【日本酒の選び方】年末年始にぴったりなお酒を、酒屋さんの店長が提案。正月や忘年会の日本酒を完全網羅

楽の世を抱えたぽん店長

 

こんにちは、日本酒ライターのクリーミー大久保です! 毎年12月に入ると頭を悩ませるのが「年末年始のお酒、何を買おう……」ですよね。お酒を飲む機会の多い年末年始、仕事柄「パーティーに日本酒を持っていく係」になることが多いのですが……いつも頭を抱えます。


ハレの飲み会だからこそ、外したくない。おいしいと思ってほしい。でも、あまりに高級なのは財布が痛い……。


今回、SAKE Streetのぽん店長が、年末年始の日本酒選びをレクチャーしてくれました。お酒選びの参考にしてください!

 

目次

年末年始は、日本酒屋さんの最盛期!

 

SAKE Street店舗の外観

東京・浅草橋にあるSAKE Streetへ。店頭が冬仕様になっていました。


12月は酒屋さんが1年で最も忙しくなる時期。お店は開店時から、飲食店さんや一般の日本酒好きなどでごったがえします。


ぽん店長「今、てんてこまいです(笑)。忘年会シーズンということも大きいですが、一年がんばったごほうびとして美味しいお酒を飲みたい、という人も多いですね。ほら、お正月って寝て起きて食べて、飲んで、じゃないですか(笑)。そういうときに素敵なお酒があるとうれしいんですよね」

 

店長のぽんさん

店長のぽんさん

 

早速、ぽん店長に「年末年始用のお酒の選び方」を教えてもらいます。シーンは次の4つです。


①お正月、親戚の集まりに持っていく

②仕事仲間との忘年会に持っていく

③お酒好き仲間のパーティーに持っていく

④(おまけ)日本酒が苦手な人がいるかも? な時の裏技


①お正月、親戚の集まりに持っていくお酒

まずは年末年始の定番「お正月の親戚の会」です。おめでたいシーンなので、ある程度「ちゃんと」した感じは出したい。かつ、日本酒歴の長いオールドファン(おじいさん)からあまりお酒を飲まない20代(姪っ子)までの幅広い年齢層に喜んでもらえるお酒がいいという、なかなか難しい条件です。


さらに今回は私の個人的なオーダーとして「きっとワインを持ってくる人がいるけど、負けたくない!」ことも伝えました。

 

「一歩己 青白橡」と「澤の花 辛口純米 花ごころ」

 

ぽん店長が選んでくれたのはこの2本です。左の「一歩己(いぶき)」は「箱」入り。さすが、特別感がでます!

 

一歩己 青白橡

 

ぽん店長「お祝いのシーンでは、純米大吟醸のような高級なお酒が喜ばれるものです。箱に入った日本酒だと、お酒に詳しくない人でも『これはいいお酒だな』と注目してくれますよね。


もちろん箱だけでなく、高級なお酒はしっかりと手がかけられていますよ。『一歩己』の味はとにかく上品。香りは青リンゴや桃のようで、口のなかでふわっと溶けていきます。


また、お正月のシーンはおせちなどのご馳走をみんなで食べながら飲むということも多いかと思いますが、『一歩己』は派手すぎず、料理との相性もいいんですよ」

 

澤の花 辛口純米 花ごころ

 

ぽん店長「もう1本の『澤の花』は、宴会の後半をイメージして選びました。先ほどの『一歩己』よりも穏やかで、甘さ控えめ。すーっときれていくタイプです。ゆるゆると飲み続けられるお酒です。


また、先ほど『宴会にワインがあるだろう」と言っていましたよね。きっと色々なお酒を飲まれるのかなと思います。すると、どうしても『飲み疲れ』するものです。そういった時にこそ、『澤の花』のようなお酒が活躍しますよ」


POINT

・ハレの日には、高級感のあるお酒を

・日本酒好きもビギナーも高評価な「上品なお酒」がよい

・宴会を想定するなら「ゆるゆる飲める」お酒もあり


②仕事仲間との忘年会に持っていくお酒

次のシーンは、仕事仲間との忘年会。正直、参加する全員の好みはわかりません。


ぽん店長「わかりました。ここはとにかく『外さない』『間違いのない』お酒にしましょう」


「流輝 純米吟醸 桃色」と「無濾過生天美 純米吟醸 生原」

 

流輝 純米吟醸 桃色 無濾過生

 

まずは左の流輝 純米吟醸 桃色 無濾過生

 

ピンク色……ですね。これは「日本酒」です……よね?


