酒スト角打ちつまみシリーズ第二弾は、甘くてほっくり、きなこ豆です!
酒ストが採用しているのは、秩父長瀞の万寿庵さんのもので、甘く煮込んだ空豆にきなこをまぶした逸品です。しかし、そもそもの話、お菓子と日本酒って合うのでしょうか。結論から言うと、合います。いや、合わせられます。しかし、難易度はそれなりに高いです。
では、どんなお酒を合わせればお菓子というハードルを超えられるのか、考えていきます。
きなこ豆にはどんなお酒が合うのか?
ポイント①甘味の同調
日本酒ペアリングにおいて甘味は鬼門です。フード側の甘味によって、日本酒の甘味が減退して感じられるため、バランスが崩れてしまいます。その結果、お酒の酸味が悪目立ちしたり、薄っぺらい味に感じられてしまうことが多いのです。
ただ、フードよりもお酒のほうがより甘ければ、その問題は起こりません。従って、貴醸酒など甘味の強いお酒がファーストチョイスになります。
この際、酸味は少なめのほうがより同調性は高まります。しかし、甘味が充分あれば、あえて酸味のあるジューシーなお酒を選ぶことで甘酸っぱい味わいのペアリングを狙うのも面白いかもしれません。目指す方向としてはフルーツ大福のようなイメージですね。
ポイント②甘味の補完
我らがぽん店長は、きなこ豆と燗酒の組み合わせを推しています。
燗に向くタイプといえば、香りは控えめでうま味が強く、どっしりしたボディのお酒が定番になります。
でもこれって、甘味はあまりないんですが大丈夫でしょうか?
はい、大丈夫です。この場合は同調ではなく、うま味中心のお酒に対して、きなこ豆の甘味を補完する方向になります。五味を主観で数値化してチャートにしてみるとこんな感じ。

数値化してみた場合に、それぞれ突出した部分が同等である必要があります。今回で言えばお酒のうま味とフードの甘味ですね。それによって、ペアリング時のバランスが取れるのです。
また、お燗に向くお酒は濃醇辛口であることも多いです。つまり甘さは控えめながら、うま味がしっかりあるタイプ。
この手のお酒は、甘味が減退したところであまりバランスは崩れません。なぜなら、最初から甘味に頼った味わいの設計をしていないから。
そんなわけで、補完の方向性で選ぶべきは、甘味控えめ、うま味強めの濃醇辛口ということになりますね。山陰地方に比較的多いタイプです。
ポイント③熟成酒のお燗
ポイント②のタイプは熟成に向くお酒も多いですが、古酒・熟成酒独特の焦げたような風味や軽い苦みも、きなこ豆とは好相性。
あんことコーヒーって合わせたことありますか?要素としては、それに近いところがあります。
熟成酒は温度帯が低いと、色んな味の要素がガチャガチャしてまとまらないので、基本的にはお燗がおすすめです。きなこ豆の甘味とより融合しやすくなります。

検証中の様子
きなこ豆に合う日本酒5選
辨天娘 純米酒 生酛 強力
奇をてらわないストレートなペアリングとしては、これが最強。もちろん熱燗(50℃)以上で。
もともと甘さで勝負しない完全発酵の造りに加えて、重ためのボディと熟成感が素晴らしいハーモニーを奏でます。
きなこ豆と合わせることで甘味が補完されて、うま味とのバランスが整います。
会津娘 長期熟成酒 本醸造 花佐久良 1988
辨天娘の熟成酒と似た方向性ですが、40年近い歳月によるしっかりした古酒感を味わえます。
古酒を古酒たらしめているソトロン香(カラメルやドライフルーツ、蜂蜜の香りにたとえられます)が強く、これが非常に甘味と相性が良いのです。
HIRAN Infinity ∞
今や押しも押されぬ人気銘柄となった飛鸞の貴醸酒。しっかり甘いがベタつくことはなく、爽やかさすら感じます。
目には目を、甘味には甘味を。というわけで、ばっちり同調。手堅いペアリングです。
ちなみに、貴醸酒は他の甘い料理やスイーツとのペアリングでも活躍してくれますよ!
天美 新酒 純米吟醸 にごり生
新生天美はにごりもちゃんと「らしさ」を確立していますね。すなわち、香りは抑えて甘味に頼りすぎない、やや食中向きの設計。
酸味が弱く、うま味がしっかりしているのもこのペアリングにおける評価ポイントです。
ぬる燗くらいで柔らかさとうま味が増して、きなこ豆の甘味がほどけていきます。
神蔵 七曜 純米大吟醸 無濾過生原酒 中汲み
セオリーからは外れる華やかめな純米大吟醸なので、きなこ豆に合うイメージはあまり湧きませんが、第六感がこれを試せと囁くのです。
合わせてみたら、あら素敵!
甘味は確かにある程度マスキングされますが、酸味がそれほど悪目立ちしてきません。意外に見落とされがちですが、うま味もしっかりしており、コシが強い酒質なので、そのあたりが奏効しているのかも。
そういえば、すき焼きにもなぜか合うんですよね。実に不思議なお酒です。
まとめ
もしかしたら、酒ストつまみの中では最もお酒を選ぶかもしれません。
でも、一番のポイントである、甘味もしくはうま味がきなこ豆と同等かそれ以上であることを意識すれば、そう難しくはありません。
また、今回の神蔵 七曜のようにセオリーから外れたペアリングも見つかるかもしれないので、いろいろチャレンジしてみてください!
【シリーズ:「SAKE Streetの角打ちつまみ」に合う日本酒はコレ!】
- 第1回:「うずらの卵のピクルス」
- 第2回:「きなこ豆」