飲み屋でたまに見かける冷やしトマト。単なるサラダだと思ってませんか?実はこれが日本酒とよく合うんですよ。ペアリングせずにあっさり食べちゃうのはもったいない!
もちろん、どんな日本酒でもいいわけではなく、合うものと合わないものがありますので、今回はそのあたりを深掘りしていきます。
塩でうま味をブーストしよう
日本酒と合わせる場合、トマトには塩をつけて食べることを強く推奨します。プレーンのまま食すのに比べて、うま味がぐぐぐっと前に出てくるのです。
通常、うま味というものはそれ単体では味を感じにくいのですが、塩味が加わることで際立ち、全体の味わいが濃厚になります。これによって格段に日本酒と合わせやすくなります。
うま味のしっかりした酒を選ぶ
さて、トマトと言えば、「果物か野菜か」なんて論争になりがちですよね。日本では一応野菜扱いですが、フルーツに分類されている国もあるそうです。そんなトマトですから、真っ先に思いつくのは同じくフルーティなタイプのお酒。
これ、確かに合います。日本酒のフルーティな香り自体はトマトととても相性がいいです。ただ、モノによってはあまりピンとこない場合もあります。
実は酒のボディの太さや味わいの濃さがペアリングにかなり影響するんですね。トマトにはグルタミン酸が豊富に含まれており、思いのほかうま味がしっかりしているのです。特に、先述したように塩を加えるとそれが顕著になります。
そんなわけで、ボディが軽かったり、酒質がクリアで淡麗なタイプだと、イマイチ物足りないのです。逆に言えば、ボディがしっかりしていて、ある程度うま味が強い酒であれば、ほぼ合うと言っていいでしょう。
酸味も意識してみよう
ちょっと違う観点からは、酸味もポイントになります。これは単純にトマトの酸と日本酒の酸を重ねる方向ですね。つまり、酸味が強い酒は同調させやすいということ。
実はトマトの意外な食べ方として、酢をかけるのもアリです。強いうま味のおかげなのか、不思議と酢の尖った酸味はそれほど感じず、むしろ甘味が目立ってきます。
酢は多めにかけても問題ないですよ。酸が強くてジューシーな日本酒であれば、味わいが合致してわかりやすく同調してくれます。
辨天娘 純米 強力 生原酒 槽搾り 荒走り 2022年醸造
5月下旬からの新規取り扱い銘柄です。辨天娘と言えば熟成と燗酒がトレードマークですが、実は生や新酒も素晴らしく美味いのです。
こちらの荒走りは丸い口当たりで酸は弱め、米の味を強く感じるゴツいうま味が辨天娘らしさを象徴しています。このしっかりしたうま味で塩味のトマトをぐいっと引き寄せます。
生酒ですが熱燗がおすすめ!
辨天娘 純米吟醸 山田錦 2018年醸造
辨天娘からもう一本。こちらはフラッグシップで典型的な「らしさ」がありますね。もううま味が!うま味が!
ほぼ出し汁みたいなもんなので、当然塩をかけたトマトとめちゃくちゃ合います。
ごま油を少し垂らすのもいいですよ。熟成酒の焦げっぽいソトロン香と手をつないでくれます。
温度帯はもちろんお燗で。高めに55~60℃くらいまで上げても全く崩れません。
CHIMERA 特別純米酒
3種の麹菌と酵母を使った、ジューシーな酸に特徴のあるお酒。
ほどよい甘み、強めの酸味とうま味。トマトと味の共通点が非常に多いです。
何もつけずにそのままだと素直に全体が同調します。塩をつけるとうま味にフォーカスしたペアリングに、そして酢をつけると酒の甘味が増します。このあたりの変化も面白いですよ。
シン・ツチダ 活性にごり生
活性なので当然発泡感がありつつも、にごりらしい柔らかい口当たりのあとに、しっかりとしたうま味がやってきます。アフターはミネラル感とシャープささえ感じる不思議なバランス。そして精米歩合は90%とな。うーん、面白い。
口にしてから飲みこむまでの間、時間差で甘み、酸味、うま味、苦み、渋みとそれぞれの味覚が主張しながら、様々なアプローチでトマトとリンクするので楽しいったらありゃしない!お燗も最高です。
舞美人 山廃純米 無濾過生原酒 sanQ
強烈な酸味でお馴染み、個性爆発の舞美人sanQ。
何もつけないプレーンのトマトでは、さすがに酒の主張が強すぎるかな。
ただ、CHIMERAと同様に、塩をかけるとうま味の部分で同調し、酢をつけると強い酸味が釣り合うようになります。同調性で言えば酢の方がより馴染みがいいですね。
で、面白いのはここから。塩と酢の両方をトマトにかけ、そこにごま油を少したらすんです。すると、この酒独特の糠っぽい香りさえも仲良しになってくれるので、トリプルで凄いことになります。これは試す価値ありですよ。
神蔵 七曜 純米大吟醸 無濾過生原酒
フルーティ系も一つくらい紹介しておきたい、といいつつも、香りは比較的穏やかです。
トマトはプレーンのままだと、フルーツとしての側面を存分に活かしたペアリングになります。
塩を少しかけても悪くないですね。プレーンと甲乙つけがたし。純米大吟醸ながら案外うま味の強い酒なので、そこが全体の相性の良さを支えているのでしょう。
まとめ
今回は6種類と多めの紹介になりましたが、それだけトマトのポテンシャルが大きいということです。
しつこいですが、塩を忘れずに!かけるのとかけないのとでは全く違うペアリングになりますので。
なお、大倉 山廃純米 無濾過生原酒 陽の光も捨てがたかったですが、CHIMERAと似たペアリングだったので今回は見送りました。でもこれもかなりおすすめですよ!