複雑な旨味と軽快な酸味、ピリ辛の刺激が病みつきになるキムチ鍋。冬に限らずいつでも汗をかきながらハフハフ食べたい人気の鍋料理ですが、案外日本酒との相性もいいんです。
そんなわけで、今回はキムチ鍋に合う日本酒の選び方やおすすめの銘柄をご紹介します。
キムチ鍋のレシピ
レシピによっても合う日本酒は変わってきますが、今回は比較的ポピュラーと思われる味噌ベースで検証していきます。
味付けは味噌、コチュジャン少々、ショウガ、ニンニク、顆粒だし。具材は豚バラ、キムチ、エノキ、ニラ、長ネギ、豆腐、としました。市販のキムチ鍋の素を使う場合は、キムチを少し足すといいでしょう。
キムチ鍋に合う日本酒の傾向
味噌ベースでキムチと豚バラ、ニンニクにニラ、唐辛子まで入った非常にパンチの強い味なんだから、当然ごつくて太い、濃醇な酒が合うと思いますよね。しかし意外なことにそうでもないんですよ。
もちろん味付け次第でもあるんですが、濃醇なタイプは概ね酒が勝ってしまいバランスが崩れる傾向にあります。
これは、前回の寄せ鍋とも共通するところですが、具材よりもスープのほうがペアリングの肝になるため、スープの濃醇さを超えてしまう酒はイマイチなのです。
→寄せ鍋に合う日本酒はコレ!おすすめ4選
キムチ鍋のスープは寄せ鍋よりは濃いとはいえ、それでもせいぜい味噌汁より少し濃い程度でしょう。その観点からすると、濃すぎず薄すぎず、言うなれば中庸な酒が合うということになります。
中庸な酒って、ものすごく広い選択肢ですね……逆に言えば、合う酒はかなり多いということです。
そんな中でも一つキーになるのは「米っぽさ」です。米や糠の風味が強いお酒はだいたいキムチ鍋に合います。まさにキムチ鍋をおかずにご飯を食べるイメージですね。
さらに、口当たりの柔らかさもポイントになってきます。味噌や豚肉の脂の効果もあってスープには若干とろみがつきます。ですので、そのテクスチャーを合わせることで同調性がアップするのです。具体的にはうすにごりなど、澱の柔らかさを感じるお酒がいいでしょう。辛みも包み込んでマイルドになりますよ。
フルーティ系が意外と合う
今回やってみて私自身驚きだったのですが、フルーティなタイプがかなり合うんですよ。
あまりに華やかだとさすがに悪目立ちするので限度はありますが、ほんのり香る程度であれば、不思議とキムチ鍋とマッチするのです。
キムチの匂いはさまざまな香り成分が複雑に絡み合って形成されています。この中にはフルーティだったり、青臭かったり、花のような香りのする成分も複数含まれています。恐らくは、これらとニラやショウガの香りが相まってフルーティな日本酒の香味と融和しやすくなるのでしょう。
そして、甘味もポイントです。豚肉の甘い脂と日本酒の甘味の相性の良さはこれまでも何度か述べていますが、ここでも有効です。
フルーティなタイプは甘みの強いものが多いので、香りと合わせてダブルの効果が期待できますね。
ちなみに辛さに関しては、意図的に激辛にしない限り、そこまではペアリングに影響しません。キムチ自体は辛みというよりも、乳酸由来の旨味を鍋に与える役割と考えましょう。
純米酒 泣かす酒
まずは王道ペアリング。燗で米の味わいがぐっと増します。開けたては酸があって、キムチの乳酸由来の酸味とリンクしやすいんです。
しかし、開栓から2週間もすると酸味は引っ込んで、代わりにうま味がふくらみ、米感もさらに強くなるので、また違う方向性でキムチ鍋と合わせやすくなります。
Beau Michelle Snow fantasy
低アルコールの甘酸っぱいお酒ですが、これがどういうわけかキムチ鍋と好相性。
軽やかな甘味が脂にもキムチにも合います。そして、きゅっと締まった酸味が鍋にアクセントを与えてくれるのです。
低アルコールゆえのボディの軽さも相性を高める要因ですね。
風の森 秋津穂 657
風の森を代表するスタンダードな造りの酒です。このくらいの、ほど良いフルーティさがキムチ鍋に対してちょうど良いバランスなんですね。
しかも開けたては微発泡の刺激が唐辛子の刺激と重なり合って楽しい。人肌燗にすると柔らかさが増して同調性が高まるので、冷酒とはまた違ったペアリングを楽しめます。
風の森はこの秋津穂657以外でも、精米歩合が60%~80%であれば概ね同じようなペアリングができますよ。
稲とアガベ×土田酒造 SAKEシリーズ 02
今や大人気のクラフト・サケ、稲とアガベですが、これは土田酒造とタッグを組んで作った酵母無添加で生酛造りの限定酒。
今回チョイスした中では最も濃醇ですが、乳酸の味わいが強めなので、そこまで重く感じさせません。ワイルドな中にもほんのり感じるフルーティさがキムチとよく馴染みます。
低精白(精米歩合90%)ゆえの糠っぽい風味もあるため、味噌ベースのスープと見事なまでに調和します。なお、燗のほうがよりお米感が出るのでおすすめです。
大那 あかまる
このくらいでちょうどいい、を体現するような日常酒。ややボディが軽いので、それなりに同調しつつも鍋に寄り添ってくれるペアリングになりますね。
ちょっと面白いアイデアをひとつ。このお酒に金鼓の古酒をほんの少し、お猪口一杯に対して数滴だけ添加してあげると、ごま油の香ばしさとリンクするようになりますよ。
→金鼓 山廃本醸造 火入原酒 2003年醸造
まとめ
というわけで、キムチ鍋に合う酒の条件としては、濃さは普通で、米っぽさが強く口当たりが柔らかいタイプ、なんならフルーティな香りも全然ウェルカム、こんな感じでしょうか。
本文中ではさらっと流しましたが、これらの条件にはうすにごりやにごり酒がばっちりハマるんです。今回ご紹介した5選の中にないのは、たまたま試飲できるのが開いてなかったとか、諸々大人の事情によるものなので、どうかお察しください!
お店でうすにごりやにごり酒を見かけたら、キムチ鍋とこの記事のことを思い出してくださいね。