【ジャンクフードペアリング】カップヌードルに合う日本酒を、ペアリングの達人に教わってきた

日清カップヌードルしょうゆ

こんにちは、SAKE Street メディアインターン生の榎本です。

日本酒のペアリングが注目を集める昨今、日本酒に合う料理とそのレシピが簡単に見つかるようになりました。

しかし、料理をするのには準備に手間がかかりますし、モチベーションが上がらないときだってありますよね。手の込んだ料理よりも、コンビニやスーパーで手に入るいつもの食事と一緒に、大雑把に日本酒を楽しみたい!

というわけで、「ジャンクフードと日本酒はペアリングが可能なのか?」を徹底検証! SAKE Street 店舗ブログのペアリング連載でおなじみの日本酒ペアリング研究家・酒井辰右衛門さんに弟子入りし、ジャンクフード・カップ麺の代表「日清 カップヌードルしょうゆ」(以下、カップヌードル)と日本酒のペアリングを教わってきました! 

目次

酒井さんに聞いてみた

酒井 辰右衛門さん

酒井 辰右衛門さん

J.S.A. SAKE DIPLOMA / 国際唎酒師 / 日本酒ペアリング研究家

日本酒と料理の相性を様々な角度から探るweb「日本酒ぺありんぐ総合研究所」の主宰であり、SAKE Street 店舗ブログで数多くのペアリング記事を執筆している、スゴ腕日本酒ペアリング職人。ここ数年間、カップヌードルを食べていないらしい。 

榎本

今回はよろしくお願いします。カップヌードルしょうゆ味に合う日本酒を探しているのですが、目星のつけ方を教えていただけますか?

うーん、正直、見当がつかない(笑)

榎本

あれ、まさかの企画終了のお知らせ?

いや、さすがに頼まれたからにはやるけど!

 

ただ、カップヌードルに限らず、ペアリング全般に言えることが、日本酒と料理の「味の濃さを合わせる」こと。じゃあカップヌードルはどうなのかって話なんだけど、味は濃すぎず薄すぎず。あとは醤油の焦げ感、コショウとか香辛料のスパイシーさがあるイメージ……香りも嗅いでおこうか。

カップヌードルの香りを真剣に利こうとする酒井さん
カップヌードルの香りを真剣に利こうとする酒井さん

カップヌードル特有の強い香り。醤油とコショウがいる(存在する)よね。味のイメージと、いま嗅いだ香り、これらを総合的に考えると、軽めの熟成酒が合いそうかな。

榎本

なるほど、香りと味を分解して、それぞれに合う日本酒を探るんですね!

メモしつつも、漂ってくる匂いに内心カップヌードルが食べたくて仕方がない榎本
メモしつつも、漂ってくる匂いに内心カップヌードルが食べたくて仕方がない。
榎本

実は私、酒井さんのペアリング記事を読み漁り、「カップヌードルに合いそうだな」と思った日本酒を見繕ってきたのですが、ペアリングとして成り立っているか、チェックしていただけますか?

読み漁ってくれたんだ(笑)

 

もちろん!一緒に飲みましょう!

筆者榎本チョイス、実食!

私が考える「カップヌードルに合う日本酒」がこちらです!

LIBROM COLA・美寿々 本醸造・金鼓 山廃本醸造 火入原酒 2003年醸造

左から

    お〜、なるほどね。うん、なるほど。

    ……え、ダメですか?

    いや、別にまだ何も言ってないよ。

    ……なんとも言えない反応でちょっと怖いのですが、カップヌードルも出来上がったので、早速判定をお願いします!

    美寿々 本醸造

    醤油味の料理のペアリング記事を読むと、だいたいこれが登場するんですよね。実際、記事登場回数1位の殿堂入り銘柄なので、大外れすることはないだろうと思いました。

    最近、これ飲んでないんだよね。殿堂入りして禁じ手になっちゃったからさ(笑)

    ※編集部注:初期の記事では頻繁に登場していたが、いろいろな商品とのペアリングを紹介したい大人の事情により、「殿堂入り」した

    酒井さんと榎本が、カップヌードルを分け合っている様子
    一緒に食べながら、検討します。

    酒井さん、どうですか?

    うん、無難に合う。いいんじゃないかな。

    さすが、記事登場回数1位の貫禄。味わいも合ってますよね?

    酒のうま味が、スープのボディ感とちょうど合ってるし、スープのしょっぱさで酒の甘みが引き出されているように感じるね。「バッチリ合う!」とまではいかないけど、結構いいんじゃないかな。

    やったぜ。

    結果:さすが万能食中酒、無難に合う。

    LIBROM COLA

    「徹底的にジャンクにしてやろう!」という魂胆です。どうぞ!

