蕨駅東口から南浦和方面へ3分ほど歩くと、白い大きな提灯と木の看板が目を引きます。「酒場つぃ。」は、一年中味わえるおでんと、豊洲市場や産地直送の新鮮な魚料理が魅力。初心者から日本酒好きまで楽しめる、地域密着のアットホームな居酒屋です。
暖簾をくぐると、木目を生かした温かみのある内装で、初めて来たのにどこかホッとした気持ちに。カウンター越しに迎えてくれる店長の志賀さんは、生まれも育ちも蕨。西川口にある1号店の焼き鳥居酒屋から勤務しています。
2号店である「酒場つぃ。」はおでんや海鮮、日本酒にこだわりのあるお店として、2024年1月にオープンしました。地域密着型で幅広い世代が楽しめる、居心地の良い空間で、貸し切りできる2階席もあります。棚に常連さんのキープボトルがずらりと並ぶ様子からも、地域で愛される人気のお店だとわかります。

料理長の泉さん(左)と、店長の志賀さん(右)
そしてキッチンで腕を振るうのは、料理への探究心あふれる泉さん。同級生が「酒場つぃ。」で働いていた縁もあり、この店で料理の世界に飛び込む決意を固めました。もともとの料理好きも高じて、今やオリジナルメニューも多数手がけます。
最初の一皿に選んだのは、ボードに書かれたその日のおすすめ・鱧の天ぷら。むっちりと肉厚で弾力ある身は驚くほどふんわり柔らか。サクッと軽い衣のコントラストが絶妙で、口に含むと自然と頬がゆるみます。

鱧の天ぷら(時価)、福司酒造「五色彩雲 Ashiri」90mL700円(税込)
魚は豊洲市場や全国の漁港から直送され、その時季ならではの味わいが楽しめます。中でも夏の鱧はファンの多い人気メニューで、シーズン中はできる限り毎日提供しているそう。皿に添えられる淡路島の藻塩はまろやかで角が立たず、素材の旨味をそっと引き立てます。つい塩だけで舐めては日本酒をひと口……と、気づけば交互に手が伸びてしまうほどです。
鱧に合わせるのは、北海道・福司酒造の「五色彩雲 Ashiri」。口に含むとマスカットのような丸い酸味がふわりと広がり、レモンを絞ったように、天ぷらの油をスッと切ってくれます。口内の油を流すので、次のひと口がまた美味しく感じるペアリングです。
もともと端麗辛口系の日本酒を中心に扱っていたそうですが、現在は泉さんの好みで旨口タイプ多めのラインナップにシフト。今では味の方向性が被らないお酒を7~8種類を常備し、季節に応じて変化も楽しめる構成です。
「食べ物との組み合わせを探求するのが面白いから、日本酒が好きなんです」と語る泉さんが、料理にあわせたお酒のペアリングの提案もしてくれるので、日本酒初心者も安心です。
日本酒は自宅から店舗までの通勤途中に、SAKE Streetの店舗に立ち寄って購入することが多いそう。
「飲食店向けに平日限定で無料試飲ができるのが、酒ストで仕入れを始めたきっかけでした。他のお店ではなかなか扱っていないお酒が多いのも魅力で、専門的な知識を持った本田(ぽん)店長が相談に乗ってくれるのもありがたいです」
メインにいただくのは、やっぱり名物のおでん。出汁は、かつお・昆布・あごをベースに開店以来改良を重ねたもの。60℃で時間をかけて煮込んだおでんは、ほっと心まで温まる優しい味わいです。
この日は5点盛りを注文。大根は厚切りで迫力があるサイズ!程よい歯ごたえが残りつつも、しっかりと味が染みている一品。ひと口サイズのがんもどきは、口に入れるとじゅわっとお出汁が広がります。

おでん おまかせ5点盛 1,000円(税込)
おでんには、福司の普通酒を燗酒で合わせます。おでんと同じ60℃まで温めたお酒は、とげがなくまろやかな味わい。優しい出汁と味の構成要素が似ていて、つい交互に手が進んでしまいます。出汁割で飲むのもおすすめとのこと。
ネタは常時15種類以上を提供しており、何度来ても飽きないように工夫されています。定番の人気ネタは大根、餅巾着、白滝など。変わり種もさまざま挑戦しており、人気メニューの大きなからあげをお出汁に浸した豪快なメニューはぜひ試してほしい一品。出汁と揚げ物の旨味の相乗効果に病みつきになります。

から揚げのおでん 1個220円(税込)
自慢のおでん出汁を使った料理は他にもさまざま。この日のお通しは、出汁を使った卵豆腐で、優しい味わいのプルプル食感がたまらないひと皿です。
「酒場つぃ。」をひと言で表すなら、“お腹も心も満たされる場所”。出汁にこだわった種類豊富なおでんと季節の魚料理、こだわりの日本酒セレクト。そのすべてが、「日本人でよかった」としみじみ感じさせる美味しさでした。 志賀さんと泉さんによる居心地の良い接客に、ひとりでも仲間とでも、つい通いたくなるお店です。
店舗情報

酒場つぃ。
所在地:埼玉県川口市芝樋ノ爪1-1-48(蕨駅東口から徒歩約3分)
電話番号:048-424-7739
営業時間:17:00~23:00
定休日:水曜日
五色彩雲 Ashiri
鱧の天ぷらと合わせていただいた日本酒。
アシリはアイヌ語で“新しい”を意味する言葉。“Ashiri”は、白麹を使用し、多様化する食文化に新しくアプローチできるような新ジャンルを目指した1本。 香りは爽やかで、草原を思わせるような青さに柑橘調の香り、ほのかにミルキーな香りが楽しめます。
口に含むと非常に瑞々しく軽快な甘味のアタック。さっぱりとした柑橘調の酸が駆け抜けます。丸い旨味が余韻にふくらみ、軽快ながらも味わい深く。グレープフルーツのような柑橘調のほろ苦さがいいアクセントとなり、ややキレよいすっきり感が楽しめます。 すっきり飲みたい場合はキンキンに。注いでから少し経つと味のふくらみが増し、より味わい深さが楽しめます。
【シリーズ:サケスト酒が飲める店】
第1回:「〼kuramae」(蔵前)
第2回:「ぽんしゅビルヂング」(門前仲町)
第3回:「日本酒バー へなちょこ」(西荻窪)
第4回:「きんぼし」(秋葉原)
第5回:「粋酔処 楽縁」(東大前)
第6回:「食べ呑み処 あぐまる」(浅草)
第7回:「都橋おでん 久」(野毛)
第8回:「さかなや なかにし」(板橋)
第9回:「和食日和 おさけと」(日本橋)
第10回:「ふくの鳥」(神田)
第11回:「黒猫庵」(蔵前)
第12回:「酒場つぃ。」(蕨)




































