や本醸造酒など、オーソドックスな日常酒も相性がよさそうなイメージがあります。しかし、決して悪くはないものの、ボディの軽さゆえか、もう一つ同調しきれない印象です。このタイプであれば、比較的味の濃いものを選ぶと良いでしょう。
また、この手の古くからある和のつまみにありがちなんですが、酸味との相性が良くないです。合わせると酸が悪目立ちしてしまい、同調性が低くなります。その意味で、最近人気のあるジューシーで酸が効いたタイプはややハードルが高いです。
もし、こういった酸味のあるタイプを合わせたい場合は、醤油にレモンを同量足して、洋風の方向にアレンジするとバランスがとれます。また、このレモン醤油にすることでフルーティ系のお酒との相性もより高まります。
わかむすめ 牡丹 純米吟醸 無濾過生原酒
小さな蔵ながら常に上品でハイクオリティなお酒を多くリリースされています。
この蔵の酒の特徴は、華やかな香りとフルーティな味わい。こちらの牡丹はいかにもわかむすめらしさのある一本です。雄町のふくよかな味わいに加え、酸味が控えめなのも奏功して違和感なく板わさにフィットします。
神蔵 七曜 純米大吟醸 無濾過生原酒
こちらも多くのフルーティなお酒を提供する素晴らしい蔵です。ペアリング的にもわかむすめと同様のパターンですね。華やかかつ、深みと奥行きのある味わいで板わさと同調してくれます。レモン醤油でいただくのもおすすめです。
燦然 特別純米 雄町
重厚な味わいのため、あっさりした板わさとは今一つかと思いきや、意外にフィットします。軽すぎるお酒よりは重いほうがむしろ合うようですね。醤油の影響もあるかもしれません。
こちらも酸が弱いため、その点でも板わさの風味を邪魔せず引き立ててくれます。
会津娘 特別本醸造
カマボコに対しては、若干ボディが軽いものの、しみじみとした味わいで板わさに寄り添います。よりふくらみを得られるお燗がおすすめ。温度帯は40℃くらいのぬる燗で。
まとめ
正直、今回はビシっとはまるお酒が少なく、ちょっと苦労しました。
普通にわさび醤油で食べると、上述したように、ほとんどのお酒はそこそこの相性で終わることが多いんですよね。それはそれでいいんですけど。
ただ、レモン醤油にすれば、フルーティ系・ジューシー系とのペアリングの確度は明らかに高くなります。昨今は酸のあるお酒が増えてきてますから、むしろレモン醤油のほうが満足感を得られやすいかもしれません。一度お試しください。