居酒屋でも定番のちょっと粋な酒肴、あん肝。言わずもがな、あんこうの肝臓のことですが、そのなめらかで濃厚な味わいにはファンも多いんじゃないでしょうか。
あん肝といえば、やっぱり日本酒が恋しくなりますよね。今回は、そんなあん肝にはどんな日本酒が合うのか、徹底的に探ります。
なお、検証では、蒸したあん肝に紅葉おろしと青ネギを乗せ、ポン酢しょうゆをかけた、ごく一般的な食べ方でいただきました。
あん肝にはどんなお酒が合うのか?
ポイント① 香りは控えめがベター
さて、あん肝といえば脂肪分が高く、かなりのこってり食材です。そうなると、まず思い浮かぶのがパンチの強いどっしりしたタイプ。しっかりした脂肪由来のコクと酒のうま味が同調してくれます。できれば甘味が強めのもののほうが、脂肪分と相性が良いです。
ただ、あん肝の味付けそのものは淡白で、おろしポン酢の爽やかさもあります。このため、どっしり系とは真逆の軽快なタイプでも合わせることが可能です。
おろしポン酢は添え物でありながら、案外影響力が大きいので、ここにフォーカスしてお酒を選ぶのも全然アリです。
通常、魚介類に対してフルーティな香りが強いタイプのお酒は魚臭さが助長されてしまいますが、おろしポン酢が仲介役となるおかげで、そのあたりもほとんど気にせず合わせることができるのです。
とはいえ、ペアリングとしての完成度でいえば、香りは地味な方が上であることは確か。選ぶ余地があるのなら、香りが控えめなタイプにしておくのが無難でしょう。
ポイント② 温度帯は好みで選ぶ
温度帯に関しても選ぶお酒による部分はありますが、冷酒からお燗まで幅広く楽しめます。
冷酒ではおろしポン酢の爽やかさと呼応し、あん肝の脂でくどくなった口内をリフレッシュしてくれます。一方で燗にするとあん肝のコクと同調しやすく、最後まで余韻を楽しめます。どちらを選ぶかは好み次第ですね。
ポイント③ テクスチャーに合わせる
また、テクスチャー(食感)に着目してみるのも一つの方法。あん肝と同じく口当たりの柔らかいにごり酒やうすにごりなどは口内での同調性が非常に高くなります。
個人的なおすすめは、フレッシュなうすにごり。おろしポン酢の爽やかさ、あん肝のマイルドなコクのどちらとも同調する要素を持っているので、一口で二種類分のペアリングを楽しめます。
つまり、着目すべき点で選ぶ酒は変わる!
ここまで読んで、結局何が合うの?なんでもいいの?と思われた方もいるかもしれません。確かに合うお酒の幅は広いんですが、なんでもいいわけではなく、選ぶ際は何にフォーカスするかが大切ということです。
すなわち、おろしポン酢の爽やかさに合わせるのか、あん肝のコクに合わせるのか。両極端な味が混在した料理なので、合わせるお酒もそれだけバリエーションが増えるのです。
というわけで、これらを踏まえて選んだお酒をご紹介します。
あん肝に合う日本酒4選
燦然 山廃純米 雄町
まずはファーストインプレッションに従って、どっしり濃い味のお酒を。うん、やはり間違いないですね。両者の旨味とコクが共鳴して増幅、うま味爆弾になります。おろしポン酢はそこに華を添えるイメージでしょうか。
温度帯はぜひぬる燗か熱燗で。口内で肝の脂が溶けて混然一体となります。
澤乃花 辛口純米 花ごころ
次は真逆のタイプを。淡麗辛口好きには圧倒的な支持を受けている一本です。
たっぷりポン酢をかけたあん肝を一口、すかさずこのお酒をちびりと啜る。まずはするりと口の中に入り込み、おろしポン酢が同調。その後に広がるあん肝のコクを下支えする米の旨味。ややもするとボンヤリしがちなこの料理に、明確な輪郭を与えてくれます。
お燗でも美味しいお酒ですが、温めると序盤のおろしポン酢とのキリっとした同調性が薄れてしまうので、これに関しては冷酒がおすすめです。
会津娘 特別純米酒 無為信
味わいに凹凸がなく、スムーズに流れていきます。良い意味で突出したところがないので、おろしポン酢ともあん肝とも平均的に合います。
ぬる燗が抜群ですね。優しく全体をまとめ上げて馴染んでくれます。一方で常温だと前半でおろしポン酢と見事に同調します。温度帯を変えるだけで、これだけニュアンスの異なるペアリングを楽しめるのはとってもお得!
会津娘 純米吟醸 うすにごり 雪がすみの郷
会津娘からもう一本。毎年大人気、うすにごりの限定酒です。
同調性で言えばこちらが優勝でした。
酸味は控えめで、マイルドな口当たりとふわりとした甘味、そして豊潤かつ上品なうま味が、あん肝のまろやかなテクスチャーと重なります。ほんのりと感じるフルーティな香りがおろしポン酢とリンクするところも素晴らしい。
限定酒のため1月を過ぎると入手が難しいですが、他のお酒でもうすにごりであれば概ね似たペアリングを楽しめますよ。
まとめ
それぞれタイプの異なるお酒を紹介しましたが、懐の深い料理なので、これら以外のタイプでも、そこそこの精度でペアリングは可能です。
ただ、もう一歩踏み込むのであれば、先に述べたように、おろしポン酢かあん肝自体か、どちらかに着目してペアリングを考えることで、選択肢を整理しやすくなると思います。
濃厚な冬の旬を、素敵な日本酒とともに楽しんでみてください!