「わかむすめ」を醸す山口県・新谷酒造では、9月から2025醸造年度の酒造りが始まりました。今年は酒米「雄町」を使った新しい商品も計画されており、ファンにとってはリリースが待ち遠しい限りです。
近年、お米の価格高騰や高温障害で心配される日本酒造り。今回は、わかむすめのお米事情について、杜氏を務める新谷文子さんに綴っていただきました。
2025年度の醸造がスタート!
新谷酒造では、9月6日から2025醸造年度の酒造りを開始しました。2年前までは完全なる四季醸造でしたが、2023年からは7、8月仕込みを休んで9月から醸造をスタートしています。
今シーズンは蔵の再建移築を目指して増石予定です。7年前に蔵の梁が損傷し、そこで仕込みができなくなってから、仮設の仕込み蔵でなんとか酒造りを続けてきました。
蔵の移築は社員みんなの夢です。今の不便な状況に我慢を重ねて頑張っているみんなの想いを無にしたくない。「酒造りは町づくり」という想いのもと、新たな蔵で次世代に繋げる大事な一歩を踏み出したい。そんな想いから、再建は必ずやり遂げたいと思っています。
わかむすめに使われるお米って?
新谷酒造で使っているお米は、
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・うるち米
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・八反錦
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・岡山県産雄町
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・山口県産山田錦
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・西都の雫(さいとのしずく)
の5種類です。すべて、山口県を中心に、中国地方で育てられたお米を使っています。
それぞれのお米に特徴があり、造りもかなり違ってきます。
例えば、初夏の「わかむすめ 萌木」に使われている八反錦は、キレイでさっぱりとしたキレの良い酒質に仕上がりやすいお米です。この良さを生かしつつ、わかむすめらしいふくよかさも出せるよう工夫しています。
春先にリリースされる「わかむすめ 薄花桜」には、山口県が開発したオリジナル酒米・西都の雫を使っています。幻の米といわれる「穀良都(こくりょうみやこ)」と、山田錦を親に持つ「西海222号」を交配させて生まれました。山田錦よりもすっきりとしてシャープな印象のお酒になります。
「わかむすめ 燕子花」のみ、地元の農家さんと契約栽培した山田錦を使っています。このお酒ができたのは、最高に良い山田錦を栽培していただく農家さんに出会えたから。世界の日本酒コンテストでも高評価をいただいているお酒です。
→【酒蔵だより:新谷酒造】IWC&Kura Masterで受賞!世界に羽ばたく「わかむすめ」
ピンチから誕生した雄町・純米大吟醸
お米の価格高騰が話題になっていますが、私たちが使うお米も例に漏れません。高くなるにしても、値上がり幅がすごくて追いつけないような状態です。お米が2倍の価格になったからといって、お酒が2倍の価格で売れるわけではないので、かなり苦しいところです……。
さらに、高温障害の影響か、お米が硬くて溶けにくいという問題も。まさに踏んだり蹴ったりです。
そんな中、今年は新しい商品を出すことが決定しました。雄町を使った純米大吟醸で、まもなくリリースされる予定です。
これまで、新谷酒造では60%精米の雄町を使ったお酒を「わかむすめ 牡丹」として販売してきました。雄町はわかむすめの得意なお米で、今年で4年連続「雄町サミット」にて優等賞をいただきました。
これだけ評価されるお酒なのだから、50%まで削って純米大吟醸にしてみたらどうなるんだろう?そんな好奇心に加えて、お米が硬くて溶けづらいというピンチを踏まえて、「どうせ溶けないなら磨いてみよう!」と思い立ったのが今回の新商品です。
名前は、「わかむすめ 紅の匂(くれないのにおい)」。
「匂い」とはグラデーションの意味で、「紅の匂」とは、十二単の赤のグラデーションのこと。宮中ではおめでたい時に多く着用され、皇后陛下が平成即位礼の際にもご着用されたとか。
これから新春に向けてピッタリだと思い、この名前にしました。ぜひ楽しみにお待ちください!
わかむすめファンのみなさまへ
次世代へ繋ぐ大事な一歩を踏み出すために、また社員それぞれの夢の実現のため、「酒造りは町づくり」という想いを胸に、今シーズンも全社一丸となって取り組んで参ります。全身全霊で醸す酒「わかむすめ」を、引き続き応援よろしくお願いいたします‼︎
【酒蔵だより:新谷酒造】
- 2023年秋:「季節の移ろいを表現する『わかむすめ』今期の仕上がりは?」
- 2024年夏:「IWC&Kura Masterで受賞!世界に羽ばたく『わかむすめ』」
- 2025年春:「看護師から杜氏へ。酒造りの道を進むこれまでとこれから」
- 2025年秋:「新しい酒で挑む、夢を叶える2025BYの酒造り」





































