クラフトサケの委託醸造、やってみた 「LIBROM おいもとあずき ~いきなり団子仕立て~」誕生秘話

「いきなり団子」と「LIBROM おいもとあずき」

さつまいもとあんこを包んだ熊本県の郷土菓子・いきなり団子。福岡県の醸造所・LIBROMと、西荻窪の日本酒バー「へなちょこ」のコラボレーションによって、このお菓子をイメージしたクラフトサケが誕生しました。

いきなり団子をイメージしたお酒はどんな味がするのでしょうか。今回のコラボレーションのきっかけや、テーマの理由、気になるテイスティングについて、オーナー・篠山可南子さんの夫である篠山範明さんに綴ってもらいました。

目次

LIBROMにハマり、コラボを打診

クラフトサケというカテゴリの存在を初めて知ったときは、おもしろい取り組みではあるものの、自分が好きになるとは考えていませんでした。ところが、昨年(2022年)冬に出会ったLIBROMに、夫婦二人ですっかりハマってしまいました。

今年の4月には、福岡県にある醸造所を訪問。お酒の造り方を見せてもらいながら、「どんな副原料を入れたらおもしろいだろう」という話題で盛り上がりました。そこで、軽い気持ちで「へなちょこオリジナルのLIBROMを造れないか?」と提案してみたところ、穴見さんが快くOKしてくれたのです。

LIBROM醸造所のバーにて、お酒3種の飲み比べ
福岡の醸造所を初めて訪れた時の写真

熊本出身の妻が「いきなり団子」を提案

コラボできるとなれば、へなちょこならではの副原料を決めなければなりません。フルーツを副原料にしたLIBROMはすごく美味しいですが、誰でも思いつきそうです。せっかくなら、LIBROMさんにとっても新しい試みになることを提案したいと思い、夫婦二人で考え始めました。

はじめに思いついたのは、おいもでした。LIBROMは福岡の酒蔵ですが、私は福岡県を拠点にするアイドル「ばってん少女隊」の大ファンで、その中においもが大好きなメンバーがいるのです。

すると、熊本出身の妻が、「おいもだけでは物足りないので、熊本の郷土菓子であるあんことさつま芋を挟んだ和菓子『いきなり団子』味のお酒を作るのはどうか」と提案してきました。お団子をお酒にするなんて聞いたことがないので、初めは冗談で言っているのかと思いましたが、どうやら本気だということがわかり、「おいもとあずき ─いきなり団子仕立て─」というアイデアを穴見さんに提案してみました。

味が出にくい素材のため、製法を工夫

LIBROMに福岡県内のさつまいも農家さんの知り合いがいたため、無事、福岡産の「べにはるか」を使えることが決まりました。

あんこを表現するための小豆については、穴見さんが和菓子屋さんに相談。「小豆そのものを使うよりも、小豆の煮汁を使った方が味が出るのでは」とアドバイスをもらい、煮汁を譲ってもらえることになりました。

材料はそろいましたが、穴見さんは不安そうな顔。LIBROMが得意とするフルーツやハーブではないので、味がのらない可能性があるといいます。

その結果、いつものLIBROMとは異なる製造方法に挑戦することが決まりました。通常、LIBROMは材料を一度に加える「一段仕込み」という製法を使っていますが、今回は、日本酒の一般的な製法である「三段仕込み(3回に分けて原料を投入する)」をおこなうというのです。一段仕込み特有の酸が、おいもや小豆の味の風味を邪魔してしまうかもしれないため、なるべく酸を立たせないようにという考えからの選択でした。

また、酸が減ることでお酒の味わいが薄くなってしまわないように、仕込み水を増やして低温で発酵時間を伸ばすという工夫をしたそうです。

へなちょこスタッフで仕上げを体験!

11月下旬、へなちょこスタッフがLIBROMを訪問し、仕上げの作業をお手伝いしました。1日目は、発酵の後半ステージになったもろみの中に、ペースト状のさつまいも(べにはるか)と、小豆の煮汁を投入。そして2日目、いよいよお酒を搾りました。

もろみに、ペースト状のさつまいもを投入している様子

搾ってみたところ、おいもの甘みがしっかりとのった深みのある味わいになっていました。笑顔の穴見さんに、へなちょこスタッフもほっとしました。しかし、「もう少し小豆の味わいを出したい」と、小豆の煮汁を使った麹甘酒をさらに投入。結果として、三段仕込みではなく四段仕込みでお酒が仕上げられました。

タンク内のもろみに、小豆の煮汁入りの麹甘酒を投入している様子
小豆の煮汁入りの麹甘酒を投入

穴見さんも、「正直、最初に話をもらったときは味がのるのか、美味しいものができるか、とても不安でした。結果として、今までのLIBROMとは違った美味しさを表現できて、とてもうれしい。挑戦してよかったです」とコメントしてくれました。

気になる「おいもとあずき」の味は?

「おいもとあずき」は、へなちょこのほかはSAKE Streetでの限定販売。LIBROMやクラフトサケをよく知る編集部の二戸さんと木村さんに、テイスティングをしてもらいました。

LIBROM「おいもとあずき」

おいもやあずきらしい香りはありますが、甘味はサケ本来のお米由来の甘味という感じ。バランスがきれいですね。LIBROMのお酒にしては酸味が少なめですが、後味はスッとまとまるように造られています

二戸さん

冷酒だと芋焼酎のようなニュアンスを感じましたが、40℃以上まで上げるとおいもとあずき感が増して、酸も伸びますね。55℃くらいにすると味がふくらんでほっこりします

特に二人が驚いていたのが、70℃まで上げて60℃ほどまで冷ました燗冷ましです。

二戸さん

シンプルにおいしい。“いきなり団子ヨーグルト”みたいな味がします

温度ですごく味が変わりますね。いきなり団子が好きな人は甘いものが好きだと思うので、燗冷ましがいちばんおすすめかもしれません

二戸さんと木村さん
二戸さん&木村さん、試飲のご協力ありがとうございました!

LIBROMにとっても新境地の開拓となった「おいもとあずき」。温度によって表情が変わるユニークなお酒を、へなちょこやSAKE Streetでぜひお試しください。