今回と次回で年末特別企画として「正月料理に合う日本酒」を特集します。
第一回は「お雑煮」です。地域や家庭によって味付けが大きく変わるものの、基本は出汁の旨味をベースにした、やさしい味わいの椀物です。今回は、お雑煮の性質を踏まえながら、相性の良い日本酒を選ぶポイントをご紹介します。
正月こそ日常酒!
お正月といえば、“上等なお酒を開ける日”という方も多いのではないでしょうか。
ただ、元日などは日の高いうちから長時間にわたって飲み続けることも珍しくありません。そんな時にお高い大吟醸だと、ちょっと飲み疲れてしまうことも。
そこで私は提唱したい。「正月こそ普通酒・本醸造酒でゆるく飲むべき」 と!
ポイント①ボディは軽めを選ぶ
さて本題。お雑煮はおおむね淡い味わいなので、軽めのお酒がすんなり馴染みます。まさに普通酒や本醸造酒のような、落ち着いた酒質がもっとも合わせやすいのです。
逆に、旨味たっぷりの濃醇タイプだと、料理よりお酒が前に出てしまいます。まずはボディの軽いものを選びましょう。
ポイント②酸味の強いお酒は避ける
お雑煮に酸味の要素はほとんどありません。そのため、酸味が強いタイプの日本酒を合わせると、料理の中でお酒だけが浮いてしまいます。
最近増えている甘酸っぱいタイプも例外ではありません。酸味は穏やかで、落ち着いたタイプのほうが全体の調和は取りやすくなります。
ポイント③フルーティ系の吟醸香は相性が悪い
吟醸系の華やかな香りは、お雑煮の出汁と方向性がズレがち。お餅の米の旨味とも馴染まないことが多く、香りだけが突出してしまうのです。
香り控えめで、落ち着いた味わいの火入れ酒のほうが、お餅・出汁・具材に自然と寄り添ってくれます。
ポイント④万能なのは普通酒・本醸造酒
お雑煮は地域や家庭による味付けの差が非常に大きい料理です。このため、ここで甘辛やボディの強さなど細かい指定をしたところであまり意味はありません。
そこで、大きく外れない汎用性を求めたら、やっぱり普通酒や本醸造酒に落ち着くのです。
そもそも晩酌用として造られる日常酒は、さまざまな料理に寄り添い、飽きずに量を飲めるよう設計されています。その強みは、当然お雑煮との相性においても存分に発揮されます。

検証中の様子
お雑煮に合う日本酒3選
不老泉 上撰
不老泉の普通酒です。全く飲み飽きない素晴らしい一本。
魚との相性がめっぽう良いお酒ですが、魚系の出汁とももちろん好相性。香りは控えめで落ち着いた軽めのボディが、野菜や出汁と調和し、中盤での米の旨味がお餅とリンクします。
できればお燗推奨です。
福司 普通酒
五色彩雲の福司酒造による地元向け普通酒。
柔らかさの中にキリッとした表情もあります。冷酒・常温だと若干のアルコール感がありますが、お燗にすればそれもなくなり、隠れていた甘味を感じるように。
野菜と鶏の旨味がよく出た汁とよく合います。
会津娘 純米大吟醸酒 吉川町産山田錦
品格を感じる、まっすぐな味わい。純粋に味わいの質が高く、安くはない値段ですが、確実にそれに見合った価値はあります。
「あら?普通酒と本醸造酒推しじゃなかったの?」とお思いの読者の方も多いでしょうが、これがお雑煮と合ってしまったのだから仕方ないのです。
大吟醸とはいえ、それほど香りは強くなく、酸味も抑えめで軽快なのが相性の良さの秘訣でしょう。
なお、同じスペックで東条町産山田錦を使ったものもありますが、ペアリングにおいては、ほとんど差はありません。
まとめ
お雑煮に合わせるお酒のポイントは、軽めで、酸味や強い香りがないということになります。このため、火入れの普通酒、または本醸造酒あたりがもっとも扱いやすく、飲み疲れもしないのでおすすめです。
どうしても大吟醸系のフルーティなものしかないなら、柚子皮や柚子胡椒をそえることでいくらか相性は近づきますのでお試しください。






































