酒粕、好きですか? 日本酒が好きだという人でも、酒粕はあまり食べないという人は少なくないのではないでしょうか。
筆者は酒どころの神戸で育ったので、小学校の給食に粕汁がよく出てきました。いま食べるとしみじみ美味しいですが、そのころは大人っぽい味すぎてなかなか好きになれなかったので、苦手感覚を持ったまま大人になる人がいるのはなんとなく想像につきます。
でも、酒粕の味ってあのころ食べた”あの味”だけなんでしょうか? 日本酒にはフルーティなものから旨味たっぷりなもの、酸味のあるものやキレのよいものまで多様な種類がありますよね。ということは、その酒粕にも多様な味わいがあるのではないでしょうか。
今回は、日本酒の多様化にあわせて実は多様化している酒粕の奥深さに迫ります!
形状、造り方、熟成年数でこんなに違う!
これまで200種類以上の酒粕を食べ比べたことがある酒粕研究家・さけかす子さんによると、もろみの搾り方によって、酒粕は大きく以下の4種類に分かれるのだそう。
タイプ | 主な搾り方 | 特徴 | おすすめの使用方法 |
板粕 | 圧搾機 | 濃厚 | 濃厚な料理に入れる、ヴィーガンチーズとして食べる |
バラ粕 | 槽搾り | 甘み、香りが強い | そのまま食べる、甘酒にする |
練り粕(踏み込み粕) | 搾った後にタンクで熟成させる | 熟成感がある | 料理やお菓子の風味づけに入れる |
ゆる粕 | 袋搾り、はねぎ搾り | フルーティ、アルコール分が残っている | 加熱してドレッシングにする |
SAKE Street Media「知っているようで知らない酒粕の世界:味わいの違いから使い方、保存方法まで酒粕マニアが解説!」より
搾り方だけで特徴も使い方もこんなに違うんですね!さらにフルーティな大吟醸の酒粕と旨口の純米酒の酒粕など、日本酒の製造方法によっても味わいの多様性は広がります。
近年はフルーツやハーブを一緒に発酵させる「クラフトサケ」も出てきていますが、その酒粕には副原料も残っているのでますますバラエティ豊か。よく、酒粕は粕汁や甘酒などにアレンジされますが、これだけ多種多様だと調理の幅も広がりそうです!
そして実は、酒粕は日本酒と同じく熟成させることも可能。熟成期間が長くなるほど、味噌のような色味と濃厚な味わいに変化していきます。熟成させた酒粕は、煮込み料理などに入れると風味がアップするそうですよ!

「KAS FES」に15蔵26種の酒粕が大集合!
そんな多様な酒粕が一度に食べ比べできるイベントが、3月22日(土)に開催される「KAS FES〜酒粕フェス〜」。SAKE Streetでお取り扱いのある酒蔵15軒から集まった酒粕の数は、なんと26種類(予定)。これらの酒粕が食べ比べ放題なうえ、同じもろみから分かれた日本酒と飲み比べまでできるというイベントです。
講師として共催いただく酒粕研究家・酒かす子さんの「若手蔵が集う試飲会のような、明るくたくさんの人が集う酒粕イベントを開催したい」という想いからはじまったこのイベント。イベントの企画を立ち上げた当時は、ここまでの規模になるとは思っておらず、運営メンバーも戸惑っております……!
酒かす子さんからも、イベントに向けてメッセージをお寄せいただきました。

これまでに酒粕を約200種類ほど食べてきて、酒粕には実に多彩な味わいがあると感じています。そのままで美味しいものもあれば、料理に使うと驚くほど美味しくなるものもあります。
酒粕が苦手……という方も少なくありませんが、それはまだ自分好みの酒粕に出会えていないだけかもしれません。そこで、酒蔵と深いつながりを持つ SAKE Street さんとともに、「KAS FES」を開催することにしました。今回の KAS FES では、個性豊かな酒粕が集まり、食べ比べを楽しむことができます。きっと、自分にぴったりの酒粕が見つかるはずです!このイベントを通じて、より多くの方に酒粕の魅力を知っていただき、日々の生活に取り入れてくださる方が増えることを願っています。
会場では酒粕をそのまま試食する形になりますが、気に入ったものはイベントの帰りに購入していただくことができますので(一部の商品を除く)、おすすめの調理方法についてぜひアドバイスを受けてみてください!
ここからは、集まった酒粕をご紹介していきます。クラフトサケの平六醸造、LIBROMからは発芽玄米、ブドウ、ゆず、ジンジャーといった副原料を使用した酒粕が。さらに、稲とアガベが立ち上げたばかりの早苗饗蒸留所からは、ジンの原酒として蒸留された後の酒粕を3種類提供します。
もちろん日本酒も負けてはいません! 松屋酒造は赤色酵母を使った「流輝 純米吟醸 桃色」の酒粕、白杉酒造は黒麹を使った「ブラックスワン」の酒粕、美川酒造場は酒粕を再発酵させて造る「舞美人 純米酒 MYVY」の酒粕など、変わり種が続々。土田酒造の「土田生酛汚染号」は、生酛造りの過程で乳酸菌が発生し過ぎてしまった酒粕だそうですが……いったいどんな味がするんでしょうか?

