蕎麦屋で飲む酒と言えば、やっぱり日本酒ですよね。江戸の昔から日本酒と蕎麦は合うものとして一般的には認識されています。しかし本当にそうでしょうか?
よくよく考えると蕎麦前、つまり蕎麦が出てくるまでの間に食べるつまみと日本酒の相性が良いのは間違いないですが、蕎麦そのものと日本酒ってどうなんでしょう。実際、蕎麦をすすりながらお酒を楽しんでいる人って少数派な気がします。
そこに気が付いてしまった以上は合うお酒を探すしかない!天邪鬼!
だって、せっかくなら蕎麦前だけじゃなく、蕎麦でもペアリングを楽しみたいじゃないですか。
なお、今回は冷たいざる蕎麦での検証です。かけそばは別の機会に。
蕎麦にはどんなお酒が合うのか?
蕎麦と日本酒が合わせづらい理由
つゆをつけた蕎麦は、どうあっても日本酒に比べて味わいが軽いですよね。お酒がいくらライトな淡麗タイプであったとしても。
そうなると、日本酒ペアリングの基本である「同調」を望むことは難しくなってきます。
こういった場合、通常は風味や香り、いわゆるフレーバーを合わせていくしかないのですが、香り高い高級な蕎麦ならともかく家庭で食べるレベルの蕎麦(モノによっては小麦のほうが多い)では、そこまでの香りもありません。
これが、蕎麦と日本酒を合わせるのが難しい理由です。
もちろん、ペアリングだとかマリアージュだとかをあまり気にしなければ、普通に楽しむことはできますけどね。
ペアリングのイメージ
ではどうしたらいいのか。蕎麦の場合は、軽くうま味を足すイメージでお酒を合わせることで比較的良いペアリングができました。あくまで軽くです。
ちょっとわかりづらいので具体的に説明しましょう。まず蕎麦を食べます。その後、口内に蕎麦とつゆの味がある程度残っている段階で、お酒を少し含みます。
すると、最初はお酒の味が強いので蕎麦の味わいを覆ってしまうんですが、すぐに引いてうま味が残ります。このお酒のうま味と、わずかに残った蕎麦の味わいが重なることでペアリングが成立するのです。
キレのいいタイプを選ぶ
ようやく本題。蕎麦にはどんなお酒が合うのか。20種類ほどの試飲を重ねて見えてきた、合うお酒の傾向。それは「キレの良さ」でした。
蕎麦の味わいが総じて日本酒よりも軽いことは先に述べた通りですが、だからこそ余韻の長いお酒だとさらに蕎麦の繊細な味わいを壊してしまうのです。
ですので、選ぶお酒はキレが良く、蕎麦の風味を邪魔しない穏やかなタイプがおすすめです。
そのあたりからも淡麗辛口タイプが比較的合わせやすいことは読み取れますが、甘味がそれなりにあるものでも大丈夫です。そばつゆの甘味と同期してくれます。
ただし、酸味は同調を阻害します。なるべく酸を感じないもので合わせましょう。
蕎麦に合う日本酒3選
大那 超辛口 純米酒 火入れ
ここのところ採用されることが増えてきているお酒ですが、ドライでうま味がしっかりありつつ酸は控えめなので、和食とは相性がいいんですよね。
蕎麦というよりは、そばつゆとの相性が抜群。単体で飲むよりお酒が甘く感じるのが不思議でした。
流輝 純米 槽搾り DRY 一回火入
比較的華やかな印象の強い流輝の中でも、やや異端の食中系。これも大那の超辛口とペアリングの方向性は同じです。
蕎麦に比べると若干お酒の味わいが濃いのですが、後追いでうま味同士が重なってくれます。
Re:vive 空我
なんと3回連続での登壇。Re:vive好きすぎ使いすぎ問題が勃発してますが、優しい味わいで癖もないので非常に食中酒としても優秀なのです。
玄米のややナッティーなニュアンスが蕎麦の香りと好相性。優しい甘味もしっかりそばつゆとリンクします。
まとめ
キレが良く、淡麗かつうま味はしっかりあるタイプ、酸は邪魔になるのでないほうがベター。ポイントとしてはこのあたりになるでしょうか。一昔前に流行した新潟淡麗辛口はハマりやすいと思います(サケストでは扱ってないですが……)。
なお、ライトな普通酒が合う予想を立てていたんですが、実際合わせてみると余韻の長さや、醸造アルコールの薄いフィルターがかかったようなニュアンスが蕎麦とはイマイチでした。
ちなみにフルーティ系と合わせたい場合はわさびを橋渡しにすれば案外合わせられます。
まあでも、蕎麦前と蕎麦、両方で楽しみたいなら、結局は淡麗辛口系が無難なチョイスではありますね。
そういえば、古式ゆかしい蕎麦屋に行くと、八海山や久保田など、食中系の淡麗辛口が置いてあることが多いですよね。あれは単に有名銘柄だから選ばれているのでしょうか?それも確かにあるとは思いますが、今思えばちゃんと理にかなったチョイスなのかもしれません。