鍋料理の季節がやってきました!世の中に無数の鍋はあれど、日本酒が飲みたくなる鍋ランキングのナンバー1はやはり水炊きでしょう(異論は認めます)。鶏と野菜で構成されたシンプルな味わいで、じんわりと冷えた体を温めてくれます。
ただ、いざ水炊きに合う日本酒って何?と言われると、口ごもってしまうかもしれません。意外と何でもいいわけじゃないんですよね。そんなわけで、どんなタイプの日本酒を合わせたら、さらに水炊きの魅力を引き出せるのか、じっくり検証していきます。
なお、水炊きといえば、元祖は鶏ガラから取った濃厚な白濁スープの博多式ですが、今回はあっさりした出汁のオーソドックスな調理法を採用します。
具材は鶏モモ肉、白菜、椎茸、えのき、春菊、長ネギ。
タレには味ぽん(ポン酢醤油)を、薬味には柚子胡椒を使いました。
水炊きにはどんなお酒が合うのか?
ポイント①味の濃さを合わせる
ペアリングは「料理と酒の味の濃さを合わせる」のが基本。これによって両者が同調して相乗効果が生まれます。
今回の水炊きは、繊細な薄味の出汁が特徴。つまり、合わせるお酒も濃いものだと料理の味わいが負けてしまいますので、なるべく軽めのものを選びましょう。
アルコール添加された本醸造酒、普通酒は比較的ボディが軽快で、薄味の料理と合わせやすいです。また低アルコールタイプも同様に軽やかに飲めるのでおすすめです。
ポイント②フルーティ系もおすすめ
低アルコールといえばフルーティなタイプも多いですね。フルーティな日本酒はとかくペアリングに苦労しますが、ここは味ぽんと柚子胡椒(または柚子の皮)で簡単にクリア。酸味とフルーティな香りを補うことで、両者に繋がりができて一気に相性が近づきます。
また、具材に春菊やせりなど香りの強い野菜を使えば、独特の青臭さがフルーティな吟醸香とさらに調和しますよ。
ポイント③温度帯を変えて楽しむ
温度帯は冷酒でもお燗でもお好みでOKですが、同調性を求めるのであれば水炊きの温度に近づけたお燗のほうがよく馴染みます。鶏のコラーゲンたっぷりの出汁は、ややとろみがありますよね。日本酒はお燗にすることでまろやかさが増すため、テクスチャーの面でも馴染みがよくなります。
ただ、熱×冷も捨てがたい。この場合は発泡系などフレッシュなタイプが向いています。ほてった口内をキンキンに冷えたフレッシュなお酒でリセットする。そしてまた熱い鍋に箸が伸びる。食事にリズムができて楽しいですよ。
水炊きに合う日本酒5選
東豊国 佳撰
一歩己の豊国酒造が手掛ける、日常に溶け込む普通酒。オーソドックスなラインとしては今回はこれが優勝でした。
そもそも鶏出汁そのものとの同調性がバツグン。ほどよく柔らかい口当たり、軽くてすーっと染みていく旨味。口の中でほろっとほどけた鶏肉の旨味をそっと包み込んでくれる、そんなイメージです。
普通酒にしてはやや酸味もあるので、そこでポン酢にも呼応してくれます。
澤の花 純米大吟醸 打上花火
冒頭で「鍋の季節到来!」とか書いておきながら思いっきり夏酒です。だって試飲したフルーティ系の中では一番良かったんだもん……まだネットショップに在庫もあるし……(執筆時点)
さて、これはもう完全に柚子胡椒の出番ですね。夏酒らしい爽やかでフレッシュな香りは柚子胡椒を添えることで見事にシンクロしてくれます。大吟醸ゆえのほどよい抜け感もシンプルな鶏出汁と同調するポイント。
時節柄もあって、同じスペックのものを入手するのは難しいかもしれませんが、派手過ぎず軽いタイプの大吟醸であれば同じように楽しめますよ。
真上 純米酒 Regular
きらびやかなスター選手ではないですが、飽きずに飲めるバランス系として秀逸な一本。
ちょうどいいボディ感に、ほんのり軽い酸味がアクセントになります。温度帯は常温かぬる燗がおすすめ。
柚子胡椒ありでも充分美味しいですが、どういうわけか薬味なしのほうがベターなんですよね。フルーティすぎないのが奏功しているのかもしれません。
Beau Michelle
ビートルズのMichelleを聞かせながら醸した酒ということで有名なこちら。
完全に変化球ではありますが、このペアリングも面白い。味わい自体は非常に甘酸っぱいのですが、これがまさにタレである味ぽんと同じ役割を担ってくれるんです。
度数も9度とライトなので、今回のセオリーにばっちり当てはまりますね。
残草蓬莱 純米吟醸 Queeen 槽場直結生原酒
こちらも変化球。Queeenの名が示す通り12度の低アルコールタイプ。開けたては微炭酸も楽しめるフレッシュな一本。そんないかにも冷酒向きなお酒をぬる燗にしてしまうという暴挙に出てみました!するとこれが最高に水炊きと合うじゃないですか!
まず、低アルゆえのボディの軽さ、これが水炊きとぴったり馴染む。ぬる燗にすることで、酸味が前に出て、タレとの相性が良くなります。フルーティすぎないので、意外なことに柚子胡椒なしでもちゃんとペアリングしてくれました。
まとめ
以前に検証した「寄せ鍋」と被っちゃうんじゃないかなあ、という懸念があったんですが、蓋を開けてみれば一つも被らず。
→寄せ鍋に合う日本酒はコレ!おすすめ4選
とはいえ、基本的な考え方は寄せ鍋と同じです。
もっとも気にすべきはボディの軽さ、そしてフルーティ系を合わせるならポン酢と柚子を駆使すべし、ってところですね。
今回取り上げた5選に共通するのは酸の存在です。寄せ鍋の時よりも酸味との相性がいいんですよ。魚介出汁だと酸味の扱いは少し難しくなるんですが、よりこってりした脂とコクのある動物性の出汁の場合は、酸味もウェルカムになるのでしょう。
特に、今どきな低アルで試すとそのあたりがよくわかると思いますので、ぜひ!