濃厚なチーズとあっさりとした鱈を絶妙なバランスで組み合わせた定番おつまみ、チータラ(チーズ鱈)。「なとり」の商標登録ですが、類似商品もたくさん販売されてますね。
ちなみに、チーズ鱈とチータラの違いですが、チーズ鱈では皮部分の原材料が鱈のみであるのに対し、チータラではホッケなどの鱈以外の魚肉も使用されているそうです。正直、味の差はわかりません!なのでペアリングに際してはあまり気にしなくても大丈夫です。
(以下、チータラに統一して表記します。)
チータラに合う日本酒を考える
チータラの全体の味わいにおいて、鱈の存在感はあまりありませんので、メインで考えるべきはチーズです。濃厚ながらクセがなく食べやすいプロセスチーズですので、合わせる日本酒の幅は広いと考えられます。
チーズに合わせる日本酒といえば真っ先に挙がるのは山廃・生酛系。チーズと酒に共通して含まれる乳酸のうま味が同調します。
しかし、山廃・生酛に多い濃醇なタイプには、チータラのチーズは負けてしまいます。逆に、淡麗なタイプもチーズに対してはバランスが悪いので、濃すぎず淡すぎず、ほどほどの濃さの酒を選びましょう。
温度帯は、燗だとチーズの油脂が溶けて口内で酒と融合しやすくなります。うま味の同調を狙うなら少し温めてみてもよいでしょう。
なお、冷酒がNGということではありません。口当たりは燗に劣りますが、冷酒ならではの良さもあります。意外に思われるかもしれませんが、フルーティで酸がジューシーなタイプと合わせるのも面白いのです。クリームチーズなどのあっさりしたチーズとフルーツの組み合わせを想像してもらうとイメージしやすいかもしれません。
避けたほうがいいタイプ
避けたほうがいいのは古酒です。ここは合うと思っていただけに予想外でした。古酒特有の紹興酒様の香りがチーズとぶつかってしまうんです。
熟成の軽いものであればそこまで問題ありませんが、やはり相性が良くない場合があるので、避けておいたほうが無難でしょう。
不老泉 山廃特別純米 原酒 参年熟成
かなりコシがしっかりした酒なので、チータラが負けそうなイメージですが、案外そんなことはなく、むしろ米の風味がチーズとよく合う印象でした。うま味の同調という点では完璧です。
50度くらいの熱燗で、チーズを口の中で溶かしてとろっとしたテクスチャーを楽しみつつ飲むのが正解ですね。
Beau Michelle(ボー・ミッシェル)
チーズのうま味に酒の酸味が補完されて、面白い味わいになります。冷酒のイメージが強い酒ですが、お燗にしてもチーズと馴染んで意外と楽しめますよ。
舞美人 山廃純米 ひやおろし 生詰原酒
酸っぱいお酒の代表格といえばこちら。変態酒(褒めてます)「舞美人」ですね。
ひやおろしなので若干酸に丸みはありますが、いつもの酸っぱいスタンスは健在です。これがまた不思議とチーズに合うんですね。酸っぱいと言っても乳酸がメインなので、うま味を内包しているんです。これが同調して、チーズと酒を繋いでくれるのかもしれません。
なお、期間限定のひやおろしじゃなくても、山廃純米のスペックであれば、ほぼ同系統の味わいで同じように楽しめますよ。
稲とアガベ DOBUROKU 水もと 01
こちらもまた酸が特徴的なお酒。注目したいのは、どぶろくならではのトロっとしたテクスチャーです。このクリーミーな口当たりがチーズと同調してくれます。
燗にすると硬さがとれて酸が丸くなり、米の風味が前面に出てきます。この状態のほうが、チーズの風味とはよりマッチしますね。
稲とアガベは、他のどぶろくでもチータラとよく合いますのでぜひお試しを。
大那 純米吟醸 東条産 山田錦 生酒
純米吟醸とありますが、50%精米なので大吟醸クラスです。とは言え立ち香はほんのりフルーティな程度で、奥ゆかしさすら感じます。甘みは穏やかで酸は比較的控えめ、うま味はほどほどですね。
この酸の穏やかさがチーズとの同調を促します。上記で紹介した酸味系のお酒はどちらかというと「補完」のペアリングであるのに対して、こちらは完全に寄り添って同調するタイプになります。
まとめ
濃醇タイプ・淡麗タイプ・古酒を避ければ、概ねどんな日本酒とも良く合います。
いろいろなタイプで試してみてください。
ところで、鱈の存在感はあまりないなんて書いちゃいましたが、実のところチーズの味が目立つだけで、ほんのりとした魚の風味と旨味はちゃんと存在しています。これが多くの日本酒との相性を近づける立役者になっていると思われます。あるとないとじゃ大違い!やっぱり、チータラは不朽の名作なのです。