日本酒の個性を味わい尽くす! 酸味が特徴的なお酒の楽しみ方

日本酒にとって酸味は、避けられてきた風味の一つでした。これは、製造中や貯蔵中に意図せず強い酸味が発生してしまう失敗を連想させたり、和食中心の食生活で「食中酒」として使いにくくなってしまうためでした。

しかし今では、日本酒の酸味は「個性」を表現する要素として注目されるようになりました。背景としては、日本でも洋食を始めとした多様な食文化に馴染む人が増えたほか、各酒蔵で酸味を味わいの要素として取り入れて開発した、さまざまな味わいの新商品が人気になっていることがあります。「仙禽」や「花巴」など近年話題になっている銘柄にも、酸味を特徴としているお酒が増えています。

今回はこのような「酸味が特徴的なお酒」に注目して、合わせやすい料理など、その楽しみ方をご紹介してみます!

酸味が特徴的なお酒、を大まかに4つに分類してみる

酸味は日本酒の個性が表れやすい部分なので、ひと口に「酸味が特徴的なお酒」といってもさまざまな味わいのものがあります。そこでここでは2つの観点を使って、分かりやすくするために大まかに4つに分類してみます。

観点①「生」か「火入れ」か

日本酒には加熱殺菌をしていない「生」のお酒と、加熱殺菌済みの「火入れ」のお酒があります。ざっくり言うと、生はイキイキとした味わい、火入れは落ち着いた味わいになりやすくなります!

今回紹介するお酒ですと、生のものは暑さの続く今の季節(夏)に、火入れのものは秋以降涼しくなってからの季節にピッタリです。

観点②アルコール度数が「高い」か「低い」か

日本酒のアルコール度数は15〜16度程度であることが一般的です。17度以上であれば「高い」、14度以下であれば度数が「低い」とされることが多いです。
アルコール度数が低めであれば飲み口が軽く、アルコール度数が高めになるとどっしりとした力強い飲み口になります。

酸味が特徴的なお酒のおおまかな4分類図

※詳しい方向け:
今回は「酸味が特徴的なお酒」を題材にしているため、貴醸酒 / 長期熟成酒 / 麹歩合の高いお酒など、他の味わいの要素が強いお酒は除いて考えています。これらのお酒は別の記事で扱う予定です。
また、あくまでもざっくりとした分類なので、例外もあると思います。

(1)ガッツリ力強い!「生 & 度数高い」


大倉 山廃純米大吟醸 直汲み 無濾過生原酒

不老泉 山廃純米吟醸 総の舞 無濾過生原酒

高めのアルコール度数にしっかりめの酸味、それにあわせて旨味も強く感じられます。荒々しさも併せ持つ、むしろそれが魅力な力強さのあるタイプのお酒です。

まずはその力強さを冷たいままダイレクトに味わっていただきたいところですが、飲みやすくするならロックやソーダ割にしても美味しいです。もともとの味わいが強いので、多少薄まってもしっかり楽しめます。

一番魅力が感じられるのは、熱々の燗酒。燗酒の温度は「精米歩合と同じ温度まで温めて大丈夫」と某酒蔵の方が言っていたそうですが、このタイプは本当にそれぐらい温めて大丈夫です。そのままでは熱いので、少し冷ましてから50度台ぐらいで飲むとほぼ失敗がありません。

合わせるお料理としては、同じく力強い味わいのある肉料理が定番。特に個性が強い味わいのお酒なら、カレーや四川風の中華料理などスパイスの効いた料理ともバッチリ合います!

(2)新世代の味わい!「生 & 度数低い」


andante -アンダンテ-

残草蓬莱 純米吟醸 Queeen 槽場直結生原酒

飲み口も軽く、柑橘のような酸味がもたらす爽快な後味で、さわやかに飲めるタイプです。甘みも適度にあり、アルコール感も少ないためクイクイ飲めてしまいます。

このタイプのお酒は、基本的にはよく冷やして飲むのがオススメです。甘め、軽めなので食前酒としても使いやすいですね。おつまみがなくても全然問題ありません。たとえばお風呂上がりに、氷を1〜2個入れてロックで飲むのも幸せです!

食事と合わせるなら、洋風の前菜とは特に相性が良いでしょう。オリーブやピクルス、フレッシュチーズなどと一緒に、ちょっとお洒落に楽しむこともできます。 気取らずにいくなら、6Pチーズや薄めの味のポテトチップスでも大丈夫です。今のライフスタイルによく合っているお酒だと言えるでしょう。

(3)ハマると抜け出せない!「火入れ & 度数高い」


大治郎 生酛純米 吟吹雪

不老泉 山廃特別純米 原酒 参年熟成

ともに個性の強い酸味と旨味が、お互いを引き立てあう。落ち着いているのに力強い。異なる要素が共存する、複雑味のある大人の味わいが魅力です。このタイプにハマると日本酒から抜け出せなくなります。

飲む際の温度ですが、ぜひ燗酒で味わっていただきたいです……!温めすぎ、を気にする必要は基本的にはありません。レンジで熱めに温めるぐらいでも大丈夫なので、一度でいいから温めてみてください!お願いします!!という感じです。もちろん常温でも十分に美味しいです。

料理との相性については青カビチーズ・熟成チーズや生ハムなど、発酵系の料理が相性抜群です。味わいの特にしっかりしたものは(2)と同じく、スパイスの効いた料理と合わせるのも良いでしょう。

(4)落ち着きと包容力!「火入れ & 度数低い」


土田 生酛仕込

燦然 山廃純米 雄町

火入れで落ち着いた味わい、酸味と他の味わいがほどよく調和して、どこかほっとする味わいのお酒です。「山廃」「生酛」のお酒についての解説を目にしたことがあるかもしれませんが、だいたいの場合はこのタイプのお酒に関する解説です。

飲む温度は常温から、50度ぐらいまでの燗酒がおすすめ。リビングに放っておいて、そのまま注いで飲んでも美味しいカジュアルさが魅力です。お燗にするときも、レンジで20秒ほど温める、ぐらいのざっくりした感じでもきちんと仕上がってきます。

お料理との相性についても包容力が高く、(クセの強い料理でなければ)基本的に何にでも合います。焼き魚や煮物、お漬物など、日常のお食事やおつまみとは特に相性が良いでしょう。

※このタイプにはアルコール度数14度以下のものが少ないため、15度程度のものも含めて紹介しています。

まとめ

酸の高いお酒は、今の日本酒を楽しむためのキーポイントの1つ。今回紹介した4つのタイプのなかでどれが好きか(苦手か)、が分かるだけでも、ほぼ外さずに日本酒を選べるようになるのではないでしょうか。

SAKE Streetの店頭では試飲もできますので、ぜひ訪れて試してみてください!