酒スト角打ちつまみシリーズ第三弾は、秩父の名産しゃくし菜漬けです。
杓子のような形をした葉野菜「しゃくし菜」を乳酸発酵させた人気の一品。ほどよい酸味と控えめな塩気が特徴で、日本酒との相性も文句なし。
基本的にはどんなお酒にもよく合いますが、特に相性がいいタイプ、逆に今ひとつに感じられるタイプもあります。以下でその理由とおすすめのお酒を詳しくご紹介します。
しゃくし菜漬けにはどんなお酒が合うのか?
ポイント①酸味の同調
しゃくし菜漬けの特徴は、乳酸発酵由来の爽やかな酸味。この酸味を生かすには、同じく酸を感じるタイプの日本酒が最適です。
特に、最近人気のジューシーで酸が効いたタイプ(クエン酸、リンゴ酸などを主体とするシャープな酸味を持つタイプ)は、しゃくし菜漬けの酸と手を取り合うような感覚でよく馴染みます。まるでレモンをひと搾りしたような爽快感が加わり、口の中が心地よく整います。
一方、乳酸やコハク酸などまろやか系の酸味が主体のお酒も悪くありませんが、このタイプのお酒はボリュームが重たい傾向にあり、しゃくし菜漬けの軽やかさを消してしまうこともあります。
ポイント②ボリュームは軽いほうが◎
というわけで、そのボリュームについて。
しゃくし菜漬け自体は、非常にあっさりした味わいです。そのため、合わせる日本酒も同じくライトボディのほうが好ましいですね。
重厚なタイプのお酒を合わせると、漬物の存在感がかすんでしまい、バランスが取りづらくなります。
もし重めのお酒しか手元にない場合は、口に含む量を少し減らすだけでも調和しやすくなります。ちょっとした工夫で、印象は大きく変わりますよ。
ポイント③合わないタイプ
漬物のひなびた古風なイメージから、同じく昔ながらの日常的な普通酒が合うのでは?と踏んだのですが、これに関してはむしろイマイチでした。
多くの普通酒は酸が弱く、しゃくし菜漬けの酸味とリンクしづらいため、味が噛み合わずにすれ違ってしまう印象があります。加えて、総じてボディが軽いため、全体としてやや物足りなさを感じてしまうことも。
決して悪い組み合わせではないので、そこは好みもありますが、しっかり酸味のあるお酒のほうがより一体感が生まれます。

検証中の様子
しゃくし菜漬けに合う日本酒4選
SUN-ROKU 火入
美寿々酒造の新ブランド、酸味の効いたジューシー系低アル原酒です。
アルコール度数は13度ですが、加水していない原酒ということもあって薄さや物足りなさはありません。
しゃくし菜漬けと合わせると、酸味同士が軽やかに響き合った後、米の旨味が前面に出てきます。
天美 純米吟醸 火当て
新生天美もすっかり安定しました。特別に酸味が強いわけではないですが、ほどよくフルーティで甘すぎず、非常にバランスの良いモダンなお酒。
しゃくし菜漬けと何の違和感もなく融合して喉の奥に流れていきます。
このくらいの良い意味で中庸なバランスのお酒が一番合わせやすいかもしれません。
天下錦 特別純米 生原酒
こちらも天美に近いポジションで、モダンでありつつバランスの良いお酒。
中盤で米の旨味を感じるので、白飯に漬物を乗せて食べているようなニュアンスも楽しめるペアリングです。
舞美人 純米酒 MYVY (酒粕再発酵)
舞美人の酒粕を再発酵させたという変わり種。
甘味と酸味が非常に強く、パンチがあるのでさすがに合わないかと思いきや、酸味が呼応しあって意外にも楽しい組み合わせ。
お酒の存在感が勝ってしまうところはあるんですが、そこは口に含む量で調整しましょう。
まとめ
ぬか漬けの時にも思いましたが、漬物と日本酒はもともと乳酸発酵つながりなので、相性は抜群に良いんです。
そんな前提があるから、今回も「どの酒でも行けるでしょ」と高をくくっていました。ところが蓋を開けてみると意外にミスマッチもある。原因は、しゃくし菜漬けが事前イメージよりもずっと軽やかで爽やかだったためでしょう。
そんなしゃくし菜漬けに対して、より精度高く合わせるなら、やはり現代的で酸味のあるジューシーなタイプをおすすめします。
【シリーズ:「SAKE Streetの角打ちつまみ」に合う日本酒はコレ!】
- 第1回:「うずらの卵のピクルス」
- 第2回:「きなこ豆」
- 第3回:「しゃくし菜漬け」