2000年代に入ってから急速に普及した感のある豆乳鍋。今や、キムチ鍋や水炊きと肩を並べる人気の鍋になりました。今回はそんな豆乳鍋と日本酒の相性を探ります。
最初に白状してしまうと、今回は非っっ常に苦戦しました!次から次へと試飲するも、どれもピンとこない。というわけで、むしろ避けるべきタイプを列挙することで、逆に消去法で合うタイプを浮かび上がらせる作戦で記事を進めてまいります。
豆乳鍋のスープと具材について
豆乳をベースに使うという以外、これと言って決まりはありませんが、出汁には鶏ガラと昆布を使うレシピが多いようです。今回は再現性を考えて市販のストレート鍋つゆ(ミツカン 〆まで美味しい ごま豆乳鍋つゆ ストレート)を使用しました。比較的あっさりしたスープで、出汁の味わいがしっかり効いている商品です。
具材には白菜、エノキ、シイタケ、大根、人参、豚バラ肉をチョイス。鶏肉か豚肉かで迷ったんですが、寄せ鍋と水炊きですでに使用しており、バリエーションを出すために今回は豚肉にしました。
豆乳鍋にはどんなお酒が合うのか?
検証①にごり酒との相性
さて、ここにどんな日本酒を合わせるべきか。
真っ先に思いつくのは、汁の色やテクスチャーが近いにごり酒ですね。さっそく数種類試してみると、意外に合わない!
テクスチャーの部分では確かに合致するんですが、大抵はしっかりした味わいなのでスープの味わいを抑えつけてしまうのです。さらに、甘味も強めなにごりの場合は、酸味も強くしてバランスをとっていることがほとんどです。この酸味がスープとの同調を阻害するんですね。
極端な例ですが、飲むヨーグルトを想像してもらえるとイメージが伝わりやすいかもしれません。
鍋のペアリングの際は毎回のように書きますが、最大のポイントは出汁の味わいと酒の濃度を同調させることです。濃醇すぎてもダメだし、淡麗なのも違う。この点から考えると、うすにごりくらいでちょうど釣り合いがとれると思います(モノにもよりますが)。
検証②フルーティ系との相性
フルーティ系、いかにも合わなそうですよね。はい、ご想像どおり合いません。単体で飲むと心地よい吟醸香も、豆乳とはどこかフィットしません。
寄せ鍋などではタレにポン酢や柚子を使うことでバッチリ合わせられたのですが、豆乳ベースだとそれも叶わず。やはり、まったりとしたミルクっぽいスープとフルーツの香りは相性がいいとは言えません。
検証③火入れのどっしり系純米酒との相性
では、スープと同じくまったりした火入れの純米酒を柔らかくお燗にしたらどうでしょう?しかしこれもまた撃沈。この手のお酒の多くはどっしりと濃いんです。スープが完全に負けます。
ただ、落ち着いた米の風味とうま味の部分では豆乳スープと重なるものもあるので、一番可能性を感じる方向性ではありました。
ちなみに、熟成香が強い場合も豆乳の風味とぶつかってしまいます。
検証④消去法で導き出せる日本酒は?
ここまでを振り返ると、濃さのアンマッチ、フルーティな香り、酸味が同調を妨げる要因だということがわかってきました。
逆に言えば、ほどほどのボディ感で、落ち着いた香り、なおかつ酸味は控えめ。にごり(滓)はなくてもいいですが、あったほうがテクスチャーが合うのでベター。
このあたりを意識しながら選んだのが、以下の3本です!
豆乳鍋に合う日本酒3選
不老泉 上撰
大人の事情から、編集部に殿堂入りした酒は採用してくれるなときつく言われていたんですが、ついに禁を破ってしまいました。
だって、ボディの重さも、ふんわりした甘さも、ちょうどスープと同調するんだもの。ぬる燗で柔らかさが増して、豆乳のテクスチャーともさらに相性がよくなります。
金鼓 純米生原酒 うすにごり(店頭販売限定)
ややドライ、味わいも濃すぎず、しっかりとお米の風味を感じます。最後はビシっとキレていくので、豚バラの脂をすっきりさせてくれる効果も。
開けたての刺激的なフレッシュさも捨てがたいですが、同調性を求めるなら、2〜3日おいて落ち着いてからがおすすめです。お燗をすることでお米の風味が強くなり、口当たりはマイルドに。鍋と温度を合わせることで、口内で融和しやすくなります。
会津娘 純米酒
甘味はそこそこ、濃すぎず淡麗すぎず、落ち着きがあって目立たず寄り添ってくれる。派手さはないですが、このくらいがちょうどいい。
こう書くと昔ながらの素朴な日本酒を想像されるかもしれませんが、ちょっと違うんです。どこか上品で素性の良さを感じさせるんですね。この洗練された酒質は、やっぱり会津娘だなあと飲むたびに思います。
まとめ
いやあ、今回は難易度が高かった。いかにも和食という感じの豆乳鍋にここまで苦しむとは。日頃からどんな料理でも合う日本酒はある!と豪語しているだけに、個人的にもう少し深掘りしてリベンジしたいところです。
豆乳の独特の風味が日本酒にとっては曲者なんですよね。ベースに少し味噌を入れてみたら相性が良くなったかな?とか、濃いにごりは淡麗辛口タイプとのブレンドで何とかなったんじゃないか、などまだまだ研究の余地はありそうです。