モツ鍋に合う日本酒はコレ!おすすめ5選

牛モツ鍋

今回はモツ鍋に合う日本酒を探ります。

もともとは戦後の食糧難の時代、通常は捨てられていた牛や豚の臓物(モツ)をニラとともに調理したのが発祥とされます。今やそんなマイナスイメージは全くなく、大人気の鍋料理になっていますよね。

さて、モツ鍋自体にこれといった定義はなく、モツ、つまり牛や豚の内臓が具に入っていさえすれば、いずれもモツ鍋と呼べると思います。ただ、それだと広がりすぎて検証が難しくなりますので、ここでは最も人気の高い牛モツを使ったものに絞って話を進めます。

具材は、牛小腸(マルチョウ)、キャベツ、ニラ、もやし、ニンニクで極力シンプルに。味付けも塩、味噌、醤油などがありますが、今回は醤油と鶏ガラスープの素でベースを作っています。

目次

牛モツ鍋にはどんなお酒が合うのか?

ポイント①スープの味わいに着目する

食材だけ見ると、脂っこそうな牛モツに加え、ニンニク、ニラというパンチの効いた野菜が乗ってくるので、一見かなりインパクトの強いお酒が合いそうな気もします。だがしかし!これがそうでもないんですよ。

スープ自体は案外あっさりしているので、実は普通酒本醸造酒など軽やかな味わいのお酒のほうが同調します。もちろん味噌ベースの場合は話が変わってきますけどね。

小腸はモツの中でも最も脂の多い部位なんですが、鍋に投入する前に湯通しなどの下処理をすることで、そこまでギトギトにはなりません。

結局のところ、前回の水炊きとのペアリングでも述べた通り、鍋など汁物と合わせる場合は、出汁の濃淡が最大のポイントになるのです。ですので、そこに着目してお酒を選ぶと大きくハズすことはないですよ。
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ポイント②脂には甘味を

この連載では散々書いてきていますが、脂と甘味は相性が良いです。例えば豚バラ肉を使った料理などの場合は、甘い味付けをすることが多いですよね。そのあたりをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。

牛モツの場合も同様です。下処理をしたとはいえ、やはりそれなりに脂はあります。ここに甘めのお酒を合わせることで、パズルのピースが合致します。

検証中の様子
検証中の様子

ポイント③フルーティ系との相性は?

昨今の人気の高さゆえ、毎度懸案になるフルーティ系との相性ですが、これは案外悪くないです。

実は和牛や国産牛に含まれるラクトンをはじめとするさまざまな香り成分は、フルーティ系日本酒にも共通して存在すると言われます。すき焼きの時にも言及しましたが、それゆえ和牛とフルーティな日本酒は相性がいいのです。
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小腸などのモツにも同様に含まれているかは定かではないですが、検証した限りでは特にバッティングすることもなかったので、当たらずとも遠からずなのではないかと考えています。

ポイント④酸味に注意

前回の水炊きの時はタレにポン酢などを使う前提で、酸味のある酒も問題なく合わせることができましたが、牛モツ鍋には酸の要素がありません。

したがって、酸味が強いとスープや具材と馴染まず、どこか調和の取れない印象になります。エッジの効いたお酒よりは、ふわっと優しいタイプを選びましょう。

また、フルーティ系を合わせる場合も、酸味でバランスを取るタイプのお酒は避けた方が無難です。

牛モツ鍋に合う日本酒5選 

東豊国 佳撰

前回から引き続き登場。一歩己の豊国酒造が主に地元向けに売り出している日常酒です。

癖がなく優しい口当たりと良い意味で抜け感のあるボディの軽やかさが、牛モツ鍋のあっさりスープにマッチします。難しいことを考えずにゆるゆるっと楽しめます。

会津娘 特別本醸造

さすがの会津娘。本醸造であっても一切手を抜かないのが伝わってくる素晴らしいお酒です。

本醸造らしい軽やかさはありつつ、意外にぼんやりしていない骨格の強さがあります。これがパンチの強い具材ともしっかり張り合ってくれるんですよ。人肌~ぬる燗でぜひ。 

喜量能 純米

上の二つとはちょっと違う方向性でのペアリングです。

辛口でとにかくキレがいいので、くどくなった口内をスパっと流してリセットしてくれます。いわゆるウォッシュ効果ですね。

かといって淡麗ではなく、スープとの味わいの濃さが近いのも合わせやすいポイントの一つです。

神蔵 七曜 純米大吟醸 無濾過生原酒

フルーティだけど華やかすぎない、大吟醸なのにどういうわけか食中酒としてのポテンシャルがやたら高いお酒です。この検証シリーズでは定番になりつつありますね。

ポイントは、ほどよい甘さ。脂と非常によくフィットしてくれます。40度以下程度にゆっくり優しくお燗してあげると甘さや柔らかさが増して、さらに相性が良くなりますよ。

燦然 特別純米 雄町 原酒 秋あがり

雄町!原酒!ということで、どどーんと濃醇なお酒です。あれ?軽い酒のほうが合うんじゃなかったの?と思われるかもしれませんが、これは良かった。

濃醇とはいえ、酸が控えめで癖もなく全体的に優しく丸い印象なんです。さらに特筆すべきは甘味。モツの脂や旨味とバツグンの相性。 

これだけ合う要素が多いと、多少条件に合わない部分があってもあまり問題にならないんですね。

ちなみに燦然は、純米で火入れの雄町であれば他のスペックでも大まかな方向性は同じなので、秋上がりが売り切れの際はそちらをお求めください。

まとめ 

見た目からすると、生の牛小腸ってかなり脂っこそうに見えるんですよね(検索してみてください)。それゆえ、日本酒はインパクト系が合うだろうと踏んでいたんですが、蓋を開けてみれば真逆の穏やかなタイプが多く選出される結果に。

そこで、牛小腸の脂肪分について調べたところ、実はサーロインと同等、カルビよりもはるかに少ないことが判明。なるほど、それなら納得。やはり実際に合わせてみないとわからないものですね。
※文部科学省「食品成分データベース」参照

ちなみに、本シリーズ殿堂入りにつき使用が制限されている美寿々 本醸造は言うまでもなく最高でした。

酒井 辰右衛門

酒井 辰右衛門

J.S.A. SAKE DIPLOMA / 国際唎酒師 / 日本酒ペアリング研究家

ミュージシャンとして活動する中で、ひょんなことから日本酒に目覚め、一気に沼へ。 現在は日本酒と料理の相性を様々な角度から探るweb「日本酒ぺありんぐ総合研究所」の主宰として日々飲酒に励んでいます。食中酒としての日本酒の可能性を広げるために、およそ合いそうもないエスニックや洋食、スイーツなどとの相性を探るのがライフワークになっています。初心者向け日本酒セミナーの講師としても活動中。