蟹の美味しい季節がやってきました。都内ではセイコガニ(越前産のメスのズワイガニ)を冬の風物詩として提供するお店がここ数年で急激に増えてきた印象です。静かなブームが起きていると言っても過言ではないのでは?
今回はそんな蟹に合う日本酒を徹底的に深掘りしていきます!
蟹の種類
日本でよく食べられている蟹の種類はいくつかあり、味も値段も多種多様。一般的には、ズワイガニ、タラバガニ、毛ガニ、花咲ガニの4種が人気で「四大蟹」と言われたりもします。
今回はその中でもツートップを張っている、ズワイガニとタラバガニの2種を題材にして検証していきます。
調理法については純粋な蟹と酒との相性を探るため、シンプルに塩茹でとします。
相性のいいお酒のタイプ
磯の香りと濃厚な旨みが特徴のズワイガニ、一方淡白ながらプリっと食べ応えのある大きな身が魅力のタラバガニ。同じ蟹とはいえ、味わいはそれなりに異なります。ですから、基本的にはそれぞれで合う酒を考える必要があります。
とはいえ、当然両者に共通する傾向もあります。どちらも軽い甘味とふわっと広がる旨味が主な五味の構成要素となり、酸味と苦味はほとんどありません。
ここでポイントになるのは旨みの特性です。蟹の旨みは凝縮された密度の濃いものではなく、やや隙があってふんわりしています。合わせる酒もそこに着目して選ぶと間違いありません。具体的には普通酒や本醸造酒など、すいすい飲めて抜け感のあるタイプがどんな蟹にも合わせやすくおすすめです。
普通酒や本醸造酒のアルコール添加に抵抗のある人もいると思いますが、むしろそれによって軽さが加わり淡白な身の味わいと同調します。さらに、つんとくるアルコール感が蟹の臭みを抑えてもくれるのです。
なお、調理法や味付けによって最適なボリュームは変わってきますが、フルボディのゴツい酒だと、淡白な蟹は概ね負けてしまいます。また、フルーティな酒は蟹の臭みとぶつかることがあるため、あまりおすすめできません。
では、具体的な銘柄をご紹介していきます。
CHIMERA 特別純米酒
白・黒・黄の3種類の麹を使用した変わり種。白麹と黒麹はクエン酸を多く生成するのです。このため、ぎゅぎゅっと収斂性のある酸が特徴の面白いお酒となっております。
これは他とは方向性が違い、酒がソースの役割を担います。蟹を食べるときにカニ酢をつけますよね?あれと一緒です。あ、だからといってカニ酢を省略しないでくださいね。カニ酢をつけることで、酸同士がさらにリンクしやすくなりますので。
ズワイガニでも悪くないですが、クセのないタラバガニのほうがより好相性です。
不老泉 上撰
リーズナブルな普通酒ですが、侮るなかれ。これが実にいいお酒なんです。アルコール添加ゆえの軽さと優しい甘みですぅっと体に入っていく感覚。もちろんお燗も最高です。
タラバガニでもズワイガニでも問題なくマッチしますが、特にズワイガニのほうがぴったりですね。酒の甘味が蟹の甘味をより引き立たせてくれます。
喜量能 純米
かなりドライでビシっと辛い。タラバガニでもズワイガニでもピタッと寄り添ってくれる優秀さ。硬質かつ締まりのある酒質で、これが蟹の持つミネラル感とマッチするんです。
燗にするとほんのり酸を感じられるようになるので、また少し違ったペアリングを楽しめますよ。
燦然 特別純米 雄町 原酒 秋あがり
雄町の特性がよくでたお酒。旨味に広がりがあり、まろやかで落ち着いています。アルコール度数は18.5度と高め。立ち香にアルコールっぽさが強く出ていますが、これが逆に蟹の臭みを消してくれる効果も。
さらに、広がりのある雄町らしいふくよかな旨味がズワイガニの持つ磯の香りと非常に相性がいいんです。
燗のほうがより同調するので、ここは燗推奨とさせていただきます。
真上 特別純米 直汲生原酒
フルーティなものは避けたほうが無難と書きましたが、これだけは例外。
果実味があってトロピカル系なんですが、そんな酒がどういうわけかタラバガニと出会うと不思議な科学変化が起こるのです。この面白さはなかなか説明がつかないので、ぜひとも実際に試してみてください。
ただし、ズワイガニとはイマイチ。磯臭さが増長してしまいます。淡白でクセのないタラバガニ限定ということでお願いします。
まとめ
大まかな傾向として、冷酒向けの比較的モダンな酒はクセの弱いタラバガニと、常温から燗に向くクラシックな酒はズワイガニと合わせやすいですね。
また、カニ酢はつけたほうが概ね日本酒との相性が良くなります。
蟹はちょっと高いよね…という方、カニカマで代用しても美味しくいただけると思います。最近のカニカマの進化は目を見張るものがありますからね。タラバガニに合う酒であれば同じように合わせられますのでぜひお試しください。