    LIBROM COLAを飲む、酒井さん
    食べて、飲みます。

    はははははは!おもしろい!これはアリ。厳密に味が合うかって言われたら、ちょっと違うけど、雰囲気やシチュエーションが合う。楽しい!

    カップヌードルを食べながらコーラを飲んでいる感じ、そのまんまですね。たしかに、味が合っているかと言うとそういうわけではないのですが、不思議と嫌な印象ではないです。ひたすらジャンクに酒を飲んでる感覚ですね。

    解説する酒井さん

    ペアリングの法則のひとつに、「ジャンクな料理には、ジャンクな酒が合わせやすい」っていうのはあるね。あんまり酒を差別したくはないのだけれど、料理と酒の「格を合わせる」考え方はあるんだよ。

    たしかに、極端な例かもしれませんが、駄菓子と日本酒を合わせようとすると、高価な純米大吟醸よりも、とりあえず普通酒にしようかなってなりますよね。

    結果:楽しい。カップヌードルを食べながらコーラを飲むジャンクな光景を、そのまま再現できる。

    金鼓 山廃本醸造 火入原酒 2003年醸造

    「醤油味には古酒のニュアンス!」ということで、ガッツリ古酒を選んでみました。

    いやー、これは合わないだろうなぁ(笑)

    榎本

    いや「LIBROM COLA」みたいに、振り切った味わいのお酒が合うかもしれないじゃないですか!古酒と醤油っていう裏付けもあるんですよ!

    麺をすする榎本
    食べます。
    榎本

    ……。

    うん、合わない(笑)

    榎本

    ダメでした。

    風味の部分で醤油と結びつくものはあるけど、あまりにも古酒感が強いね。

    苦悶の表情を浮かべる榎本
    酒の味わいが強すぎる。

    酒の主張が強すぎましたね。それぞれの味が、はっきり分かれている気がします。どこまでも続く平行線がここにあります。

    うん、100点満点中の20点ってとこかな。

    結果:合わない。酒の古酒感が強すぎる。

    酒井さんチョイス、実食!

    榎本チョイスの判定はこんな感じかな。「金鼓 山廃本醸造 火入原酒 2003年醸造」はちょっと……だったけど、「LIBROM COLA」の意外性も含めて、総合的に、まぁ良い感じだったんじゃないかな。

    「バッカモーン!」くらい言われるかと内心ビビっていたのですが、そこそこの評価をいただけて、ほっとしてます。

    俺にどんなイメージを持ってたのよ(笑)

    はい、じゃあ今度は俺のターンってことで、「カップヌードルに合う日本酒」をお披露目しましょう。

    酒井辰右衛門チョイスは、こちらの2本!

    辨天娘 純米吟醸 山田錦 2018年醸造 ・奥琵琶湖 特撰

    左から

      おお、2本とも渋い銘柄ですね。なかでも「奥琵琶湖 特撰」は「美寿々 本醸造」と同じく、記事での登場回数が多い万能食中酒、これはカップヌードルに合いそうです!

      辨天娘 純米吟醸 山田錦 2018年醸造

      カップヌードルを食べる榎本

      実食。

      あ、美味しいです!酒とカップヌードルの味わいが、つり合っている気がします!

      お、結構いいぞ、特に謎肉と合う!

      香りがかなり特徴的なので、最初は正直「え、合うの?」と思ったのですが、具と酒の味わいが綺麗にまとまっている感じがしますね。

      うん、味の濃い具材と特に合う感じかな。いい感じ。

      たしかに!辨天娘のおだやかなうま味が、濃い味つけの具と綺麗に結びついてます!

      結果:謎肉や海老など、味の濃い具材と相性が良い。

      奥琵琶湖 特撰

      最初に話した「軽めの熟成酒」に該当するのがこれで、今回の本命。40度くらいのお燗にしてみたよ。

      今回はじめてのお燗ですね。しかも酒井さんの本命ですか、期待が高まります!

      「奥琵琶湖 特撰」を飲む、酒井さん

      (ひと口食べて)ハハハハハハ、あー、来た来た。これだ(笑)

      酒井さんが、満面に笑みをたたえた……だと⁉︎(ひと口食べる)

      ペアリングに舌鼓を打つ、榎本

      ……うますぎますね。「美寿々 本醸造」と合わせたときに、「ちょっと日本酒が目立っているかな?」と感じた部分が見事に抑えられていて、お互いのピースがぴったりハマっている感じがします。なるほど、これがペアリング!

