今回のテーマは日本人の食卓に浸透しすぎて、もはや中華料理であることすら忘れられていそうなシュウマイです。
しかし、日本でこれだけ頻繁に食されているのに日本酒と合わせる人があまりいないのはなぜだ。やはり中華料理だからでしょうか。
いやいや、シュウマイは日本酒とだってバッチリ合います。これからそれを実証して参ります。
シュウマイにはどんなお酒が合うのか?
ポイント①蒸れた生酒が合う
生酒は冷蔵しなかったり、時間が経つとムレ香という独特の香りが出てきます。別名「生老ね香」ですね。一般的にはオフフレーバーであり、これが出ると劣化した酒とみなされます。
ただ、好きな人は好きなんですよね。慣れるとたまらないものになってきます。
ではなぜ、このムレ香がシュウマイに合うのか。
シュウマイにはタマネギが入りますよね。このタマネギの持つ硫化アリルやアリシンという成分がムレ香と相性がいいんです。
実はこれ、以前の餃子の回で発見したセオリーですが、ここでも生きてきました。
ポイント②米のうま味強めのお酒で合わせる
シュウマイってイメージよりも脂が多めでジューシーなんです。ここでもう一つのセオリー「油っぽい料理には穀物感の強い日本酒」が発動。こちらは春巻きの回で発見したものです。
脂っぽい中華には米のうま味が強くて穀物感のあるクラシカルなお酒が合います。中でもある程度甘味があって酸味の少ないものがベターです。
ポイント③酸味が気になったらタレを工夫しよう
一般的には辛子醤油で食べることが多いと思いますが、酸味がそれなりにあるお酒だと、やや浮いた感じのペアリングになってしまいます。
そんなときは酢醤油や酢胡椒、黒酢でいただくのもアリ。酢とお酒の酸味同士が手を繋いでぐっと相性が近づきますよ。
シュウマイに合う日本酒4
不老泉 山廃純米吟醸 総の舞 無濾過生原酒
今回の優勝銘柄。1年以上の生熟成を経てのリリース。当然、独特のムレ香はあるんですが、それこそがこの酒のいいところなので、最大限に生かさないともったいない!
温度帯は断然お燗です。冷酒だと五味それぞれにややバラつきがあるんですが、温めることで一気にまとまります。
ちなみに、ニンニクたっぷりの臭~い餃子とも確実に合います。
辨天娘 純米 玉栄 生原酒 槽搾り 中垂れ
こちらもほどよい生熟感がアリシンの風味に同調。さらに豊かな米のうま味のおかげで肉汁のコクをがっちり掴んで離しません。
日本酒度+8でドライかと思いきや、うま味が強いおかげでむしろマイルドな印象すらあります。
生酒ですが上と同じくお燗推奨です。
Tsuchida 菩提酛
室町時代の製法である菩提酛で醸した一本。土田らしい濃厚で個性的な味わいのお酒です。
甘味が強いので、脂っこい豚肉と好相性。酸味が抑えめなのもシュウマイとのペアリング精度を高めてくれます。まさにうま味爆弾ですね。
会津娘 純米酒
優しい味わいとほどよいボディ感の絶妙なバランス。いつも言うんですが、会津娘って品が良いのに、小洒落た感じじゃなくて、人懐っこい素朴さが根底にあるんですよ。この素朴さを演出してるのが穀物感なんですね。
ビシバシ同調してくれるわけではないのです。よくわかんないけどなんか合う。そんな肩の力の抜けたペアリングで、ゆるゆる楽しむのに最適です。
まとめ
今回のキーワードは、穀物感とムレ香でした。まさにここまで探ってきた中華料理ペアリングのさまざまなポイントが生きた回と言えます。
あらためておさらいしますと、ニンニク、ニラ、ネギ、タマネギなどの硫黄臭(アリシン・硫化アリル)を持つ食材には若干ムレ香のあるお酒を。そして、脂っこい料理には米のうま味が強くて穀物感のあるお酒を。
これらを意識するだけで中華料理も簡単に攻略できます。騙されたと思って、一度ぜひお試しを。
【シリーズ:「中華料理」に合う日本酒はコレ!】