SAKE Streetインターンの榎本です。10月に、大学の夏休みを利用して、生まれ故郷の山形県鶴岡市に帰省しました。
子どものころは気づきませんでしたが、日本酒好きになってから改めて帰ってみると、山形は日本酒ネタにあふれています。特に、鶴岡市のお隣・庄内町はなんと、日本酒の原料米として人気の「亀の尾」発祥の地なんですよね。
そんな山形県庄内町には、地方の奥地でありながらも、多くの関係者から愛されている亀の尾の聖地があります!そこで今回のブログでは、亀の尾聖地レポートをお送りします。
ちなみに、SAKE Street メディアにも亀の尾の記事がございます。より詳しく亀の尾について知りたい人は、こちらもあわせてご覧ください。
→日本酒の漫画『夏子の酒』にも登場した「亀の尾」とは?味わい、系譜、生産地などの概要を知る
故郷、庄内平野の黄金色に光る稲穂。なお、これは亀の尾ではありません
「亀ノ尾の里資料館」に行ってみた
庄内町にある亀の尾の聖地とは、亀の尾にまつわる歴史や資料がまとめられた「亀ノ尾の里資料館」と、亀の尾発祥の地である「熊谷神社」。まずは、亀ノ尾の里資料館に行ってみましょう!
到着して、いざ入館しようとすると、視界でキラキラと黄金色に輝くものが。
ウェルカム亀の尾!(中央)
なんと、バケツ稲で亀の尾が栽培されていました。 実り具合、稲穂の垂れ具合も申し分ない、最高のお出迎えですね!
こちらの資料館、コンパクトな建物ながら、庄内町の稲作の歴史や、稲作に関わる功労者の資料などがしっかりとまとめられていて、かなり見応えがあります。考古学や民俗学系の資料も充実していました。
阿部亀治氏関係の展示スペースが特に広い
亀の尾の生みの親である阿部亀治氏についての展示です。亀の尾以外にも、農業への貢献度合いがすさまじかったことが伝わってきます。
資料の数々を見ていると、どうやら阿部氏は手帳を常に持ち歩くメモ魔で、几帳面だったよう。亀の尾は、そのマメさが大きな結果へと結びついた一例なんですね。
メモが細かい!
また、「亀の尾」の名前の由来についての説明も。
右下の亀人形がかわいい
謙遜して「亀ノ王」から「亀ノ尾」にしたなんて、奥ゆかしいですね。「穂がオサガメの尾に似ている」とのことですが、オサガメとは……?
オサガメの尾 Paul Mannix. 2008. A leatherback turtle heading for the sea after nesting, Turtle Beach, Tobago. Attribution 2.0 Generic (CC BY 2.0). サイズと色調を調整
亀の尾の穂(中央)、資料館前にて
似て……ます、はい、似てます。今にも海に飛び込んでいきそうですね。
この他にも、試験栽培時の失敗の記録、酒造好適米としての亀の尾の展示(※亀の尾は食用としても愛されています)や、復刻米を用いた酒造りに関する展示などがぎっしり。日本酒好き、亀の尾好きにはたまらない展示で、知的好奇心が刺激されまくりました。
13歳以降は学校に通えていないにも関わらず数多くの実績。見習おう。
亀の尾で醸された日本酒の展示
発祥の地「熊谷神社」に行ってみた
続いて、熊谷神社へ。昼過ぎに出発したのですが、Googleマップでルート検索をしたところ、営業時間は12時まで。うそ、もう閉まってる?昼なのに……?と一瞬不安になりつつも、どうせ田舎特有のガバガバな記載情報だろうと、特に気にせず車を走らせます。
道中には「亀の尾発祥の地」の看板が
さて、熊谷神社に到着です.......お、あれは⁉︎
ウェルカム亀の尾の再来
こちらでもウェルカム亀の尾!資料館より大きい!若干、取ってつけたような感じがありますが、何がなんでも亀の尾を推したい気持ちが伝わってきます。
鳥居の先には、「亀之尾発祥の地」の記念碑が。
石碑「亀之尾発祥乃地」。6メートルくらいあります。デカ!
