昨年2025年に創業130周年を迎えた「飛鸞」醸造元の長崎県・森酒造場。その進化は止まるところを知らず、2017年に現在五代目蔵元杜氏を務める森雄太郎さんが蔵に戻ってから、生酛造りや蔵付き酵母の使用など、新たな挑戦を続けてきました。
今回の酒蔵だよりでは、五代目蔵元杜氏の森雄太郎さんが、これまでの歩みとこれからの展望を綴ってくれました。
守り抜くために、変わり続ける

森酒造場は2025年に創業130周年を迎えましたが、設備やブランド、そして造るお酒のタイプに至るまで、昔と今の姿を比べると大きく違う部分がいくつもあります。正直にお話しすると、僕が蔵に戻ってきてからは「すべて」と言っても過言ではないほど、あらゆる部分を抜本的に変えてきました。以前は「普通酒」が中心でしたが、現在は日本酒に馴染みのない若い世代の方にも親しみやすい酒質へとシフトし、ラインナップも20種類ほどに増えています。
しかし、それはこの蔵を変わらず守り抜きたいからに他なりません。時代の変化に取り残されれば、蔵の存続そのものが危ぶまれます。130年続くこの大切な場所を未来へ残すためには、過去に固執せず、自らが変化し続けることが不可欠だと考え、改革を断行してきました。
現在は、昨今の環境変化、特に米価高騰の影響を大きく受けています。当社では原料の半分以上に食用米(一般米)を使用しているため、市場価格の高騰により、場合によっては酒造好適米よりもコストが割高になる逆転現象すら起きています。価格改定せざるを得ない場面もありますが、単なる値上げで終わらせず、「この価格なら安い」と思っていただけるよう、これまで以上の価値と感動をお客様に還元していきたいと考えています。
目指すのは「トップブランド」

もちろん嬉しい変化もたくさんあります。蔵開きのために平戸まで足を運んでくれる人が年々増え、その範囲も海外にまで広がるなど、ブランドの認知度が着実に高まっていることを肌で感じています。
「若手の夜明け」のような都市部のイベントでは、立ち上げ当初に比べれば認知してもらえるようになったものの、まだ私たちの酒を知らない人も多く、力不足を痛感する場面も少なくありません。それでも、イベントで試飲してくださった人からいただく「美味しい!」という言葉や笑顔が何よりの励みになっています。知名度の低さは、まだまだ伸び代がある証拠と捉え、ポジティブに挑戦を続けていきたいです。
ブランド立ち上げ当初から、目指しているのは一貫して「トップブランド」です。150周年を迎える頃には、今よりも圧倒的に多くの方から愛され、信頼されるブランドとして「飛鸞」を確立させたいと考えています。そのために何よりも大切なのは、お客様に「美味しい」と思い続けていただけるよう品質を極め、「飛鸞らしさ」という個性を磨き続けることです。
酒質を極め、圧倒的な美味しさを追求することは大前提ですが、その上で、酒造りを軸に平戸の農業(米作り)を推進し、日本の原風景とも言える美しい景観を守っていきたい。そうした環境整備も含め、平戸へ足を運んでもらうための施策を一つひとつ実現し、「酒造りから広がる地域の未来」を作っていきたいと思っています。
実現のためには、人材育成と設備投資が不可欠なので、事業規模の拡大に合わせて積極的に取り組んでいくつもりです。 また、今も昔も、スタッフや地域の方々に支えられてこその森酒造場です。これからは会社として、支えてくださる方々にしっかりとお返しができるよう、失敗を恐れず、試行錯誤のスピードを上げて挑んでいきます。
新たな伝統の礎となるお酒「HIRAN 神楽」が発売開始
今月、新しいお酒の発売が始まります。定番酒の「HIRAN にこまる」とはテイストの違う、個性的で新しく、次世代に伝えていきたい飛鸞です。国の重要無形民俗文化財である「平戸神楽」のように伝統的に長く嗜んでもらえるお酒になるよう「HIRAN 神楽」と名付けました。
これまであまり使用してこなかった白麹を使っており、クエン酸の爽やかな酸味が特徴です。洋食や中華料理にある濃い味付けや酸味の効いた料理味にも寄り添えるお酒に仕上がりました。和食に限らず、ぜひいろいろな料理に合わせて楽しんでいただければ幸いです。
【酒蔵だより:森酒造場】
2023年・夏「飛鸞の梅酒、奈良漬、新商品をレポート」
2024年・春「蔵開きと夏酒第一弾!」
2025年・春「平戸の風土を表現。蔵付き酵母を通じて目指すこととは」
2025年・秋「試練を乗り越え、財産となった一年を振り返る」
2026年・冬「創業130周年「守るために、すべてを変えた」。飛鸞が挑戦を続ける理由」






































