甘酸っぱくてほんのりピリ辛の、「エビチリ」ことエビのチリソース煮。中華料理の人気メニューですね。
本場では干焼蝦仁(カンシャオシャーレン)といって、かなり辛い味付けなんですが、日本で一般的に食べられるものは、かつて日本人向け四川料理の祖・陳建民氏がアレンジしたものが元になっています。
ん?日本人向け?だったら日本酒にだって合うに違いない!というわけで、若干の論理の飛躍を抱えつつ、いつものごとく探ってまいります。
エビチリにはどんなお酒が合うのか?
6~7割くらいの精度なら大体合う
甘酸っぱくてうま味のある餡のおかげか、ことのほか日本酒の風味とは相性がいいんですよね。人気のモダンなタイプでもいいし、トラディショナルな純米酒でも美味しいです。
そう、厳密にペアリングを追求せず、ほどほどで手を打つのであれば、深く考えずとも大抵の日本酒と合わせられるのです。
とはいえ、ここで終わったらギャラ泥棒なのでもう少し深掘りしていきましょう。
ポイント①甘みの強めなものを選ぶ
今回の最大のポイントです。レシピによって多少の差はありますが、エビチリにはケチャップと砂糖の甘さがそこそこあります。そこにフォーカスして、やや甘みが強めのお酒を選ぶと合わせやすくなります。
ただし、濃すぎるお酒は当然エビチリが負けてしまうので、ほどほどのもので。
逆に辛口と謳われるような甘味が弱くドライなタイプだと、エビチリとは親和性が低くなりチグハグな印象になります。
香りは控えめな方が無難に合わせやすいですが、フルーティなものであってもケチャップのトマト風味と重なるので、それはそれで悪くはないです。
ポイント②酸味のあるジューシー系も面白い
ケチャップを多めに使った甘酸っぱい味わいの餡であれば、酸味のあるジューシーなタイプでも面白いペアリングが期待できます。
基本的な考え方としては酢豚と同じで、甘酢っぱい餡にお酒を同調させる方向です。
ジューシーかつフレッシュで元気なお酒の場合は、お燗で落ち着かせてあげるというのも一つの手です。
ポイント③熟成も悪くない
隠し味的に紹興酒を加えるレシピもありますが、あの独特の香りはエビチリとよく馴染みます。ということは、紹興酒と似たフレーバーのある熟成酒とも合うわけですよ。中華だから当然ですが。
ここでもやはり甘味は重要になってきます。熟成系であってもドライなタイプだと違和感が強くなってしまうのでご注意を。
エビチリに合う日本酒4選
Tsuchida 野生の12 研究醸造data28
土田酒造の研究醸造シリーズの一つで、野生酵母(蔵付き酵母)を使用して低アルコールのお酒を醸すというコンセプトの商品です。
開栓当初は野生というネーミングの通りワイルドさも感じましたが、時間が経つと落ち着いて穏やかなニュアンスになります。
低アルながらしっかりと甘味とうま味が詰まっており、エビチリの餡とバッチリ同調してくれます。
浅間嶽 純米吟醸 山恵錦
全体的にどっしりした印象の浅間嶽ですが、これは火入れの純吟ということもあってややライトです。とはいえ、硬水由来のしっかりした味わいは間違いなく蔵のアイデンティティを体現しています。
酸は抑えめで、バランスのいい甘味がエビチリと好相性。
大倉 Limone Mature 無濾過生原酒
まさしくレモンを想起させる酸味を持つ個性的なお酒。
濃淡で言えば、お酒のほうがはるかに強いんですが、エビチリの餡との方向性が合致しているため、それほど乖離しません。餡の味わいに甘味と酸味をブーストするイメージでしょうか。独特な面白さがあります。
金鼓 水酛仕込み 濁酒 生
もう一発、大倉です。こちらはにごり酒よりもさらにプリミティブなどぶろくに近いお酒。お客様にはよく「もはや甘酸っぱいお粥です」と説明してます(笑)。
甘酸っぱさが餡に合うのはもちろんのこと、どろっとしたテクスチャーも餡のとろみとしっかりシンクロします。やはりテクスチャーは無視できない要素ですね。
まとめ
ポイントをまとめると「甘味多め」「酸味もアリ」「熟成香」ということになります。
熟成香はともかく、甘味と酸味がしっかりしたジューシーなタイプであれば、最近は供給が多いので入手しやすいかと思います。
中華の一般的なイメージに引っ張られるとガツっとボディの太いお酒を選んでしまいがちですが、エビチリの場合は平均的なもので大丈夫です。
そういえば、エビ「チリ」と言いつつも辛味には全く触れていませんでしたね。
基本、辛い料理と日本酒との相性は良くありません。ただ、日本で一般的なエビチリ程度であればほとんど気にすることはないでしょう。
というわけで、恐れずどんどん日本酒と合わせていきましょう!
【シリーズ:「中華料理」に合う日本酒はコレ!】