前回に引き続き、年末特別企画「正月料理に合う日本酒」をお送りします。
前回はこちら:お雑煮に合う日本酒はコレ!おすすめ3選
後編は「おせち」です。最初にこのテーマを聞いたとき頭を抱えました。だって、一言で「おせち」といっても、どれだけの種類があるんだって話じゃないですか。しかし、実はおせちには基本である「祝い肴三種」と言われるものがあるそうなのです!
(日本料理を勉強している酒ストインターン・仙波さんに教えてもらいました……)
関東では数の子、黒豆、田作り。関西では田作りの代わりに叩きごぼう。この3つであれば、なんとか検証もできそうです。なお、今回は田作りではなく叩きごぼうを採用しています。田作りだと、甘い惣菜という点で黒豆と役割が被りますからね。
この3種それぞれの特性を踏まえて、相性の良い日本酒を探っていきましょう。

時計回りに数の子、黒豆、叩きごぼう
数の子:何でも大丈夫だけど香り系はNG
数の子は、かなり守備範囲が広いです。お酒と数の子の旨味同士が増幅し合って、相乗効果で美味しさがマシマシになるのです。
特に、しっかりとした味わいのお酒であれば、強度的にもちょうど釣り合う感じになります。古酒のような熟成感のあるタイプも案外面白いですね。古酒感が加わることで、新しい味わいが生まれる感覚がありました。
ただし、魚卵全般に言えることですが、フルーティーなお酒は非常に相性が悪いです。魚臭さが強調されやすく、さらに甘みが強いと、どうにも気持ちの悪い味わいに。ここは意識して避けましょう。
叩きごぼう:甘酸系か朴訥なお酒を
叩きごぼうの味付けは、砂糖・酢・醤油・ごまがメインです。土臭さとボタニカルな香り、そして甘味と酸味と塩味が絶妙なバランスで同居しています。
まずは同じような味わいの甘酸っぱいタイプを。これはもう分かりやすく同調してくれます。また、土の香りやボタニカルなニュアンスを持った地味な朴訥タイプも相性良好です。
いずれにしろ、しっかりとした味わいのお酒のほうが断然合います。軽すぎるお酒だと、ごぼうの個性に負けてしまうのです。
また、華やかでフルーティーな香りを持つものも今ひとつ。ごぼうの土臭さとフルーティーさが喧嘩して馴染んでくれません。
黒豆:甘さには甘さで
おせちの中でも特に甘い惣菜。甘さには甘さで対抗する。これは揺るがぬセオリーです。というわけで、貴醸酒をはじめとする甘口酒は間違いないです。
とはいえ、今回検証に使用した商品(フジッコ 丹波黒 黒豆)は比較的甘さが控えめだったこともあり、思いのほか幅広いタイプと合わせられました。
甘口でなくとも旨味のしっかりしたタイプなら悪くありません。若干お酒の甘味がマスキングされますが、そこまで甘くない黒豆であれば扱いやすい組み合わせです。
意外だったのは、甘酸っぱいタイプも楽しいという事実。甘味が同調した上に、爽やかな酸味が加わることで、黒豆がまるでフルーツのようなデザートに変身します。これは面白い体験でした。
なお、淡麗で軽いお酒は釣り合いが取れません。ドライなお酒も黒豆の甘さとチグハグになるため、中途半端な印象になりがちです。

検証中の様子
ここからは各料理とベストマッチだったお酒と、全般的に合わせられる万能選手をご紹介していきます。
おせちに合う日本酒4選
【数の子】会津娘 長期熟成酒 本醸造 花佐久良 1988
会津娘の古酒です。味付け数の子に対しては、フルーティ系さえ忌避すればだいたい合うので、あえてやや変化球のこちらを選んでみました。
これは非常に面白かったですね。魚卵に古酒感が加わることで不思議な効果が現れるんです。言葉では表現しがたい。試してもらう以外ないです。
この古酒には適度な甘味があるのもポイント。叩きごぼうとも悪くない相性を見せ、黒豆ともそれなりに合う。古酒という選択肢も、おせちには有効だと感じました。
【叩きごぼう】BLACK SWAN 無濾過生原酒
叩きごぼうにはこちら。京都の白杉酒造が造る黒麹のお酒。酸味の強さが特徴的です。
お酒自体にパンチがあり、甘味と酸味のバランスが絶妙。叩きごぼうのさまざまな要素と共通する部分が多く、同調する感覚が気持ちいい組み合わせです。土臭さやボタニカルな香りとの相性も抜群で、ごぼうの個性をしっかり受け止めてくれます。
ちなみに数の子や黒豆とも悪くない相性を見せてくれました。
【黒豆】BLACK SWAN II 無濾過原酒
先ほどの黒麹仕込みの純米酒「BLACK SWAN」の留めを、さらに「BLACK SWAN」で仕込んだいわゆる貴醸酒です。予想通りとはいえ、やはり甘味の強い貴醸酒と黒豆はめちゃくちゃ合います。甘味の強さがちょうど同調して、酸味が加わることで面白いデザート感が出るんですよ。これは本当に楽しい。
おせちには黒豆以外にも、栗きんとんや伊達巻など甘い惣菜が多いので、貴醸酒を1本用意しておくのは非常に有効な戦略ですね。叩きごぼうとも悪くない相性でした。
ただし、数の子だけは甘すぎて微妙なので、その点は注意が必要です。
【万能】会津娘 特別本醸造
こちらは万能選手。すべての料理に対して高スコアを記録しました。優しいながらも、しっかりとした味わいがあり、どの料理とも喧嘩しない懐の深さがあります。価格も手頃なので、正月の食卓に気軽に用意できるのも嬉しいポイント。
そもそも、会津娘のリーズナブルなクラスはごぼうなどの根菜と異常に相性がいいんです。当然、数の子に対しても全く違和感なし。そして黒豆もお酒の甘味やニュアンスと不思議と合う。
迷ったらこれ、という選択肢として非常に優秀です。
お燗にしても悪くありませんが、今回の組み合わせでは常温の方が全体的に良好でした。ただし、黒豆だけはお燗の方が合うかもしれません。
まとめ
なお、 前回のお雑煮編では、「軽い普通酒・本醸造酒がいい」と書きました。しかし、おせちに対しては真逆で、しっかりした味わいのお酒をおすすめします。
お雑煮は基本的に一品料理で、出汁ベースのやさしい味わい。 口の中の情報量が少ないからこそ、軽い酒がすっと入り、長時間飲んでも疲れません。
一方で、おせちは甘い、旨い、魚臭い、土っぽい、味濃いめとインパクト強めのものが多いですよね。ここで軽いお酒を持ってくると、おおむねお酒が負けます。
そんなわけで、お正月には軽快な普通酒・本醸造酒と、貴醸酒、そして古酒の3種類を用意するのがベストという結論になりました!
皆さま良いお年を。






































