入手しやすく調理法も多様なイカ。日本酒のアテとしてはスルメと塩辛が定番中の定番ですよね。イカ徳利なんて飲み方もあって呑兵衛にはお馴染みの食材です。
一口にイカと言っても、日本で食用とされるものだけでも20種類ほどあります。大きく分けるとすれば2種類。ねっとり系とコリコリ系です。
ねっとり系は噛んでいると口の中で粘りが出て旨味が広がります。対してコリコリ系は硬めの食感に比較的さっぱりした味わい。新鮮なものほど歯応えが強く、旨味もあっさりしています。
それぞれの代表格と言えばスルメイカ(ねっとり)とヤリイカ(コリコリ)です。今回は流通量も多く入手しやすい、この2種類を刺身で検証していきます。
相性のいいお酒のタイプ
イカ刺しはその食感に大きな特徴があります。合わせる酒を考える際は、まずそこにフォーカスしましょう。
ねっとり系のイカには、飲み口がスムーズでまろやかな酒が良く合います。ぬるめに燗をつけることで、柔らかさを出すのもひとつの方法ですね。
一方、新鮮でコリコリとした食感を楽しむタイプは、ある程度ミネラルを感じる硬めの酒質がおすすめ。
いずれの場合でも、濃醇なタイプのお酒は淡白なイカが負けてしまうので避けましょう。また、酸も強くないほうがベターです。
香りについては控えめなほうが無難ですが、華やかでフルーティなタイプでも、醤油ではなく塩とレモンでいただくことで相性が良くなります。
なお、今回の検証では日本酒度が高い辛口のドライなタイプを第一候補としていたんですが、意外なことにイカ刺しとはイマイチ合わないのです。
多くの魚介にはこのタイプが鉄板なんですけどね。イカ刺しに対してはある程度甘みが必要なようです。とろっとしたイカのテクスチャーに対して、ドライでがっしりした骨格の日本酒は親和性が低いんですね。
では、具体的な銘柄をご紹介していきます。
不老泉 上撰
これまでも魚介の記事には何度も登場している定番の日常酒。
スムーズで柔らかいテクスチャーがスルメイカにぴったり合います。また、アルコール添加によって濃すぎず、味わいの強さの面でも同調してくれます。燗もいいですね。
なお、ヤリイカには今ひとつでした。これはねっとり系専用ということで。
風の森 ALPHA Type1
アルコール度数12%の低アル商品です。 ヤリイカのクリスピーな食感に対し、風の森の特徴でもある微発泡とミネラル感がマッチ。軽やかな旨味も淡白な身にぴったり重なります。
スルメイカでもそれほど悪くない取り合わせなんですが、食感が呼応する分、やはりヤリイカほうが数段上のペアリングを楽しめます。そんなわけで、こちらのお酒は不老泉 上撰とは逆に、是非ヤリイカで合わせてみてください。
杣の天狗 純米吟醸 うすにごり 生原酒
うすにごりなので口当たりは柔らかいんですが、ガシっとミネラリーな骨格も同居しています。
冷酒(特に開けたて)だとやや硬さがありますが、そこがヤリイカの硬さと合致します。燗にするとミネラル感が薄れまろやかさが前面に出て、今度はスルメイカとベストマッチ。
どちらのタイプのイカにも合わせられる懐の深いお酒です。
津島屋 純米大吟醸 備前雄町 LOVE❤︎OMACHI
なかなか派手に香る純米大吟醸。さすがにこれはないかな…と思うも、一応スルメイカを醤油につけて食してみます。うーん、やはり相性はイマイチ。
ところが醤油から塩+レモン汁に変えてみると、まるで別の食材かというくらいお洒落なマリアージュが発現!これには驚きました。
テクスチャーの面では柔らかくとろっとした酒質がぴったり。大吟醸ゆえボディは軽いんですが、雄町の芳醇な旨味がイカの旨味と同調します。さらに、酒の香りと酸味がフレーバーにアクセントを加えてくれる、見事なバランスです。
ちなみにスルメイカでもヤリイカでも問題ありませんが、どちらかと言えばスルメイカのほうが食感が調和してよりおすすめです。
美寿々 本醸造
シルキーな口当たりと甘味、そして軽快なボディ。スルメイカとの相性は抜群です。
この口当たりとボディの軽さはアルコール添加ならでは。ぬる燗にすると甘みが増してさらにスルメイカと合うようになります。
庶民的なイカ刺しに対して、気負いのない本醸造ってのがまた、気分的にもフィットしますよね。
まとめ
ねっとり系のイカ刺しには柔らかくてまろやかな酒を。コリコリ系にはもう少しシャキッとした酒を。つまりテクスチャー(食感)が、もっとも大切なポイントになります。
それに加えて適度な甘みも重要です。いわゆる辛口はイマイチなケースが多くなります。
ちなみにイカは火を通すと食感が変わりますので、調理方法によって合う酒も変わってきます。刺身以外でも食べたいときは不老泉 上撰や美寿々 本醸造であれば汎用性が高いので、いろいろ楽しみたい方はこちらがおすすめです。