専門店も多く、安定した人気の馬肉。癖がなくヘルシーであっさりしているので、牛肉や豚肉よりも好きという人も。そして馬肉と言えばやっぱり生ですよね!というわけで、今回は馬刺しと日本酒のペアリングを検証します。
馬肉の味は部位によっても変わりますが、とりあえずはあまり難しく考えず、入手しやすい赤身肉で試していきましょう。
タレについて
馬刺しにつける醤油ですが、これは絶対に甘口醤油をおすすめします。関東の人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、九州では当たり前のように使われています。
で、これが馬刺しにつけると本当に美味い。筆者自身も以前は普通の醤油で食べていましたが、甘口醤油との相性の良さを知ってしまったらもう戻れません。今までの馬刺しは何だったんだ…と思ってしまうレベル。
検証中の様子
なお、薬味はおろし生姜かおろしニンニクがポピュラーです。生姜はすっきりさせたい場合に、ニンニクはコクと深みが足されます。どちらでもお好みで。
合わせる日本酒のタイプ
馬刺しに合わせる日本酒を選ぶうえで最も大切な要素は、先ほど触れた「醤油の甘味」です。赤身の馬刺し自体はかなりあっさりしており、明確な味はありません。このため、合わせる日本酒の傾向はタレ次第と言っても過言ではないでしょう。
甘味に対しては甘味を当てていくのがセオリーです。ドライな辛口系の爽酒などより、しっかり甘味のあるタイプが断然合います。逆に甘味が控えめな日本酒に馬肉を合わせたいのであれば、タレを普通の醤油に変えるか、塩でいただきましょう。
香りに関しては控えめなほうが無難に合いますが、フルーティなタイプでも案外悪くありません。馬肉にはほんのり華やかな香りが潜んでいますので、こういった日本酒でも相性がいいのです。薬味をわさびにすると爽やかさが足され、さらに両者の距離が縮まりますよ。
ボディの太さやアルコール度数は不問です。もちろん極端なものは難しいですが、比較的軽いタイプでもどっしりしたタイプでも不思議と同調してくれます。ただし、いずれの場合もある程度の甘味は必須です。
肉と日本酒のペアリングにおいては、燗で脂を溶かして馴染みを良くするパターンが多いですが、馬肉に関しては常温でも冷酒でもOK。
なぜなら、馬肉の脂って融点が低いんですよ。牛脂の融点は40℃〜50℃であるのに対し、馬肉は30℃〜40℃なので、人の体温でも充分溶けるのです。
そんなわけで、今回はかなりゆる~い条件になりましたが、ここからは実際に日本酒を合わせた結果をお伝えしていきます。
大倉 特別純米 S.yedo 無濾過生原酒
最古の日本酒酵母のひとつと言われれるS.yedo(江戸酵母)を使用したチャレンジ酒。チャレンジと言えど、ここまでの完成度に仕上げてくるのは、さすが大倉です。
ほんのりした糠の香りとフルーティさが混在していて面白い雰囲気です。 日本酒度-30で甘味はかなり強いですが、これが甘口醤油とピッタリ調和。もはや酒自体がタレになるイメージです。そして後半は酒のほどよい酸味が馬肉の深いところにあるミネラル感と呼応します。
楽の世 山廃純米 無濾過生原酒
濃醇旨口の極み。全体的に味の強い酒なので、あっさりした馬肉とは難しいかなと思いきや、これもやはり甘口醤油のおかげで互いが手を繋いでくれます。甘味さえしっかりあればボディの強さは不問であることがよく分かります。
たっぷりしたボリューム感が脂肪のコクと同調するため、この酒であればサシが入った脂多めの馬肉を選ぶとベターです。
DOBUROKU ホップどぶろく
大人気の「稲とアガベ」より、ホップを使用した逸品。 とろりとしたテクスチャーがとろける馬の脂と完全融合。この方向からのアプローチも面白いですね。もちろん、どぶろくということで甘味もそれなりにあるため、合わない理由がありません。
この他でも、どぶろく、にごりであればかなり幅広く合わせられます。発泡系であれば燗にするか開栓後数日置いて、あえて炭酸を飛ばしてから合わせるといいですよ。
奥琵琶湖
このペアリング記事シリーズでは頻出のハイレベル普通酒。
こちらも口当たりの柔らかさがポイントです。「楽の世」とは真逆で、ボディはかなり軽いものの、甘味がしっかりとあるので、やはりその部分で間違いなくリンクしてくれます。
軽快な分、霜降りよりも脂控えめの赤身がおすすめ。さらに、薬味を生姜にして合わせると完璧です。
まとめ
しつこいようですが、とにかく重要なのは甘口醤油を使うこと。そして、ペアリングとしては、そこにフォーカスした甘味の強い日本酒を合わせるだけ。なんて簡単なんでしょう。
今回は検証しませんでしたが、馬刺しは塩+ゴマ油でいただくのも美味しいですよ。この場合は甘口にこだわらず、もっと幅広く合わせられると思いますので、気分に合わせて楽しみましょう!