細切りのキュウリと鶏むね肉を濃厚なタレがまとめあげる、夏にぴったりの中華料理と言えば、そう!棒棒鶏(バンバンジー)ですね!
名前の由来は、肉質の固い鶏を棒でバンバン叩いて調理したことなんだそうです。
元は四川料理なので、本場のタレは豆板醤とラー油で辛味が足されます。ただ、日本では辛くないごまダレが主流かと思いますので、今回はそちらで検証を行いました。
棒棒鶏にはどんなお酒が合うのか?
ポイント①タレの味に合わせる
タレに関しては、レシピによってかなり差が出てしまうので難しい部分ではありますが、今回は日本人の多くが馴染んでいるであろう味付けということで、丸美屋の棒棒鶏の素を採用しました。こちらは辛味・酸味はほとんどなく、甘味と練りごまのコクが味わいの中心になっています。
ここに同調させることを考えると、選ぶべきお酒もタレ同様に酸味が少なく甘めでコクの強いものということになります。
燗上がりする落ち着いた濃醇な純米酒や、どっしりした無濾過生原酒は合わせやすいですね。
ポイント②キュウリに合わせる
次にもう一つのメイン食材、キュウリに着目しましょう。キュウリには独特の青臭さがあり、瓜の一種なのでメロンなどとも共通する香りを持っています。
一方でフルーティな日本酒にも、メロンやバナナに近い香りをもつ酢酸イソアミルという成分が多かれ少なかれ含まれています。
この成分が多いタイプのフルーティ系日本酒を選ぶと、キュウリとスムーズに繋がります。よくわからない場合は店員さんに「メロンとかバナナっぽい香りが強いのありますか?」と聞いてみましょう。日本酒専門店であればちゃんと教えてもらえると思います(多分)。
ポイント③お酒の酸味が気になったら
ごまダレに酸味がそこそこあるお酒を合わせると、同調性がやや落ちます。その場合は、レモンや酢を少量かけるか、具材としてトマトを加えるとお酒と料理を媒介してくれます。
また、タレそのものを、ごまダレではなく酸味のあるものに変えれば、酸味のあるお酒でも問題なく合わせられます。
棒棒鶏に合う日本酒5選
燦然 特別純米 雄町
すでに頻繁に登場している殿堂入り銘柄なので、なるべく他のお酒を紹介したかったのですが、ごまダレと合わせることを考えると、どうしてもファーストチョイスになっちゃうんですよ。
柔らかな甘み、控えめな酸味、豊かな旨み。わかりやすくごまダレの味の要素と重なります。ぬる燗にすると甘味とうま味が増幅するので、よりタレとの一体感を得られます。
Re:vive 無涯
一口飲んで確信しました。これは間違いなく合う!と。燦然とはボディ感など含めて全く違うタイプなのですが、甘味、酸味、うま味のバランスはよく似ていて、ごまダレとちょうど合致するんですよね。フルーティとまではいきませんが、ややジューシーなところもあるので、棒棒鶏にレモンをかけて酸味を補うと重なり方がエグいことになります。
流輝 純米吟醸 桃色 無ろ過生
心地良い発泡感と軽やかな甘酸っぱさ。まさに見た目通りのキュートな一本。アルコール度数は9度なので非常に飲み心地も軽いんですが、物足りなさは一切ありません。
ほどほどにフルーティな香りがキュウリの香りと寄り添います。甘味のあるお酒なので、ごまダレの甘味との相性も◎。さらにレモンなどで酸味を足してもペアリングのニュアンスが変わって楽しめます。
辨天娘 純米 玉栄 生原酒 槽搾り 中垂れ
アルコール度数19〜20度のパワフルな生原酒。甘味のある丸美屋のタレも充分いい感じですが、豆板醤やニンニク・ショウガなどが入ったパンチの強いタレを使うとさらによく合います。
辨天娘は生酒であってもお燗で輝きが増します。このお酒は50℃くらいでバラつきが収束してナッティな風味が出てきます。この状態で初めてペアリングが完成するのです。
シン・ツチダ
土田酒造さんは、実験的なラインも楽しいんですが、やはりこの酒が基本でありフラッグシップと言えるでしょう。どっしりしたうま味に加えて、落ち着いた熟成香もペアリングを面白い方向に持っていってくれます。
実は、熟成酒や古酒の香りとごまダレは好相性。単純に中華料理と紹興酒の関係を考えてもらえればイメージしやすいと思います。こちらも、もちろん燗推奨です。冷菜とお燗のコントラストもなかなか楽しいですよ。
まとめ
最大のポイントは、どっしり濃いめで甘味・酸味・うま味のバランスがごまダレに似たお酒を探すこと。また、キュウリとのつながりを考えれば、フルーティなタイプでも悪くないです。
熟成酒は香りの部分ではマッチするのですが、甘みが弱い完全発酵系だと少し難しいかも。なるべく甘みとうま味がしっかりあるものを選ぶと良いです。
ちなみに、切って混ぜるだけでしょ?と見くびって「今日は簡単に棒棒鶏でいいよ」と言うと炎上するので気を付けましょう。
【シリーズ:「中華料理」に合う日本酒はコレ!】