若手蔵人が集まる新潟県・阿部酒造は、DX(デジタルトランスフォーメーション)があたりまえの酒蔵。新しいツールを積極的に取り入れるのはもちろん、最近はAIにもチャレンジしているそう。しかし、それでも必ず手作業でやると決めていることもあるんです。
今回の酒蔵だよりは、阿部酒造のデジタル・AI活用術について、6代目蔵元・阿部裕太さんに綴ってもらいました。
試行錯誤の末、タスク管理を一元化

画像:ClickUp公式サイトより引用
今年の4月に入ってから、バックオフィスのツールを「ClickUp」というタスク管理ツールとスプレッドシートに集約しました。ClickUpはタスク管理、チャット機能、AI、カレンダー、メール連携など、必要な機能がすべてそろっています。
このスタイルに落ち着くまで、いろいろなツールを取り入れては試行錯誤を繰り返してきました。
はじめ、タスク管理はClickUp、社内での文字コミュニケーションはSlack、社外との連絡にはDiscordを活用していました。
しかし、複数のツールを横断すると、コミュニケーションが非常に煩雑になります。さらに、酒蔵では「コミュニケーションから仕事が生まれる」というよりは「タスクからコミュニケーションが生まれる」ことが大半なので、タスク管理ツールの中でこれらのコミュニケーションをまとめておこなうかたちにシフトしました。
一元化できたのは、最近のアップデートによってClcikUpのチャット機能が大幅に向上したからです。さらに、メール機能を連携できるので、外部とのやりとりをDiscordからメールに移行することで、すべてのコミュニケーションをClickUpに集約できる状態になりました。
広い蔵の中で音声でコミュニケーションを取るツールとしては、DiscordやLINEを経て「BONX」を使っています。

BONXでのやりとりの様子
はじめは蔵人全員が使っていましたが、一定のレイヤーだけに絞ったほうが良いという結論になりました。広い蔵で即時コミュニケーションが取れるメリットがある一方、常に天の声のように音声が降ってくるので、コミュニケーションを発する側に高いスキルが必要となり、ミスコミュニケーションが多発してしまったからです。
いまは、マネジメント層3名を中心に、麹室、農業、出荷棟の6アカウントで運用しています。
AIで簡単なアプリも作成

最近は、AIも活用しはじめています。バイブコーディング(※)でミニアプリが作れるので、社内のちょっとした作業で使うものをアプリにしています。先日は、タンク尺からリッター数を算出するアプリを半日で完成させました。
※バイブコーディング:AIと自然言語での会話をしながらコーディングする方法。プログラミングの知識がない人でもコードが生成できる。
そのほか、分析・考察にもAIを使っています。たとえば、初回の洗米におけるおおよその吸水時間を出すために、品種×生産者×水分データを使って予測を立ててから、実際の現場の様子と合わせて洗米・浸漬をおこなっていきます。当社はレシピが異常に多い蔵だからこそ、この点は助けられています。
製造にはまだ本格的にAIを入れていませんが、こうした原料処理の考察や、仕込計画の作成、米の受払いなどに利用を増やしていく予定です。
DX化で「やらない」と決めていること

阿部酒造では、DXを基本前提として動いているので、あらゆるものをデジタルで管理しています。基本的に、紙に印刷しないこと、スマホで仕事が完結することを意識しています。
ただ、ログの記入は自動化せず、人間がパソコンで手入力するようにしています。自動ログにすると、蔵人が温度経過を覚えづらくなるからです。
人は手を動かして覚える性質があります。品温の経過や分析結果を自動で醪管理の表に登録することはできますが、そうすると「そろそろこれやらなきゃね」「〇日目にあの作業をしよう」という蔵人同士の会話が消える可能性が高いと感じてから、手入力に切り替えました。
DXやAIの導入により、時間や余白が生まれ、製造のコアとなる麹造りや酒母の工程により集中できる環境を整えることができます。使ってみないとわからない部分もたくさんありますが、良い酒を造り続けるために、良さそうなツールは積極的に取り入れながら厳選していきたいです。
【酒蔵だより:阿部酒造】
- 2026年冬:「新潟でいちばんアツいイベント。蔵人全員で挑む「にいがた酒の陣」」
- 2026年春:「AIで洗米時間を予測!「あべ」の日本酒造りとテクノロジーの“ちょうどいい距離”」






