ぽん店長「ええ、『赤色酵母』という酵母を使っているのでピンク色になっているのですが、目立ちますよね。特段日本酒が好きじゃないという人も『ちょっと飲んでみたい』となるかなと思います。味は比較的甘め、だけどベタつくほどじゃありません。また、アルコール度数は10%と、とても軽くて飲みやすいですね※。


実は私の祖母は日本酒をほとんど飲めないのですが、この流輝だけは好きなんですよね。みんながおいしく楽しめるお酒だと思います」


※日本酒のアルコール度数は15度前後が一般的

 

天美 純米吟醸 生原酒

 

次は右の天美 純米吟醸 生原酒。SAKEStreetでよく目にするお酒です。

ぽん店長「はい、うちの中でも人気の高い銘柄です。2020年にできた新しいブランドです。


味の特徴は、マスカットのような風味があって、口あたりは『シュワっと』した感じ。

ブランドの誕生から3年目なのですが、今までずーっと人気で、売り手として『すごいな〜』と驚いています。まさに『今人気の日本酒』な存在。間違いなくおすすめできます」


POINT

・「見た目が面白い!」は重要なポイント

・低アルコールの飲みやすい日本酒を入れる

・今の日本酒シーンを象徴する人気銘柄を


③お酒好きな仲間とのパーティーに持っていくお酒

次は、お酒好き仲間との飲み会です。マニアックな会話が繰り広げられることが予想できますので、そのなかで「おもしろい!」と注目を集めたいところです。

 

Shirakiku vibrant 純米酒 無濾過生原酒

 

ぽん店長「それなら、白杉酒造さんの『Shirakiku』がおすすめです。京都にある酒蔵さんなのですが、お酒用の『酒米』ではなく、ごはんとして食べられる『コシヒカリ』を使っているんです。さらに、麹は一般的に日本酒で使われる『黄麹』ではなく、焼酎で使われる『黒麹』。変わっていますよね」


おもしろい!! 飲んでみたいです!


ぽん店長「そうなるでしょう? お酒好き同士の飲み会は、こういった造りの情報を話しながら飲むのが楽しいんですよね〜。きっと盛り上がると思いますよ」

 

金鼓 水酛仕込み 濁酒 生

 

ぽん店長「もうひとつは『金鼓』の『濁酒』です。写真ではわかりにくいですが、相当濁っています。お酒を飲むというより『お米を食べる』感じです。珍しい商品ですので、飲んだことある人はあまりいないんじゃないですかね」


確かに、お酒好きの飲み会だと「飲んだことない」が最高の褒め言葉になります。


ぽん店長「さらに、室町時代の古い製法『水酛』でつくっており、マニア受けは抜群。味はヨーグルトみたいな乳酸もあって、本当に個性的なお酒です」


POINT

・飲んだことないだろう、という変わったお酒で勝負

・「会話」の種になる、製造やスペックのお酒でもりあがる


④(おまけ)日本酒が苦手な人がいるかも? な時の裏技

 

ぽん店長

 

ぽん店長「最後に、『日本酒が苦手』という人がいるかもしれない時におすすめしたいお酒を紹介しますね」

 

「笑梅飯醸」と「神蔵 蜜號 濃厚ヨーグルト 日本酒仕込み」

 

派手なラベルの2本が登場しました。日本酒じゃないみたい……。


ぽん店長「これは日本酒ではなく、日本酒をつかったリキュールです」

 

笑梅飯醸

 

ぽん店長「さきほど紹介した『Shirakiku』と同じ、白杉酒造さんの梅酒です」


梅酒!


ぽん店長「それも、純米吟醸の日本酒を使った梅酒です。飲みの席にこういったリキュールがあると、楽しめる層が一気に広がりますよね。梅酒は焼酎に漬け込んだアルコール度数が高いものが多いのですが、これは13〜14度と軽め。ストレートで味わいを楽しむことができます。ロックもおすすめですよ。


商品名の『笑梅飯醸』(しょうばいはんじょう)も、縁起がいいですよね」

 

神蔵 蜜號 濃厚ヨーグルト 日本酒仕込み

 

ぽん店長「もうひとつが『神蔵』の『ヨーグルトリキュール』です」


ヨーグルト!!


ぽん店長「なんと60%がヨーグルトです。日本酒を飲めない人に対しては、こういったお酒も面白いと思っています。味わいもやさしく、『大人のヨーグルト』といった味わいです。とってもユニークな商品ですので、ぜひ一度飲んでみてください」


酒屋さんで「飲んで選ぶ」も楽しい!

 

SAKE Street店舗の内観

年末年始のさまざまなシーンにあった日本酒選びを教えてもらいました。しかし、知識よりも大切なのは「自分がおいしいと思うお酒を紹介したい、その気持ち」だそう。


ぽん店長「SAKE Streetは有料試飲(角打ち)できますので、ぜひ購入の前に試してみてほしいです。実際に飲んで『気に入ったから年越しの酒にするよ』と買って行かれる方も多いんですよ」


ぽん店長、ありがとうございました!!

私はこの日、パターン①のセットを購入しました。親戚の反応が楽しみです。


SAKE Streetは12月31日まで営業。最終日には「スタッフ含め、みんな飲みながらゆるゆるやってますよ〜」(ぽん店長)とのことですので、ぜひ飲み会に参加して、味わいながら正月のお酒を選んでみてはいかがでしょうか。


楽の世

ちなみに、ぽん店長が個人的に選んだ年末年始のお酒は「楽の世」でした!

 

大久保 敬太(クリーミー大久保)

大久保 敬太(クリーミー大久保)

編集・ライター/日本酒ナビゲーター

雑誌や書籍のライター・編集を経て、現在WEB関連の編集者。お酒が好きで、お酒を取材して楽しさ・奥深さを伝えたい、できればおいしく飲みながら書きたい、しかし飲むと誤字が増えるということに悩んでいる。