ワインのおつまみというイメージが強いチーズですが、実は日本酒とも相性抜群。最近では、日本酒のアテとしてチーズを提供する飲食店も増えていて、いままさに注目の組み合わせです。
そんな日本酒×チーズを”飲んで、食べて、学べる”ペアリングワークショップを、2025年10月18日、SAKE Street浅草橋にて開催しました。
当日は、タイプや味わいの異なる日本酒5種類、チーズ5種類が登場。ペアリング後のマイベストペアリングの発表では、参加者からさまざまな組み合わせが挙がり、日本酒×チーズペアリングの奥深さを感じられる結果となりました。
この記事では、当日講師を務めた、SAKE DIPLOMA兼チーズプロフェッショナルの熊﨑百子がイベントのレポートお届け。特に人気だった組み合わせの美味しさの秘密も解説します。
自宅でも日本酒×チーズのペアリングを楽しめるように

今回のワークショップの目標は”日本酒とチーズのペアリングを楽しめるようになること”。
日本酒とチーズの組み合わせは奥が深く、人によって感じ方はさまざまです。私が主催しているチーズクラブでも、人によって好きな組み合わせが分かれたりと、チーズマニア歴10年ながら、いつも新鮮な驚きで楽しんでいます。
お酒とお料理やおつまみを組み合わせる「ペアリング」は、お互いの味わいや風味を引き立て、より美味しい組み合わせを探すもの。絶対的な正解はありませんが、今回のワークショップでは、”似た味わい同士を合わせる”、”足りない味わいを加える”といったペアリングの原則をヒントに、日本酒×チーズの面白さや、自分の好きな組み合わせを探してもらいました。

今回ご用意した日本酒は5種類。それぞれ味わいの特徴が異なっています。
風の森 ALPHA 1 DRY 次章への鍵は、菩提酛由来の酸味や発泡感、福司 YONAGA 吟醸酒はスッキリとした味わいとキレの良さが特徴です。
山丹正宗 純米酒 松山三井もキレの良いお酒ですが、こちらは旨みやほどよい苦味がある純米酒。AS TIME GOES BY 生酛 純米 火入れは2021年醸造の熟成酒で、ナッツのような香りと濃醇な旨み・コクがあります。
松盛 チーズに合う純米酒は、イタリアのブルーチーズに合うように開発された甘みが強い純米酒。ちょうど発売されたばかりで、今回のワークショップにピッタリということで、持ち込みで用意しました。

チーズもタイプ別に5種類をご用意。
ビュッシュ・ド・シェーブル(A)は山羊乳製のチーズ。外側から内側に向けて熟成が進んでいて、外側は旨み、真ん中の部分には少し酸味も感じられる、あっさりした味わいです。
マッシュルームのような香りやしっかりとした旨みのある白カビタイプのカマンベール(B)は、生まれ故郷であるフランス・ノルマンディー地方のものを用意しました。よく見かけるカマンベールより個性が強く、濃厚な味わいです。
香りが強く、避けられがちなウォッシュタイプのチーズですが、今回は香りが穏やかなタレッジョ(C)をご用意。旨みが強く、コクがあり、クリーミーで、もっちりと弾力のある生地も特徴のひとつです。
同じく、避けられがちな青カビチーズですが、ブルー・スティルトン(D)は、濃厚な旨みと強い塩味、青カビの風味は少なめで、初心者でも食べやすい青カビチーズです。
ハードタイプのパルミジャーノ・レッジャーノ24ヶ月熟成(E)は、旨みが強く、凝縮された味わい。香りはパイナップルを思わせる華やかで酸味のある香りがします。今回はカチ割りとスライスでお出ししました。

お酒、チーズそれぞれの特徴の解説の後、いよいよペアリングがスタート!みなさん、待ちきれない様子でしたが、ペアリング中はメモを取りながら真剣な様子でいろいろな組み合わせを試してくれました。
参加者の中には、普段はあまり日本酒を飲まない人や、ウォッシュタイプのチーズは初めて食べるという人も。お酒も入って場が温まると、参加者同士の意見交換も盛り上がり、「ハイジに出てくるチーズは?」「アニメのチーズに穴が開いているのは何で?」といった質問も飛び出しました。
ペアリングタイムの後、参加者の皆さま一人一人にお気に入りのペアリングを教えてもらいました。今回のラインナップでは、山丹正宗 純米酒 松山三井×タレッジョ、松盛 チーズに合う純米酒×ブルー・スティルトンの組み合わせが人気という結果に!
そのほかにも、「いつもはあまり飲まないタイプの日本酒も、チーズと組み合わせはこちらの方が美味しく感じた」という意見や、「蜂蜜の有無で合うお酒が違った」、「クラッカーに乗せると、このお酒ともイケる!」など、副食材でアレンジしてのペアリングも楽しんでもらえたようでした。
日本酒×チーズの世界、可能性は無限大!
今回のペアリングで特に人気だった山丹正宗 純米酒 松山三井×タレッジョの組み合わせは、どちらも旨みが強く、ほどよい苦味を感じられる似た味わいの組み合わせでした。また、お酒のキレのよさがチーズの濃厚な味わいをスッキリとさせ、とてもバランスが良い組み合わせでもありました。
松盛 チーズに合う純米酒×ブルー・スティルトンは、甘味の強いお酒と塩味の強いブルーチーズで足りない味わいを補い合うペア。そこに、日本酒とチーズの旨みが加わり、快楽をもたらすとも言われる「甘味・旨味・塩味」が揃った、より美味しく感じられる組み合わせでした。
このように”似た味わい同士を合わせる”、”足りない味わいを加える”という点を意識するだけでも、美味しい組み合わせを探しやすくなります。当日参加できなかった読者のみなさんも、まずはお気に入りの日本酒や身近で手に入るチーズとの組み合わせから試してもらえればと思います。
また、「燗酒とも合わせてみたい」、「もっと個性が強いチーズも食べてみたい」というご意見もいただきました。温めても美味しいのは、日本酒にもチーズにも共通する特徴のひとつなので、次回は熱燗やクラフトサケなども取り入れ、チーズもより個性豊かなものを揃えて楽しめる会を企画してみたいと思います。




