サンプルとして届いた酒粕の一部。色がすごい!
そのほか、雫取りの大吟醸の酒粕や、熟成した酒粕など、おいしく楽しい酒粕が勢ぞろいします。 全15蔵、26酒粕のリストは以下のとおりです。
酒蔵 | 商品名 |
平六醸造 | layer ブドウ |
Re:vive 空我 | |
早苗饗蒸留所 | 交酒 花風 |
能登復興支援酒 ブルーベリー | |
稲とウメ | |
村井釀造(ゲスト酒蔵) | 真上 特別純米 |
真上 純米吟醸 | |
土田酒造(ゲスト酒蔵) | 土田生酛汚染号 |
Tsuchida12 701 | |
松屋酒造 | 流輝 純米吟醸 桃色 |
美川酒造場 | 舞美人 純米酒 MYVY |
舞美人 山廃純米 sanQ | |
丸井合名会社 | 楽の世 雄町 |
楽の世 山廃純米 | |
上原酒造 | 不老泉 山廃純米吟醸 雄町 |
松井酒造(ゲスト酒蔵) | 神蔵 露花 スパークリング |
五紋神蔵 純米大吟醸 | |
白杉酒造 | ブラックスワン |
菊池酒造 | 燦然 純米大吟醸 雄町50 |
太田酒造場 | 辨天娘 青ラベル R5 |
辨天娘 純米山田錦 R2 | |
八木酒造部 | 山丹正宗 雫取り 純米大吟醸 |
新谷酒造 | わかむすめ 純米吟醸 薄花桜 |
わかむすめ 純米大吟醸 燕子花 | |
LIBROM | LIBROM ゆず |
LIBROM ジンジャー |
酒蔵からもゲスト3名が会場に駆けつけます!
酒蔵からは、豪華なゲスト3名が会場にいらっしゃいます!酒粕に対する考え方について、事前にコメントをいただいたのでご紹介します。会場でもぜひ、酒粕やお酒の造り方、使い方について尋ねてみてください!
「真上」茨城県・村井醸造 製造責任者・臼井卓二さん

現在は郷土料理の「しもつかれ」や、奈良漬け用などで酒粕を販売しています。残ってしまうと処分せざるを得ないこともあり、今よりももっと良い酒粕の使用方法がないかを常に考えています。筑波大学では酒粕で培養した代替肉が研究されているので、こういった技術革新にも注目しています!
「土田」群馬県・土田酒造 杜氏・星野元希さん

酒造りには必ず酒粕が生まれますが、活かしきれず手放さざるを得ないこともあります。そんな酒粕の魅力をもっと楽しみたい!今回は、お酒も粕も味わえる機会。皆さんと一緒に、その奥深さを再発見できるのを楽しみにしています!
「神蔵」京都府・松井酒造 代表・松井治右衛門さん

酒粕の利用法に関する様々な取組みは今最もホットな分野といえます。今回は普段出荷しない酒粕もお持ちしますので、ぜひ味比べをしてみてください。美味しい日本酒は酒粕も美味しいのです。皆様にお会いできることを楽しみにしています!
なぜ酒ストが酒粕イベントを開催するのか?

SAKE Streetが運営するWEBメディア「SAKE Street Media」では、業界の課題のひとつとして酒粕の廃棄問題について報じる中で、消費者の酒粕への抵抗をなくすこと・酒粕の身近な使い方を伝えることが重要だと感じるようになりました。
酒粕の再利用状況を探る - 廃棄率/再利用率の統計や取り組み事例など、最新情報レポート
ここから店舗とメディアが共同し、酒蔵さんから酒粕を買い取り(一部の酒粕は送料のみで提供していただいています)、酒粕の美味しさや使い方を伝えるイベントを不定期で開催しています。目標は、日本酒好きが酒粕を、酒粕好きが日本酒を好きになり、それぞれの商品を日常的に買うような状況を作ることです。
今回のKAS FESは、そんな想いから生まれたイベント。今まで食べたこともないような酒粕に出会い、そのおもしろさに気づき、酒粕を買うきっかけにしてほしい。今回のイベントをきっかけに、将来的に飲食店なども巻き込んで、さらに多くの人々を動員するイベントに成長させていきたいと考えています。
前売り券は完売! レポートをお楽しみに!
KAS FESの前売り券は、予想以上の好評につき、追加分ともに完売しました。
当日券の販売はございませんので、前売り券をお持ちでない方が会場にお越しいただくことはご遠慮ください。酒粕の販売はイベント後もおこなうかもしれませんので、引き続き公式SNSからのお知らせをチェックしていただけるとうれしいです!
当日の様子はこちらの店舗ブログでもレポート予定。酒粕ブームの夜明けとなるイベントの瞬間をぜひ楽しみにお待ちください!