牛すじ煮込みに合う日本酒はコレ!おすすめ4選

とろとろの食感と牛の旨みがたまらない牛すじ煮込み。居酒屋でも定番の人気メニューです。今回はそんな牛すじ煮込みと合う日本酒を探っていきます。


牛すじ煮込みの味付け

 

醤油ベースの甘辛い味つけが基本ですが、店によっては味噌を加えていたり、砂糖が多かったり少なかったりと、かなり幅があります。それによって合う日本酒も変わってきてしまうのが難しいところですが、今回に関してはコンビニで入手できるものを標準の味つけと位置づけました。

コンビニであれば、開発段階でリサーチして多くの人が好むであろう味に仕立てているはずですからね。

使用したのはローソンとファミリーマートの商品です。ローソンはやや甘めで出汁の味を強調しています。ファミリーマートはローソンより醤油が強く塩気があります。

参考のために近所の居酒屋のテイクアウトも用意しましたが、これはめちゃくちゃ醤油が強くて濃かったです。やはり三者三様ですね。

 

牛すじ煮込みに合う日本酒

まずは特徴的なとろとろのテクスチャー。これを無視するわけにはいきません。同じくとろっと口当たりの柔らかい酒は調和しやすくなります。例えば濁り酒なんかはわかりやすいですね。

それから味付けのメインである醤油にも注目。醤油は塩味の他にも複雑なアミノ酸によるうま味を持っています。ここに対しては、同じく複雑な味わいの生酛や山廃であれば同調するのでは?と思いがちですが、実際合わせると案外ごちゃごちゃすることが少なくありません。このタイプの長所でもある厚みのある酸が、煮込みの味わいをかえって煩雑にしてしまう傾向があるのです。

そこで逆にシンプルで隙の多い酒を使って、うまく味わいの棲み分けをしてあげると、料理にそっと寄り添いつつ、旨みを下支えするようなペアリングを楽しめます。軽くてシンプルな味わいの普通酒や本醸造などは、この合わせ方に最適と言えます。

香りに関しては、フルーティで派手なタイプは避けましょう。気取らない下町の料理に、華やかでフルーティな香りは言うまでもなくミスマッチです。大衆居酒屋にシャネルの香水をつけたマリリン・モンローが入ってくるようなものです。

温度帯はぬる燗以上をおすすめします。冷酒でも悪くはないですが、燗のほうが牛すじのとろける食感をより堪能できるからです。牛のコラーゲンの融点は約30℃とされています。つまり、そこから温度が下がるほど口溶けが悪くなってしまうのです。また、燗によって酒の口当たりが柔らかくなる効果も得られます。

では、実際に合わせて良い結果を得られたお酒を紹介していきます。

 

神蔵 にごり ひそか 無濾過 無加水 生酒

 

キャッチーでありながら甘すぎず、非常にバランスのいい濁り酒です。 とろっとしたテクスチャーが牛すじにぴったり調和。濃いめから薄味まで、比較的幅の広い味付けに対応します。 開けたてはガス感があり、それはそれで美味しいのですが、牛すじとの相性で言えばもう一歩。このため、開栓後数日置くか、緩めに燗をつけて炭酸を飛ばすと一層同調性が増しますよ。

 

美寿々 本醸造

 

口当たりの柔らかさと言えば、真っ先に頭に浮かぶのがこの一本。醤油が濃い味付けのほうが、より酒の甘さが強調されて深みを感じられます。

軽くて後口のキレがいいので、最後にくどくなりがちな口中をすっきり洗い流してくれます。

ペアリングのタイプとしては、酒と料理が混然一体となる同調というより、酒が料理に寄り添って引き立てる方向性。マイルドさがさらに増すぬる燗がおすすめです。

 

澤の花 純米吟醸 ひまり

 

シンプルな酒で料理に寄り添うタイプのペアリングをもう一つ。

ドライでジューシー、米の旨みもしっかりあって食中酒として高いレベルを誇る長野の銘酒です。

冷酒だと酸による骨格を感じますが、燗にするとその酸による枠が外れ、柔らかさが広がります。この状態が牛すじ煮込みと信じられないくらい合うんですよ。うま味が響きあってシンクロしつつ、同時に料理の下支えもしてくれる最強のペアリングです。

 

流輝 純米 メリッサ 生酛 

 

流輝の松屋酒造が初めて挑戦した生酛造りのお酒。牛すじ煮込みに生酛は合わないと言いましたが、これは例外的に調和しました。複雑すぎず、素直な酒質が奏功したのかな。

とはいえ薄めの味付けだとやはり酒が勝ってしまいます。濃いめの味付けでお試しください。

冷酒では柔らかくもジューシーな酸と上品な甘みがバランスします。温めると生酛らしい凝縮感が膨らみのある旨味に変化。口当たりも和らいで、よりフィット感が増します。

 

まとめ

今回初登場した「寄り添い系」のペアリング。酒と料理が同等のレベルで混ざりあう同調や補完の手法とは違い、酒自体は一歩引いて目立つことなく、料理の味わいを全体的に底上げしてくれるペアリングです。酒はあくまで料理の引き立て役に徹します。

昔ながらの淡麗辛口の酒と、典型的な和食との組み合わせで見られることが多いですね。

ここを狙うのであれば、お酒は「シンプル、透明感、弱めの酸」、このあたりがキーワードになります。加えて、牛すじ煮込みであれば口当たりの柔らかさも重要。ぜひぬる燗でお楽しみください。

 

酒井 辰右衛門

酒井 辰右衛門

J.S.A. SAKE DIPLOMA / 日本酒ペアリング研究家

ミュージシャンとして活動する中で、ひょんなことから日本酒に目覚め、一気に沼へ。 現在は日本酒と料理の相性を様々な角度から探るweb「日本酒ぺありんぐ総合研究所」の主宰として日々飲酒に励んでいます。食中酒としての日本酒の可能性を広げるために、およそ合いそうもないエスニックや洋食、スイーツなどとの相性を探るのがライフワークになっています。初心者向け日本酒セミナーの講師としても活動中。