左側のおにぎりのような石碑には、亀の尾の由来とその後の普及について記されています。
境内は木陰が続き体感温度が一気に下がります、涼しい
では、境内を進んでみましょう。緑あふれる道を進むと、ついに社殿に到着!
そして……社務所は閉まっていました!営業時間、本当に午前だけだったんですね。さすが我が地元・山形県。
Google先生、あなたが正しいです
御朱印なども買いたかったのですが、今日のところは参拝だけさせていただくか……と諦めたそのとき!神社周辺の草木の手入れをされていた神主さんに、偶然お会いすることができ、ちょっとだけ神社について解説を受けることができました。
神主さんからうかがったお話
・この神社がある土地には、かつては棚田が広がっていた。風も強く気温も低い、稲作には不向きなエリアだったので、厳しい環境にもある程度強い品種を栽培していた
・大凶作の年、たまたまここに参拝に来ていた農家の阿部亀治が、近くの田んぼで冷害に負けず健全に実った3本の稲穂(惣兵衛早生種)を発見。その3本をもとに幾度の研究の末誕生したのが「亀の尾」
・当時は米の一粒すら無駄にしない時代、なぜ3本の稲が放置されていたのか、そもそも謎
そのほか、神社と御神体にまつわる伝説、神社周辺の改装工事のお話などについても詳しくお話してくださいました。
ちなみに、神主さんの車のナンバープレートが稲穂のイラスト仕様になっていて感動しました。仕上がっていらっしゃる。
寄付すると田んぼが出現する仕様(さくらんぼといなほナンバー 〜つけて走って、広めよう山形の魅力!〜より引用)
熊谷神社の御神体のひとつ「御滝不動尊」
かつてはこの水が田んぼに注がれていたそうです。とっても冷たい。亀の尾のもとになった3本の稲も、この冷水で育ったのだと思うと感慨深いですね。
ちなみに、社務所で販売している御神酒は亀の尾100%使用なんだそうです。そんなのまた来てゲットしなきゃいけないじゃないですか……。
というわけで後日、しっかり午前中に再訪しましたよ!
社殿内(撮影許可をいただきました)
丁寧なご祈祷を受け、御朱印や御神酒をいただきつつ、宮司さんからいろいろとお話していただきました!荘厳な雰囲気や木陰の涼しさ、人里離れた静かさが相まってずっと滞在したくなるような環境です。地元にこんないい場所があったんだなぁ。
そして熊谷神社で購入&いただいた品はこちらです。
ずらり。
立派なお札、「亀之尾発祥乃地」と記載された堂々たる御朱印、御饌米(亀の尾)。そしてなんといっても御神酒は、亀の尾100%使用の日本酒!
神社と同じ庄内町にある鯉川酒造さんが醸造。お燗にして、おでんと合わせるとたまりませんでした。
ちなみに、熊谷神社がある立谷沢地区中村集落はかなりの豪雪地帯のため、11月下旬から3月末頃までは神社を休業するそうです。
こちらの手水所の屋根あたりまで積雪するらしいです
亀の尾の聖地を拝みに、こばえちゃ庄内!
世間一般的にはマイナー、そしてアクセスが便利とは言い難い立地ながらも、伝説のお米「亀の尾」と、生みの親である阿部亀治氏を讃える聖地がそこにはありました。
どちらのスポットからも、地元からの愛、そして住んでいる地域を問わず、関係各所からの愛を感じます。日本酒好きの皆さん、大人の社会科見学として亀の尾の聖地観光はいかがでしょうか? 亀の尾で造られたお酒を飲んだときの味の感じ方がきっと変わるはずですよ。
最後に、貴重なお話をしてくださった熊谷神社の皆さま、亀ノ尾の里資料館の職員の皆さま、本当にありがとうございました!
熊谷神社のおみくじは1枚50円とリーズナブル。100円玉で2枚引けちゃう
聖地情報
熊谷神社
住所:山形県東田川郡庄内町肝煎丑ノ沢71
電話番号:0234-59-2204(宮司宅:0234-59-2525)
開館時間:9:00~12:00(11月末〜3月末頃の降雪期は休業)
亀ノ尾の里資料館(指定管理者:和合の里を創る会)
住所:山形県東田川郡庄内町南野字十八軒 21-1
電話番号:0234-44-2162
開館時間:9:00~16:30
入館料:無料