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「米騒動」でもブレない酒造り。濃くて切れるのが不老泉の真髄【酒蔵だより:上原酒造】

「米騒動」でもブレない酒造り。濃くて切れるのが不老泉の真髄【酒蔵だより:上原酒造】

6月の酒蔵だよりでは、昨年度に訪れた変化についてお知らせしてくれた「不老泉」を醸す上原酒造(滋賀県)。いよいよ今期の造りもはじまり、慌ただしい日々が始まっています。

今回の酒蔵だよりでは、蔵元の上原績(いさお)さんに、酒造りの様子や「米騒動」の影響、今年の造りに向けた意気込みについて語っていただきました。

今年の酒造り期間に突入!蔵人チームの様子は?

今年も10月27日に蔵入りを迎え、11月1日の初洗いから本格的な酒造りが始まりました。昨年と同様の杜氏・蔵人のチームで酒造りに臨んでいることもあり、良い雰囲気で取り組むことができています。

昨年から横坂杜氏が年間雇用となり、造りのない期間にも機械類やタンクなど蔵の中をよく見てくれていること、それぞれの蔵人が杜氏の指示のもと、やるべきことを理解していることもあって、酒造りにもスムーズに入れているのだと思います。

12月以降は仕込も最盛期に入ってきます。そこからさらに大変になると思いますが、乗り越えてくれるでしょう。

酷暑と「令和の米騒動」の厳しい影響

今年の米も、ここ数年の例に漏れず酷暑による高温障害のため割れやすくなっています。こうなると無効精米(※)も増えますし、洗米中の割れも発生しやすくなってしまいます。割れた米が増えると全体では吸水が早く見えるのですが、割れていないお米はそれほど水を吸っておらず、このまま蒸すと硬い蒸米となってしまいますので、状態を見極めるのが難しい造りとなっています。

(※)無効精米(歩合):精米では米の外側を磨くが、米の状態や精米方法等により、砕けてしまう米が生じる。こうした砕米が増えると、精米前後で重量が減っていても、実際には外側が十分に磨けていない、という状態になりやすくなる。粒単位での重量比を真精米歩合と呼び、全体重量比での見掛け精米歩合との差を無効精米歩合と呼ぶ。

そもそも今期は、想定以上に調達できる酒米が少なかったです。価格が高騰するなか、契約農家さんもどうしても食米の栽培を優先されるので、山田錦も昨年より60俵も少なくなってしまいました。調達できる先を探しているのですが、なかなか厳しいのが現状です。

ほかにも米の入荷量が確定せず、今でもまだ、しっかりとした今年の仕込計画が立てられない状態です。こんな状態では新しい取り組みを、とも言っていられず、むしろアイテム数を徐々にしぼっているような状況です。

やることは変わらない。「不老泉らしさ」を追求し続ける

昨年の初呑み切りでは「酒質が弱い」という指摘を多くいただいたことを受け、杜氏とも話し合い、2024醸造年度の造りに活かしました。その結果、今年8月に実施した初吞み切りでは、同様の指摘はほとんどありませんでした。

今年のお酒の出来はこれからですが、やっていくことは今までもこれからもずっと変わりません。ただ、不老泉らしい酒を造ることです。「不老泉のお酒はどんな味?」と尋ねられたら、「不老泉は濃くて切れるお酒です」と自信をもって答えられるようにやっていきたいと思います。

今でも思い出すのは、私がまだ若くて駆け出しのころ、フルーティなお酒や低アルコールのお酒、熟成酒、辛口、濃醇酒など、いろいろなタイプに手を出していた時期がありました。しかし、それらのお酒についてお客様に話していたところ、「それで、あなたのところのお酒はどんなお酒なの?」と聞かれ、うまく答えられなかったのです。

初呑み切りの話に戻ると、今でも山根前杜氏時代の酒質をもとにコメントをくださる方が意外に多く今更ながらその存在の大きさを実感しています。山根杜氏は弊社が現在のように濃醇な参年熟成赤ラベル等の商品を出し続けているきっかけをつくり、そしてそれを広げていく礎を作ってくれた、最大の恩人です。

「酵母を添加するのは、本当の山廃やない」
「10人中2、3人しか、この(本当の山廃の)酒を好いてくれないけど、こんな酒をやりますか?」

この言葉を受け入れて、不老泉が始まりました。山根杜氏が弊社に来ていなかったら今どうなっていたかは想像がつきません。

私も東京で大手業務用酒販でサラリーマン生活をしているときは、安価な経済酒がよく売れているのを目の当たりにしていました。サラリーマンを辞めて蔵に帰るときも、帰ってからは経済酒を造っていればいいと考えていたところ、山根杜氏の山廃の新酒を飲んで、その考えが一気に覆されました。

しかし、当時は淡麗辛口が全盛の時代そんな山廃の濃いお酒って大丈夫なのかな、と思いながら造ったのですが………………やっぱり売れない。完全に異端児扱い。しかし、全く売れないわけじゃない。流行の淡麗辛口酒のなかには酒質が弱く、どうしても飲み飽きしてしまうものも多かったのでしょう。不老泉を買ってくれるのは、そうではないお酒を探しているいわゆる「マニア」。そんなお客様に、徐々に広めていただいたのが今の不老泉の原型です。

今年の酒造りがいつまで続くかはまだ決まっていませんが、今のところ3月中旬に甑倒し、4月中旬あたりに皆造となりそうです。今年の米の値上がりは想像をはるかにこえるものでしたが、お金勘定は私の仕事。蔵人たちにはそんなことを気にせず、いいお酒を造ってもらいたいと思っています。

 

…………それにしても、昨年と比べて米の値段が約1.8〜2倍。1年で原料がこんなに上がる業界って聞いたことある??とも感じてしまいます。値上がり分すべてを価格に転嫁してしまえば、一般消費者や飲食店にとって影響が大きすぎるし、そうはいっても、頑張って販売しても利益が取れないといったことは避けたい。価格競争も激しくなるでしょうから、値上げをするだけではこの先明るくない。何をしたらいいのか、考えていかなければならないですが、やるしかないですね……。

 

【酒蔵だより:上原酒造】

【不老泉】上原酒造(滋賀県)のお酒一覧はこちら

上原酒造さん

上原酒造

上原酒造の日本酒は「旨口芳醇」が代名詞。 中でもフラグシップ銘柄である「不老泉」はSAKE Street店主が日本酒を好きになるキッカケとなった銘柄でもあります。 不老泉を造る上原酒造の最大の特徴は、自然の力を最大限活かした酒造り。「山廃仕込み」や「蔵付き天然酵母」にこだわり、また全国で6蔵ほどしか行っていない「木槽天秤しぼり」を実践。独特の製法により、濃淳でありながら雑味のなくキレが良い唯一無二の酒質を生み出し、日本全国に強いファンを獲得しています。

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