      より酸味が控えめなのと、古酒の熟成感による落ち着きがあるからね。温度を上げて、カップヌードルと味が同調しやすくしたっていうのもあるかも。

      口に含んだ瞬間「あ、これだ」と思うような納得感があります。これを見繕っていたなんて、さすが日本酒ペアリングマスター。

       

      ただ1点、気になることがあるんですが……

      底の深いフライパンを使い、湯煎でお燗をしている様子

      そう、それは「お燗」。

      いま「奥琵琶湖 特撰」をあっためて、めちゃくちゃ美味しかったんですけど、料理にほとんど手間をかけていないのに、酒にはひと手間加えてお燗にするっていうのはど

      お燗をサボってはいけない。

      あ、ハイ。

      お燗の魅力を力説する、酒井さん

      お燗をおろそかにしないでほしい。お燗、やって(笑)。レンチンでいいから。あっためるだけで味がめちゃくちゃ変わるから、やらないともったいないよ。

      あ、レンジのお燗で良いんですね。湯煎はちょっと億劫に感じてしまいますが、レンチンなら気軽にできそうです!お燗、やります!

      うん。お燗、やって。

      大事なことなので2度言われた。

      結果:バッチリ、うますぎる。お燗をおろそかにしてはいけない(金言)

      まだ見ぬマリアージュを求めて

      ペアリング検証用の日本酒を探す、酒井さんと榎本

      ちょっとノってきた二人、「まだまだペアリングを探るぞ!」ということで、SAKE Streetにある他のお酒を物色。ところが、良い感じのものはあっても「奥琵琶湖 特撰」のバッチリ感に匹敵するものには、なかなか出会えません。

      酔いが回ってきて、心なしか遠い目をしている榎本
      酔いも回ってきて、心なしか遠い目をしている。

      するとそこに……

      SAKE Street メディア編集長の二戸さんと、「会津娘 特別純米酒 無為信」

      カップヌードルの匂いに釣られて、SAKE Street メディア編集長の二戸さんがやってきました。

      二戸さん

      お二人の会話を盗み聞きしていたら、これ合うかな〜って思ったのですが、あっためても良いですか?

      と言いつつ、取り出したのは「会津娘 特別純米酒 無為信」。これはまだ試していませんでした、いただきましょう。

      「会津娘 特別純米酒 無為信」をお燗で飲む、酒井さん
      お燗でいただきます。

      合う!!!

      これやばい、来た来た。今日イチかもしれない。

      これ良いですね、めちゃくちゃ美味しい!

      二戸さん

      醤油スープにお米を合わせるイメージだったんですけど、うまくいったみたいですね。

      次の企画、二戸さんに弟子入りしようかな?

      ちょ(笑)。

      二人であれこれ試行錯誤していましたが、最終的に二戸さんに美味しいところを持っていかれてしまいました。悔しい。「奥琵琶湖 特撰」とはまた違うのですが、落ち着いた味わいがカップヌードルに寄り添います。美味しい!

      まとめ

      ペアリング検証に使用したお酒の集合写真

      カップヌードルと日本酒のペアリングを振り返ってみましょう。

      カップヌードルの味わい

      • ・味のボリュームは濃すぎず薄すぎず
      • ・醤油の味が強いわけではないが、しょっぱさは強い
      • ・具材の味は濃い

       

      つまり、カップヌードルに合う日本酒のタイプとは

      • ・ボディ感はそれほど強くないもの
      • ・ほどよく古酒(熟成)のニュアンスがある
      • ・酸味や甘みが控えめ

      これに該当する筆者の個人的ベストは、「奥琵琶湖 特撰」と「会津娘 特別純米酒 無為信」です。

      酒井さんのペアリングへのアプローチには感動しましたが、途中参戦の二戸さんに美味しいところを持って行かれたのは悔しかったですね、さすがはSAKE Street メディア編集長!お二人のように、ベストなペアリングを自分で提案できるようになりたいものです。

      カップヌードルでも、日本酒はちゃんと楽しめます!「しっかりした料理を作るのは面倒くさいけど、日本酒と食事を一緒に楽しみたい!」そんなときに、カップヌードルペアリングを試してみてはいかがでしょうか。手間のかからない幸せが、あなたを待っていますよ。

       

      【シリーズ:ジャンクフードペアリング】
      第1回:日清 カップヌードルしょうゆ
      第2回:カルビー ピザポテト
      第3回:マクドナルド チキンマックナゲット

      榎本康太

      榎本 康太

      SAKE Streetメディアインターン生

      酒づくりと地域づくりを研究しながら、「研究資料」と称して日々酒を飲む大学院生。編集長である二戸さんのもと、インターン生として記事の入稿や企画などに関わっています。同人サークル「一本歯下駄は今日も行く」としてコミケに出展し日本酒レビュー本を頒布しています。